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『聖女』と話す昔の話 ②

 シアをぎゅっと抱きしめていると、良い匂いがして、柔らかくて何だかやっぱり私のお人形さんは素敵だわって気持ちで一杯になっている。


 泣き終えたシアは、私に向かって笑いかける。



「ありがとうございます。ファニー様は優しいですね」

「あら、私は誰にでも優しいわけではないわよ。シアが可愛いお人形さんだから、私は優しくしているの」


 それにしても本当に可愛いわ。

 泣いた後の顔って、余計に可愛いわよね。


 シアが悲しい思いをして泣誰かに泣かされるというのは嫌だけれども、こういう泣き顔はいいと思うわ。


 本当に可愛いし、不思議な色気もあるし。

 うるんだ目で見られると、きゅんっとするわ。



 女の子同士だけど、なんというかチューとかしちゃっていいのかしら? みたいな気持ちになっている。でも可愛いお人形さんに嫌われたら私はショックを受けてしまうわ。なんて『魔女』らしくもない事を考えてしまっている。



「ファニー様……、どうかしたのですか?」

「……ねえ、シア」

「なんですか、ファニー様」

「チューしていい?」

「え?」

「チューしていい? シアが可愛いから」



 何を言っているのだろうか、私は! って感じだけど心からの本心である。シアはとても可愛い。可愛いからこそ、チューしたくなってしまっている。


 でもシアからしてみれば、突然、こんなことを私にいわれて戸惑いしかないかもしれない。でも可愛いものは可愛いものね! 私は本心を偽りたくもないし、でもこれで折角懐いてくれたシアに引かれたら悲しいけれど、どうかしら?



 なんて思ってシアを見ていれば、シアは顔を赤くしていた。そして小さな声で言う。




「え、えっと、ファ、ファニー様になら構いません」



 その真っ白な肌を赤く染めて、そんな可愛いことをシアがいう。

 許可をしてくれたわ! なんてかわいらしいのかしら。それに私になら構わないっていうのも、可愛いポイントよね。



 許可もしてくれたしってことで、早速その可愛い唇にチューしてしまった。

 シアってば嫌がらないのよ。それに顔を赤くしたままもじもじしていて、とっても可愛いわ!




「そ、それでファニー様、ロージャス王国の人たちの事、どうしましょうか……。彼らは私がターシリー様を呪って、ターシリー様が本来の力を発揮できないようにしていると思い込んでいるみたいですが」

「顔を真っ赤にしてシア、本当に可愛いわ!」

「えっと、ファニー様、話聞いてます?」

「もちろんよ。可愛いシアの話を聞かないわけがないじゃない。ごめんね。シアが余りにも可愛いから可愛いって気持ちがもれてるの。それで、そうねぇ、ロージャス王国の不届き者たちは馬鹿みたいね。シアを悪女だって思い込んで、こんなに可愛いのに。これからも諦めずにきそうね。ところで聞きたいのだけど、シアは第一の『聖女』だったって話だけど、その話を聞く限り『聖女』って他にもいるのよね? なのに、どうして結界が上手く張れないって事態になるの? 他の『聖女』と協力すればいいじゃない」



 国防のための結界なんて本来一人で張るものでは決してない。第一とか、第二とか、何人まで今のロージャス王国で『聖女』が定められているのかは知らないけれど、別に一人ではなく複数の『聖女』で結界を張ればいいのでは? って私は思う。

 シアを悪女に仕立て上げて変なことを言い出すよりも絶対にそっちの方がいいと思うのだけど。




「……多分、私に味方する『聖女』たちは王都から遠い地に追いやったりしていましたから人手が足りないのだと思います。私もこうして此処に追いやられる後半は一人の力で結界を張ることも多かったですし、私が出来たからターシリー様にも出来るはずだって思ってたのかもしれないです。お金を積み上げて『聖女』としての地位を確立している方も当然いますし、殿下やターシリー様に同調するものばかり残したのでしたら、あまり力のない『聖女』たちしか残らないのも当然だと思います。そもそも殿下は『聖女』の役割も重要性も理解していないような方ですから……」


 なんか話を聞けば聞くほど、ロージャス王国の王太子が残念な奴だわ。

 『聖女』って、国にとって大事で特別な存在なのよ。特にシアみたいに強い力を持つ『聖女』ってのは何よりも優先しなければならないぐらいには特別だわ。それなのに、そういうシアのことを嫌っていた時点で、色々駄目なのよね。


 女に騙されているのか何なのかは知らないけれど、それでこれだけ暴走していたんじゃ本当に愚か者だわ。

 他国にどれだけロージャス王国の実情が広まっているかは知らないけれど、他国もその王太子が王になるなら関わりたくないって思うんじゃないかしら。



「ねぇ、シア。このままやってくる者たちを追い返すってのは出来るけれどキリがないわよね」

「……はい。ご迷惑かけてすみません」

「あら、それはいいのよ。だってシアは私の物なんだから、私のお人形さんに手を出す相手をどうにかするのはシアを飼っている私の役目だもの。……と、そうではなくてね。根本から解決にいかないかしら?」


 私がそう言ったら、シアは驚いたような顔をした。



「私とシアでロージャス王国に行くの。そして原因を排除する。これが一番いいと思うのだけど」

「え、でも……」

「不安なんて感じなくていいわ。誰が来ようと、何人相手がいようとも私は負けないわよ。だからね、シア、私を信じなさい。シアの悪評もすべて取り払ってやろうじゃない」



 可愛いシアの悪評が広まったままってのも何だか嫌だもの。そういう意味を込めて笑いかければ、シアは笑った。



「ふふ、ファニー様の自信は本当に何処から来るんですか? ファニー様が言うなら本当に出来る気がします」

「気がするじゃなくて、出来るのよ?」



 私の言動に、シアはくすくすと愛らしい笑みを浮かべていた。





 


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