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『聖女』が懐いてきた ①




「ファニー様、おはようございます」

「おはよう、シア」



 シアは、私に少しずつ慣れてきたのだと思う。


 あとは私がエルソッラと友人だったことを聞いて、私への警戒心がなくなってきたようだ。シアは何だかんだ善良な人間なのだと思う。

 裏切られても、大変な目にあっても――それでもシアは人の事が好きなのだと思う。

 そういう善良性と、清らかさが『聖女』たる所以って言えるところなのかもしれない。



 私はシアほど性格がよくないから、大変な目にあったらやられた側をぶちのめしたいって思うのだけど。

 私はシアをひどい目に遭わせた相手に対して、シアが復讐したいというのならばその人たちを殺すぐらい簡単だけど、シアの本音はどんな感じなのかしらね。





 シアが朝ごはんを食べている様子を見ただけで、私は思わず笑ってしまう。

 だって可愛いもの。しばらく一緒に過ごしていてシアがどういったものが好きかも、自己主張しなくても何となくシアの表情から読み取れるようになったわ。



 シアの好きなものを沢山買ってきたら、買い過ぎだって呆れられちゃったけれどね。



 でもシアは相変わらず誰かに触れられるのは嫌みたいなの。もっとシアのさらさらの頭を撫でたりとか、綺麗な顔を触ったりとかしたいなーなんて思う。だって触り心地がよさそうだもの。




 私に触られたら嫌な気持ちになるかしら? シアに嫌われたくはないのよね。シアに嫌われてしまったら悲しいわ。



 じーとシアを見る。





「ファニー様、どうしました?」

「何でもないわ。それより、シア、今日は何をする?」

「何でもいいですよ」




 もっとシアがやりたいことを言って、もっと可愛くなったらいいのにな。

 初めて私が拾った時よりは、表情が変わっている気がするけれど。でもまだまだ。私に心を完全に許しているわけではないし。



 


「んー、じゃあ、今日は湖に行くから一緒に行きましょう。家でずっと待っているのも退屈でしょう?」

「ご一緒します」



 シアは一人で森に出れるほど強くはない。だからこそ、私がいない時には外に出ないように言ってある。

 シアは聞き分けが良い素直な子だから、外に出ることもないわ。精霊たちに一応シアが外に勝手に出ようとしていたら止めるようにいってあったけれど、全然外にシアは出ようとしていないのよね。




 やっぱり『聖女』を追われる何かがあったからこそ、あまり自分のやりたいことを言わないのよね。シアは。




 少しずつ笑うようにはなったとは思う。色んな場所に連れて行って、少しずつは私に懐いてきてくれているのではないかとは思う。


 ――でもまだ、シアは色々遠慮している。遠慮なんてしなくていいのだけど。




 湖に連れて行けば、シアはいつも嬉しそうに穏やかに微笑んでいる。

 この神聖な場所を気に入っているようで、私が水を汲んだりしている間も、座り込んでのんびりとしている。

 シアとの間には言葉は交わさない時間も心地よい。



 でも相変わらずシアの前に精霊たちは姿を現わす気はないみたいなのよね。いい加減、姿を現わせばいいのに。

 やっぱり人のことをあまり好きではないのだなって改めて思った。



 私は精霊たちとも仲が良いし、シアのことも可愛がりたいからはやく仲良くなったらいいのだけどと思ってならない。





 精霊たちはシアのことをどうでもいいと割と思っているみたいで、聖域にシアがいようとも気にした様子はない。嫌われていたら此処にもいれないはずだから、シアは嫌われてはいないのだろうけれども。





 それにしてもやっぱりシアはこういった神聖な雰囲気の場所が似合うわね。

 もっと神聖な場所にもシアを連れて行きたいわ! 聖域って呼ばれる場所は人の国になっている場所にも、人里離れた場所あったりもするのよね。



 そういう聖域って呼ばれる場所は、元々精霊が好んでいた場所だったりするけれど、人の国に関しては精霊は姿を消していることが多いのよね。

 


 私がエルソッラと行った場所とか、今は人が全くいないエリアに連れて行ってもいいわね。

 シアはエルソッラに憧れているみたいだから、エルソッラの話を沢山したら私にもっと心を許してくれるかもしれないわ。



 それにお墓はともかくとして、他の思いでの地ってたまにしかいかないし。

 




「ねぇ、シア。シアはエルソッラに憧れているのよね」

「はい。エルソッラ様は偉大な『聖女』様ですから。この時代まで伝えられている『聖女』様はあまりいませんから」



 この世界に『聖女』という存在はそれなりにいる。だけれども他国にまで知られていたり、何百年経っても伝えられている『聖女』というのはあまりいない。



 私の友人であったエルソッラは、本当に私の自慢な偉大な『聖女』だった。



 そう思うと思わず顔が緩んだ。






「ちょっと遠いけれど、エルソッラと昔訪れた場所とか、一緒に廻らない? 私も久しぶりに行きたいのよ」



 私がそう言えば、シアは少しだけ目を輝かせた。

 やっぱり可愛いわ。






 

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