『聖女』を連れまわす ⑤
シアに沢山の洋服を着せる。
シアは美人さんだから、髪や目の色を変えていてもやっぱりその美しさは隠せない。
白いワンピースを見に纏ったシアは、とても清廉な雰囲気だったわ。
丈の長いスカートと、清潔感の溢れるシャツに、伊達メガネをかけるとまるで男の子に憧れられる女教師のようで知的だったわ。
ズボンスタイルもスタイルが良いからとても似合うわ。髪も長いから色んな髪型をすればまた違うシアが見れてとても楽しいわ。
ドレスもかわいらしいものも、大人っぽいものも着せたの。どれも似合うのよ。コーディネート次第ではどんな服だってまるでシアのために準備されたもののようだわ!
「シア、とても可愛いわ!!」
「ありがとうございます」
「ふふ、照れてるシアも可愛いわ。それにしてもシアは本当に色んなものが似合うわね。幾らでも着せてあげたいわ!! とりあえず今シアが試着したもの全部もらうわよ」
「え、ちょっと、それは――」
「シアは黙ってて。私はシアのために沢山服を買いたいのよ」
私はシアにそう言って笑いかける。
それにしてもこんなに素敵な服を身にまとったシアを家で飼えるとか、とても素敵だわ。店員は私が金払いの良い上客だと判断したのか、余計ににこにこしていた。現金な子も好きなので、いいキャラしていると思うわ。
私たちを冷やかしだって判断していた店員も近づいてきているしね。それにしてもいいものが手に入ったわ。ついでに伊達メガネも購入するわよ。シアに似合うもの。
これから毎日、シアを着せ替え人形のように好きな服を着せるわよと考えるだけで楽しいわね。
「ファニー様は、買わないんですか?」
「え? 私はいらないわよ」
私はいつも同じような服しか着ていない。私も美少女だからどんな服でも似合うと思うけれど自分で着るよりもシアを着せ替え人形にしたほうがいいもの。
「私だけ買ってもらうのは、ちょっと……」
「そうですよ。お客様! お客様も着せ替え甲斐があります! こちらの方とお揃いで購入するというのはどうでしょうか? 色違いでお揃いだといいと思うのです」
この子、とても接客意欲が凄まじいわね。
お金を持っている人に金を落とさせようとするのは、商売人としては間違っていないわ。
でもそうね、シアが私が買わないと遠慮しちゃうと言うのならば私のも適当に買ってもいいわね。お揃いだとシアは嬉しいのかしら。私の可愛いお人形さんとお揃いの服を着るのも一興かもしれないわ。
そう考えて私もシアよりは少ないけれど洋服を買った。
もちろん、最初の服屋さんだけで終わりではない。その後、私は遠慮するシアを連れて何軒も服屋を回った。だって他のお店も見た方がシアに似合うものをもっと見つけられるかもしれないもの。
「ファ、ファニー様! 買いすぎでは?」
「全く買いすぎではないわ。これは私にとっての投資よ。シアは私に飼われているのだから、私が楽しめるように沢山の服を着る義務があるのよ」
「えぇ……?」
大量に服を買っていたら、シアに困惑の声をあげられた。あまり表情の変わらないシアが困惑しているのも可愛いわ。一緒に買い物をして少しは私に慣れてきたのかしら。
慣れてきたらもっとシアは可愛くなるのかなと楽しみになっている。
服屋だけではなく、アクセサリーショップにも向かった。髪飾りやアクセサリーなど、沢山あるわよね。シアに似合うものばかりだわ。シアの銀色の髪に映える色って何かしらって考えるだけでワクワクしているわ。
やっぱりシアに色んな髪型をしてもらうのもいいわよね。あとはもっとお人形さんが美しくなるために投資はしたいわ。肌にいいものなども色々購入したわ。
魔法でもある程度どうにもなるけれど、こういう美容品も大事だもの。
シアが自分だけ買ってもらうのは……っていうから、髪飾りなども一部お揃いになったわ。
買い物をある程度終えた頃、シアは少し疲れた様子だった。連れまわしすぎたみたいなので、私はシアと一緒にカフェに入った。
二人で向かい合って座って、食事を頼む。
食事を待っている間に、周りの話声が聞こえてきた。
「そういえば聞いたか? ロージャス王国のこと」
その”ロージャス王国”という単語が聞こえてきて、シアが挙動不審になっていた。
やっぱりそこがシアの祖国なのでしょうね。シアははっとしたように私を見るけど、私はシアが何処が出身でも問題がないからにっこりと笑った。
私の可愛いお人形が何処から来ただとか、どういう事情があるかとかそんなのどうでもいいの。可愛いお人形が今は私に飼われているっていう今が大事だもの。
「新しい『聖女』が幅を利かせているらしい」
新しい『聖女』ということは、シアの後の『聖女』ということだろうか?
――此処とロージャス王国は距離があるけれど、そういう噂が流れてくるほど、派手にその国では色々動いているのだろうか。




