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『聖女』を求めて訪れた者たち ①




「シア、望まぬ客がいるみたい」

「え」



 シアが私の言葉に身体を震わせる。

 私の言葉に、シアに関わる相手だろうと分かったのかもしれない。


 私は不安そうに青い瞳を揺らす。こうして不安そうにしているシアもとても可愛いわね。でも不安そうな目を向けるよりも、笑顔で笑ってくれる方が嬉しいわ。



「シア」


 シアは嫌がるかもしれないけれど、私は思わずシアの身体を抱き寄せる。




「ファニー様?」

「大丈夫よ。シア。貴方は私の可愛いお人形さんだもの。貴方は私が拾った私のモノよ。だからね、震えなくていいの。誰かが貴方のことをどうにかしようとしても、私はそれをさせないから」



 心配何て必要ない。

 だってシアは私のモノだから。私の可愛いお人形さんは心配する必要はないから。



 シアは私の言葉に小さく笑って、私の身体を抱きしめ返してくれた。

 それが私は嬉しかった。シアが私に心を開いてくれている証だって思えるから。



 こんなに可愛い子に何かしようって人は、どうにかしなきゃね。

 精霊はそんな私たちの様子を見て笑ってた。




「それでその人たちは?」


 シアの身体を離して私は精霊に問いかける。

 シアは精霊の姿が見えていないけれど、黙ってそこで聞いている。



「魔物がいるから奥までは来れてないわ。それに私たちも近づけさせない。このまま死ぬんじゃない?」

「まぁ、私はそれでもいいけれど」


 此処に来られないならそれはそれでいい。

 でも、きっと……、



「ねぇ、シア。恐らくシアを訪れて人がこっちにきているわ。でも彼らは魔物や精霊に阻まれて此処に来られないわ。もしかしたら死んでしまうかもしれない。シアは誰かが死ぬのはあまり好きじゃないでしょう?」



 シアは人が死ぬのを見過ごすのは嫌だと思っているだろう。



 私は正直人の死を見続けていて、人に置いて行かれ続けていて――そういうのもあって誰かの死って私にとって大切な人以外のものは軽い。

 でもシアにとってはそうではないのよね。




「……嫌です」

「シアを危険な目に遭わせた相手でも、嫌なのよね?」

「はい。……私は、周りが敵になって悲しかったけれど、憎いとは思わなかったから」

「ふふ、私のお人形さんは、とてもやさしいわね?」

「ファニー様のおかげですよ。私、多分ファニー様に拾われなければあのまま死んでいたと思います。そうなったら悲しいとか憎むとか、そういう感情も感じられなくなっていたと思いますから。……それにファニー様が私を甘やかしてくれたから、私は落ちついて暮らせているから」



 そんな可愛いことを言うシアの頭を思わず撫でた。

 やっぱり可愛いわ!! それにしても『聖女』というのは、こういう優しい子が多いのかしらね?


 やっぱり私は『聖女』としての力は持っていても『聖女』なんて似合わないわよね。『魔女』の呼び名の方がぴったりだわ。昔の私のことを『聖女』呼びしようとしていた子たちは見る目がなかったわよね!



「シア、私、やってきた人達を穏便に追い返しに行くけどどうする? 一緒に行く?」



 シアは私の言葉に、考えるような仕草をする。

 だけれどもシアは私に拾われてから、穏やかに過ごしているからそういう人たちと対面する覚悟も持てたのかもしれない。



「私も一緒に行きます」

「大丈夫?」

「はい。だってファニー様が守ってくれるのでしょう?」



 シアが私に向かってそう告げる。

 可愛いわね。私の事を信頼しているとでもいうような穏やかで優しい笑みに、私はきゅんきゅんしてしまったわ。

 だって可愛いもの。




「じゃあ、シア、行きましょう」

「はい」


 そして私はシアの手を引いて、そのやってきた彼らの元へと向かった。

 


 魔法を使って、身体を浮かせ、そして精霊たちの導きの元、その者たちの元へと向かった。





 結構人がいるわね。あれは騎士かしら。そして神官服を身にまとった子たちもいるわね。というか、上に居たらスカートの中見られちゃうかもしれないわね。シアのスカートの中をこんなやつらに見られるのも嫌なので、見えないように魔法を行使する。

 これでいいわね。



 さて、下から私たちを見上げている彼らはざわめいている。シアのことを指さしているわね。シアは思ったよりも落ち着いた様子だわ。私が手を繋いでいるからかしら? そうだと嬉しいわね。



 それにしてもシアに敵意を向けている者もいるわね。そういう子たちは何なのかしら。

 シアを傷つけて、追いやって、そしてそれでも満足していないということ? そもそも彼らはどういう目的で此処にやってきたのだろうか。




「ねぇ、貴方達シアに何の用? シアを探しに来たのよね?」



 私は魔法を行使して、その声を彼らへと届ける。


 私の事を睨みつけている子も多いけれど、なんて身の程知らずなのかしら。人数がいれば私に勝てるとでも思っているのだろうか?








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[一言] ホントに何しに来たんだろ
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