『聖女』が懐いてきた ③
山間部の集落の人々は、優しい人がおおかった。まぁ、私とシアが可愛いからというのもあるだろうけれど。集落の女性陣が少し妬ましそうにこちらを見ていたのよね。
私も結構この見た目で色々ねたまれたりしたことあるのよね。でもねたむ暇があったらもっと行動を改めた方がいいと思うの。私の見た目がいいのはまぁ、その通りだから注目を浴びるのも当然なのよ。
でも正直言って、そういう風にねたむよりはにこにこと笑っていたほうがいいと思うのよねー。嫉妬に狂った目とか、見られたら好いた男にも嫌がられるだろうし。
シアはこういう集落に来たのは初めてみたい。
箱入り娘というか、大切に守られていた『聖女』だったみたいだから、まぁ、仕方ないわよね。
それにしてもこういう集落だと、荒っぽい雰囲気の男性が多いのよね。
シアはそういう人に慣れてなさそうだわ。
「シア、こういう雰囲気の集落は少し苦手?」
「楽しいですけど、あまり接したことない人達ですから……」
シアは周りを興味深そうにきょろきょろしていたけれど、少し困り顔である。
接したことのない人達と関わるって最初は戸惑うわよね。でも少しびくびくしながら私の服の裾を握るシアが滅茶苦茶可愛いわ!!
シアをもっと懐かせるためにも、こういう所に連れて行った方がいいのかしら? いや、それは駄目ね。わざとそう言う場所に連れて行くのは逆に嫌われる気がするわ。
少し買い物をして、そのまま私はシアと手を繋いで山を登ることにする。
集落の人たちに、女の子二人で登るなんてっと心配されたり、ついてこようと申し出る人がいたりとかしたけれど、全部断ったわ。邪魔だもの。
そもそもシアと楽しくお出かけしているのに、他の人なんて邪魔としかいいようがないわよね!
聞き訳が悪い子には、魔法を使って私の実力を知らしめておいたわ。
それから私はシアの手を引いて山を登った。正直魔法を使って簡単に上りも出来るけれど、シアの体力をつけるためにも歩きである。ちなみに私は身体能力強化などの魔法も使わずすたすた歩いているわよ。
『魔女』っていうと体力ないように思われることが多いけれど、私はちゃんと体力をつけているもの。魔法にばかり頼っていても、身体がなまってしまうもの。
シアはやっぱり体力がないわね。
やっぱりもっと少しずつ体力をつけて、強化したほうがいい気がするわ。『聖女』としての力が使えても、それだけだと予想外のことが起きた時に対応できないもの。
「はぁはぁ……」
それにしても息切れして、汗を流していてもシアは綺麗だわ。
なんだろう、それでも美しいと言うか、やっぱり私の可愛いお人形さんはどういう姿でも綺麗だわ。
「シア、少し休憩する?」
「は、はい」
「辛そうね。私はシアはもっと体力をつけた方がいいと思うのだけど、どうする? 体力何てつけたくないっていうならこの後、魔法を使うけれど」
「い、いえ、歩きます! ファニー様が涼しい顔をしているのに、私がこんなに歩けないなんて嫌ですから」
「私は鍛えているもの。じゃあ、シアももっと体力つけましょう。体力がついたら戦い方も教えるからね」
シアは私の言葉に頷く。
ちなみにシアは今、私が持参した水を飲んでいるわ。これ、湖から汲んできた聖水なの。
聖水は疲れた身体によくきくもの。
それから休み休みで歩いて、山頂にたどり着く。
途中で魔物も出たけれど、とりあえず私が倒しておいたわ。シアはとりあえず現状を見ると体力をつけた方がよさそうだもの。でも山頂でゆっくり休んだ後に魔物が出たら対応してもらおうかしら?
でもいきなりだと、シアも心の準備が出来ないかしら?
そんなことを考えながら、山頂の石碑の前に立つ。この石碑はエルソッラの事が書かれている。魔物に壊されないように結界も張られているのよね。そもそもあの集落の人たちがこの山に住まう理由の一つがエルソッラの石碑を守るためっていうのもあるらしいのよ。
流石私の友人だわ。あと石碑だけじゃなくて像もあるわ。本人の方が可愛かったけれど、よくできていると思うわ。
「はぁはぁ……、えっと、ファニー様、此処は、エルソッラ様が、偉業を達成した場所ですよね」
「ええ。そうね。あの頃、此処に邪神の配下がいたからそれを倒したのよ。中々強い敵だったわ」
「……何だかまるでその場にいたかのようにいますね?」
「ん? いたわよ? 私はエルソッラと一緒に戦ったもの」
私がそう言えば、シアは驚いた顔をした。
うんうん、ぽかんとした顔が可愛いわ。
そして考え込むような顔をして、「ファニー様は、その……いえ、なんでもないです」と何か聞こうとして口を閉ざした。
別に聞いてくれたらなんでも話すのだけど。
シアってそこまで私に踏み込んだ質問してこないのよね。やっぱり自分の事情を言ってないから聞きにくいのかしら?
別にシアの事情をこちらに言わなくても聞かれたら答えるのだけど。
それから石碑と像の前で私たちは食事をとった。食事は家から持ってきたお弁当である。ちなみにシアも一緒に作ってくれたものなの。