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 03 幼馴染と小学校②


 忙しくて予約投稿するの忘れてました。

 次回は大丈夫です……たぶん。


 中盤に少し加筆してます。




 五年生の冬、僕のクラスに転校生がやって来た。こんな時期に転校生など珍しく教室は騒めき立っている。そんなクラスメイト達を制するように、前方から大きな声が教室内に響き渡った。


「みんな静かにしろ~!この子は市内から転校して来たT君だ、ほら自己紹介して!」


 教壇に立つ中年の担任教師は、今しがた紹介した男の子の肩を軽く叩いて促す。すると彼は、おどおどした様子で口を小さく開いた。


「……てぃ、Tです。よろしく」


「みんな仲良くしてやれよ!」


 こうして僕のクラスに新しい仲間が加わった。

 転校生のT君は、少し暗い雰囲気がある大人しい性格の男の子だった。周囲の人間に対し、何処か怯えているような様子を見せている。

 僕がクラスメイトに囲まれていたT君から、越してきた先を少し強引に聞き出すと、彼の住所が僕の家の近所だと分かって嬉しくなる。

 そしてその日の放課後、僕はT君をグループの仲間達に紹介することにした。


「転校生のT君だよ、家が僕んちの近くなんだって!」


「あたしS恵だよ!T君よろしくね!」

「わたしA子、仲良くしてね~」

「……よろしくね。私はN美」


 双子の女の子の方であるS恵とA子ちゃん、それに五年生からグループに加わったN美を入れた女子達は、T君をあっさり迎え入れてくれる。


「僕はS郎です。T君よろしく」

「……B太です」

「俺はK也!T君、今日から仲間だな!」


 双子達の1つ下の弟S郎とB太の年下二人組、それとこれも五年生から加わった仲間のK也達も快く迎えてくれた。

 しかし一人だけ、T君を怪しげな目で見る仲間がいた。


「僕はS雄……若白髪、ちょっとこっち来て」


 双子姉弟の片割れであるS雄くんは、T君を横目に僕に手招きしてきた。S雄くんは僕を仲間達から引き離し、周囲に人影が無いのを確かめてから話を始める。


「あのT君って子、大丈夫なの?」


「大丈夫って?T君がどうかした?」


「いや……ほら、T君ってちょっと暗そうじゃん?僕らのグルーには合わないんじゃないかって……」


「そうかな?大人しそうだけど、良い子だと思うよ。B太だって、最初はそんな感じだったじゃん」


「そりゃ、B太はお前に懐いてるから…」


「大丈夫だって、T君もB太みたいに仲良くなれるよ。T君さ、珍しい本とかオモチャいっぱい持ってるんだって!今度それを見せてくれるって言ってた。なぁ、いい奴だって」


「う~ん、若白髪がそう言うなら……」


「よし、決まりだな!行こうぜ!」


 S雄くんの不穏な雰囲気に僕は少しだけ不安を覚える。いったいS雄くんには彼がどう見えたのか?

 この時の僕はT君が仲間に受け入れられたことと、人数が増えたグループでどんな遊びをしようかということに頭がいっぱいだった。


 僕達のグループは、僕にS雄くん・K也・B太・S郎に新しく加わったT君の男子6名、A子ちゃん・S恵ちゃん・N美の女子3名、総勢9名で放課後や休日に遊ぶようになる。

 基本的には外で走り回ることが多かったが、インドア派のT君が加入したことにより、部屋で本を読んだりゲームをしたりすることも増えていった。

 T君はいつも部屋の角で膝を抱えて難しい本ばかり読んでいて、そんな彼を僕やS雄くんが外に引っ張り出すのが何時もの定番となりつつあった。




 そして五年生の三学期末、僕達に突然の別れが訪れる。


「僕達、引っ越すことになったんだ。それで、学校も転校するらしい……」


「えっ?え、S雄くん今なんて……ねぇ、S恵ちゃん嘘だよね?S郎くん、何か言ってくれよ!」


 放課後いつものグループで集まったところ、S雄くん達兄弟が神妙な顔で仲間達を待ち構えていた。S雄くんは苦々しい顔で、S恵ちゃんは瞳を潤ませ、S郎くんは俯いていて顔が見えない。

 突然のことに慌てて三人に詰め寄る僕を、A子ちゃんN美ちゃんの二人の女子が嗜める。


「ちょっと、若白髪くん落ち着いて!」


「若白髪くん……S雄くんの話を聞いてあげて」


 この時の僕にとって、S雄くんは親友と呼べる存在だった。放課後に一緒に遊び、休日や夏休みには彼を含めたグループのみんなと色々なことをやってきた。他の仲間達が居ないときは、互いの家を行き来し、二人で遊んだり宿題を見せ合ったりもした。

 それほど仲の良かった友達は、幼い頃のA子ちゃんを除けば男子ではS雄くん只一人だったのである。

 他の子達ともそれなりに仲は良かったが、まだ親友と呼べる程の存在では無かったのだ。


「若白髪、みんなをよろしくな。お前がみんなを纏めてくれよ?このグループは、言い出しっぺのお前がリーダーだから……」

 

「K也、若白髪をよろしくな。それとお前もう少し勉強しろよ!居残りばっかしてると、仲間外れにされちゃうぞ?」


「B太、若白髪に甘えてばかりじゃダメだからな?年下だからって遠慮するなよ」


 S雄くんはグループの男子達の肩を抱き、それぞれに言葉を残そうとしていた。そんな彼の様子にS恵ちゃんとS郎くん、二人の涙腺は決壊してしまう。

 残された者たちは、そんな二人を慰めていた。


「T君、君は頭が良いからみんな為に色々考えやって。それと、僕の代わりに若白髪の……」


 そこまで言い掛け、S雄くんは黙してしまう。

 彼が何を思ったのか、何を言いたかったのかは分からない。S雄くんはT君から目を離し、僕の元へとゆっくり歩んでくる。


「若白髪、僕たち離れても親友だよな?」


「……うん、親友だよ」


「手紙書くから、絶対返事くれよ」


「うん……」


 そこまで言うと、S雄くんは姉と弟の二人を呼んで家に帰っていった。まだ引っ越しの準備が済んでいないのだと苦笑し、学校のお別れ会の日に引っ越すと告げて彼らは去った。


「若白髪くん……大丈夫?」

 

 涙をこらえる僕の背に、A子ちゃんはそっと手を置いてくれるのだった。



 お別れ会の日、別れを惜しむクラスメイト達の中で僕は泣かなかった。泣いてしまうと何かが終わってしまう気がしていた。

 そんな僕の背後から声を掛ける者がいた。


「泣かないんだ?」


 僕が振り返るとそこにはT君がいた。

 彼は口元に笑みを浮かべながら、意味深な態度でクラスメイト達に囲まれるS雄くんを見ていた。


「泣かないよ、絶対に泣かない」


「ふ~ん、親友なんだよね?」


「親友だから、泣かないんだ」


「へぇ~、なるほど?うん、まぁいいや」


 T君は不可解な態度を取りながら、僕に背を向けてクラスの輪の中に入って行く。今になって思うと、この時のT君の様子をもう少しだけ注意深く窺っていれば、この先起こる災いを避けられたのかもしれない。

 しかしこの時の僕は親友との別れに涙を堪えることに必死で、彼の様子に気付くことは出来なかったのである。



………つづく




 次回

 4/8(水)22時頃更新予定……


 次の回は、以前ワタシが別のユーザーネームだった頃にも書いたエッセイと少し内容が重複します。


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