表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/40

『聖女』が懐いてきた ⑤

 山でのんびりと過ごした後は、街へと向かった。

 ヤンド帝国の東側に位置する街だ。今は大きな街だけど、昔は村だったのよねぇ。懐かしいわ。


 なんてそんなことを思いながら、シアを連れまわす。


 それにしても少し来ないだけで街並みも変わるわね。

 私はあんまり街には来ないから久しぶりなのよね。でもシアを拾ってから、私結構街に出ているわね。可愛いお人形さんを拾った事で、私の生活もかなり変わっているのよね。



 それにしても人が多いわ。

 はぐれちゃったら大変だものね。



「シア、手を繋いでもいい?」

「はい」



 シアが頷いてくれたので、私はその手を握る。

 私が前に手を引いた時は、もっと私に対してよそよそしかったし、対応も硬かった。でも今は少し、柔らかに感じ。私はそれが嬉しい。




「ファニー様、この街もエルソッラ様の?」

「ええ。そうよ。此処が村だった頃に結界をエルソッラが張った場所だわね。今はもうエルソッラの結界はないし、魔法具で結界を張っているみたいだけど……。昔はエルソッラの張った結界があったのよ」



 エルソッラは力の強い『聖女』だった。

 邪神が復活した時代だからこそ、魔物だって強大な存在が多かった。


 あの時代は『聖女』の価値が今よりも高かったと言える。エルソッラ以外にも『聖女』がいて、彼女たちも含めた『聖女』たちが結界を張ったりして、そういう一つ一つの行動が人を生かしたのだ。


 多分、『聖女』たちがいなければ随分人の数も減っていただろう。もしかしたら今、街中を歩いている人たちの先祖だって、そういう『聖女』たちに救われた可能性が高い。今ではもうエルソッラの名前以外はちゃんと残ってはいないけれども、彼女たちだって英雄であったと言えるだろう。





「というか、シア大丈夫? 人にぶつかって顔色が悪いわ」

「すみません……」

「大丈夫よ。人が少ない場所に行きましょう」




 シアはやっぱり人に触れられるのが苦手で、人込みが苦手なのだ。それでも私が手を握っていることを許してくれているという事実が何だか嬉しかった。





 一通りの少ない通りへと移動し、ベンチに座る。




「シア、大丈夫?」

「はい。すみません。思ったより人が多くて」

「気にしないでいいわよ。でもそんな風に人に怯えなくていいのよ。私がシアを脅かすものは全部排除してあげるから。私はとっても強いのよ? だからね、シアが悲しむようなことも、怯えるようなことも、全部どうにでもするから」

「……ファニー様は、ただ拾った私に優しいですよね」

「シアが綺麗で可愛いからよ。私は可愛いお人形さんに誰かが手を出すのが嫌なだけよ。シアが可愛くなかったら放っておいたわ」

「自分の見た目に感謝ですね」

「ふふ、シアの可愛さは国宝級だわ。私は長く生きているけれど、シアほど綺麗で可愛いお人形さんは初めてだもの」



 私の言葉に、シアが笑っている。小さく笑ったシアが可愛くて、私も笑った。





「ねぇ、シア、頭撫でてもいい?」



 シアは触られるのを嫌がっていて、だから撫でられないシアの頭。さらさらの髪を撫でたいなぁとずっと私は思っていたのだ。





「……ど、どうぞ」



 頭を撫でたいと言われたのも慣れてないのかもしれない。私の言葉に一瞬固まったシアは、私に頭を差し出してくる。



 シアが頭を差し出してきたわ!

 撫でていいってことよね!

 と私は大興奮である。




 早速その、シアのさらさらの髪に手を伸ばす。

 思ったよりもさらさらだわ。




 思わずずっと撫でてしまう。




「……え、えっと、いつまで撫でるんですか?」

「あ、ごめんね。シアの髪が思ったよりさらさらで触り心地がよくて、思わず触ってしまったのよ。照れているシアも可愛いわね」



 顔をあげたシアは少し顔を赤くしていて可愛かった。

 私のそんな言葉に恥ずかしそうにシアはそっぽをむいた。





「そ、それよりファニー様、今日はこの街で何を見るんですか?」

「何を見るというのは決まってないわ。そもそもこの街自体がエルソッラとの思い出の場所なのだもの! だから街をただぶらぶらするだけよ。あとは湖とか、そういうのは昔のままだからその辺を見て回るとかね。そして名産の食べ物も昔と変わらないみたいだから食べましょう」

「はい。ファニー様」




 私の言葉にシアが頷いてくれた。




 さて、シアを連れまわすのはいいとしてあまり人がいないエリアを移動しないとね! シアにもっと信頼してもらえれば、私がいれば誰かに触れられることも怯えなくていいって思ってくれるようになるかしら。

 でも辛い目に遭ったのならば、それが一種のトラウマになるのも仕方がないことといえば仕方がないことなのよね。




 それにしてもシアと仲良くなると、シアに酷い扱いをしただろう連中をどうにかしたくなるわね。




「シアは街だと何処に行きたい? やっぱり神殿?」

「そうですね。神殿は行きたいです」

「じゃあ神殿にも行きましょう!」




 私はそれからシアの手を引いて、街の中を見て回るのだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] シアたんに酷いことした連中、逃げて~、超逃げて~!!! ファニー様のO・SHI・O・KIが待ってそう~!!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ