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『魔女』、『聖女』を拾う ①

「あら、珍しいものが落ちてるわ」



 私の名は、ファニー。

 森に住む『魔女』だ。昔は……国に留まる事もあったけれど、色々あって今はのんびりとした生活を送っている。




 私の住む森は、魔物や精霊が多く溢れる。

 私はほら、天才的な才能を持つ『魔女』だから悠々と暮らすことが出来るけれど、普通の人だと此処にきたら死んじゃうの。この場所って人が死にやすい場所なのよね。私もよく死体を見かけるわ。


 だから死の森とか物騒な名でよばれてる。加えて私は悪い『魔女』認定されてるので、時々討伐隊とかくる。全部あしらうか殺しちゃってるけど。




 まぁ、そんな私は見た目は美少女なので『魔女』だと名乗らない状況で街とか行くと街の人たちは結構色々めぐんでくれたりする。まぁ、私の方が凄い年上だけど。見た目は十代だからね。有効活用できるものはなんでも有効活用しないと。

 そういう街の人たちは、私が『魔女』だと言われて恐れられているって知らない人も多いのよ。見た目がか弱いっていうのは、相手を油断させるのにもってこいよね。








 さて、そんな私は精霊に人が倒れてるなんて言われて覗きにいったわけ。

 正直死体が落ちていることは山ほどあって、そういう死体って魔物に食べられてしまうことが多いの。だけど生きている人間が落ちているって話だったから、興味本位で見に行ったの。




 この段階で私はその子の事を助ける気もなく、ただ覗き見しようとしていただけなんだけど。

 だって正直言って他人がどうなろうとどうでもよくない? 私は私が楽しく生きることしか考えてないのよ!






 覗いたらあら不思議、それはこの世界でも重要な『聖女』様だった。




 ぶっちゃけ驚いた。




 この世界、『聖女』という存在がいる。それは特別な力を持ち、神に愛されているとされている存在だ。

 魔物が入ってこないように結界を張ったり、魔物が現れた時に浄化したり、傷ついた人を治したりと大忙しで、それはもう『魔女』である私と違って人々に好かれる存在である。

 『聖女』という存在は一人がいれば、その国が栄えると言われている。実際に『聖女』は特別な力を持っているので、誰にとっても特別な存在だ。『聖女』が国にいるというだけでも箔がつく。私が国の重鎮とかの立場なら、絶対に『聖女』という存在を手放したりはしないだろう。






 そんな存在なはずである『聖女』がボロボロで死の森にいるのは明らかにおかしい。しかも胸糞悪いことに、体を暴かれた痕跡がある。……どこの誰が、『聖女』なんて神聖な存在にそんなことをしたのだろうか。

 私も同じ女性なので、嫌な気分になって仕方がない。




 ……っていうのも気になるけど、それよりも私は倒れ伏している『聖女』を見てびびっときちゃった。






「なんて可愛いの!!」



 思わず私はそんな声をあげて、キラキラした目でボロボロの『聖女』を見てしまう。



 『聖女』は確かにボロボロで、服も破かれていて、体を暴かれた跡もあって――だけど、『聖女』はとても綺麗だった。





 美しい銀色の髪。乱暴されてボサボサだけど、それでも光り輝いている。

 瞳は閉じていて瞳の色は見えないけれど……、どんな色をしているのかしら。

 真っ白な肌は傷だらけで殴られた跡さえあるけれど、それでももちもちとしていた。

 着ていた『聖女』としての真っ白な服は破られている。胸元がはだけていて、私のものよりも大きな胸が見える。




 ……綺麗で、可愛い。

 まるでお人形さんみたい。




 まだ、生きているのを確認する。

 私はこの綺麗で可愛いお人形を飼いたいと思った。






 だって、落ちてたんだもの。そして私が拾ったのだもの。私のものってことでいいわよね? だっていらないからこそ、こうして捨てられているのでしょう? いらないのなら、私がもらうわ。私が飼うの。



 そんなことを考えて、ふふと思わず口から笑みが零れる。




 もし誰かが取り返しに来たとしても帰してあげない。

 もし『聖女』が嫌がったとしても無理やり飼ってあげる。

 だって私が飼いたいと思っているのだもの。拾われた相手の意志なんて正直関係ないわよ。私が飼いたいって思っているから、何が何でも買うの。






「『魔女』様笑顔が邪悪ー」

「ふふふ、なんとでもいいなさい!! この子は私が飼うのよ」



 周りにいる精霊たちに、邪悪な笑みをしているなんて言われてしまった。

 でも正直邪悪なんて言われようとも、『聖女』を飼うことはやめない。精霊たちも私が自分の意志を曲げないことなんて知っているだろう。



 私は魔法を行使して、ボロボロの『聖女』にまずは回復魔法を施す。

 ふふん! 『魔女』って呼び名だと攻撃魔法ばかり使えるって思われがちだけど私はオールマイティなの!


 だって折角連れて帰ったのに『聖女』が死んでしまったら嫌だものね。

 傷を治して、呼吸が穏やかになったのを確認して私は『聖女』を魔法で浮かせる。



 そして私はそのまま『聖女』を自分の家へと持ち帰った。


※以前投稿した短編『捨てられた『聖女』を拾ったので、『魔女』は飼うことにした。』の長めバージョンになります。

長くて10万字程度の予定です。最低でも二日に一度は更新していこうと思います。一話は短編とほぼ同じです。


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