表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。  作者: 池中織奈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/40

『聖女』と話す昔の話 ①

2021/12/5 二話目

 シアと一緒に家へと戻る。

 そして飲み物を準備して、椅子に座って向かい合う。


 シアは何だか不安そうな顔をしているわ。

 やっぱり自分の過去を語るのは不安なのかしら。



 それとも私に嫌われたくないって思ってくれているのかしら。やっぱりとても可愛い子。可愛くて優しくて、いじらしくて、とても可愛い。



「ねぇ、シア。貴方の過去がどんなものだろうとも、私にとっては可愛いお人形さんよ。だからね、シア。何も不安はいらないわ」

「……はい」



 私の言葉に、シアは安堵したように言葉を紡ぎ始めた。





「わ、私はロージャス王国で『聖女』をしていました。それも最も力が強い『聖女』、第一の『聖女』の地位についていました」

「ふふ、シアはとても優秀だったのね」

「それで私の家が公爵家だったことや『聖女』としての力が強いこともあり、王太子殿下の婚約者に選ばれました」

「私のシアは公爵家の出だったのね。とってもぴったりだわ」

「……あのファニー様、にこにこ笑いながら頭を撫でないでくれませんか。話が中断してしまいます」

「あら、ごめんなさい」



 シアが自分の事を語ってくれるのが嬉しくて、思わず相槌を打って頭をいちいち撫でてたらシアにそう言われてしまった。


 それにしても良い所の出だとは思っていたけれど、公爵家の出だったのね。

 ただお嬢様の割にシアがそれなりに生活力があったのは、『聖女』として生きていたからかしらね。

 ……というか、シアがこんな目に遭っていてもシアを探しにも来ない公爵家ってどこのどいつかしら??



「ただ殿下は私の事をあまり気に入っていませんでした」

「あら、どうして?」

「……私は公爵家の出とはいえ、正妻の子供ではなかったから。お父様も私に『聖女』としての価値を見出すまでは放置してましたし。それに私は何を考えているか分からないって、可愛げがないってよく言っていました」



 その目は節穴なのかしらねぇ?

 シアは可愛いわよ。というか、こんな可愛いシアを可愛げがないなんて言うなんて、その王太子がシアのかわいらしさを引き出せなかっただけなのではないかしらね。



「ただ殿下の婚約者になったのは王命でしたし、その立場から離れることも私は考えていなかったです。他に行くところもなかったですし、何より私は『聖女』として過ごすのが好きでした。だから殿下が私を気に食わなかったとしてはそれはそれだと思ってました。婚約が解消されるのならばそれはそれでいいですし、愛がなくても結婚するでもそれはそれでいいかなって、思えば流されるままだったのかもしれないです」


 シアは正妻の娘ではなく、公爵家でも放置されていたけれど、『聖女』としての力が強かったから王太子の婚約者になったか。

 王命ってことだと、その王様はシアの価値が分かっていたはずよね? それなのにシアが森に捨てられているのにはまた事情があるのかしら。




「ただそうしているうちにあの子が、今ロージャス王国で『聖女』になったターシリー様が現れました。あの子は『聖女』としての力はそれなりにしかなかったです。ただ殿方と仲良くなる才能が凄まじかったですね……。丁度、陛下が病に倒れてしまったのもタイミングが悪かったのでしょう。陛下が倒れた際、実権を握っていたのは殿下でしたから、私を気に食わない殿下の態度は周りに浸透していきましたね。私の味方をしてくれた者は城から去っていきました。神殿は私への態度に抗議をしていたみたいですけど、殿下の許可が下りずに会えなかったです」

「へぇ……それで?」

「それでターシリー様が嫌がらせを受けたって話になって、私は何も知らなかったのですが、私のせいになりました。それで私は偽物の『聖女』だと、そんな風に私を断罪していましたね。ターシリー様は第一の『聖女』という地位も、殿下の婚約者という地位も持っていた私が邪魔だったのだと思います。それで罪人とされました。いつの間にか私と親しくしていた神殿のものたちも押さえつけられていて、何か手を回されたのか私は無罪を主張しましたが罪人にされました。誰も助けてもらえない状況で、罰だとか言われて色んな事をされて……それで最終的に『死の森』に捨てられました。……私を、殺したかったんだと思います」





 その罰だとか言われて色んな事をされて……っていうのに暴力とか、身体を暴かれたこととかがきっとあるのよね。全員、殺したいわね。シアが震えているじゃない。



「大体予想通りだわ。ただその娘の言葉を妄信的に信じて王族ともあろうものがそんなことをしたのは、正直馬鹿としか言いようがないわね」



 なにか不測の事態があってシアが捨てられたのは予想していたけれど、王族にしては馬鹿ではない?




「……ファニー様が、私が誰か知っても動じないんですね」

「だって昔は『聖女』だったとか、王太子の婚約者だったとか私にはそんなもの関係ないわ。だって今のシアは、私の可愛いお人形さんでしょう?」



 そう言って笑かけたら、シアは泣いてしまった。




「シ、シア? どうしたの? 思い出して悲しくなった? シアを傷つけた連中、全員殺してきましょうか?」

「えっと、違います……。私、罪人扱いされて、救いもなくて……どこにも自分の居場所がなくなったって、そう思ってたけれど……。ファニー様が、私に居場所をくれたから。それに……私の昔の話聞いても、ファニー様が、私を受け入れてくれた……から」


 そんな可愛いことを言って泣き始めたシア。

 私はシアの傍までよって、椅子に座るシアをぎゅっと抱きしめた。



 シアは私を振りほどかず、しばらく泣いていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ファニーは女神
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ