異世界の冒険者ギルドあるある。
詳細なビジュアルを脳内で再生しながらご覧ください。
ファンタジーラノベでよく目にする『冒険者ギルド』。
ある日、その冒険者ギルドあるあるを出し合うtweetを見つけた。
【受付はカウンター制】……あるある。
【冒険者カードが身分証】……あるある。
【受付にはいつも美人スタッフ】……あるある。
【ギルドマスターがスキンヘッドのガチムチ】……あるある。
【ギルドマスターが筋骨たくましい】……上とセットの時もあるある。
他にもいろいろあった。見ていてなかなか楽しい話題だった。
このあるあるをいかに面白く書くか。そこが作者の見せどころ。
なーんて偉そうに思っていたある夏の日。
それから暫くして、知人たちと行ったとあるショッピングモール2Fの……とある店の床が揺れた。
中央が吹き抜けになった構造ってのは、地震でなくても揺れる。高所恐怖症にとって恐ろしい建物だ。
思わず俺は一歩後ずさる。
俺の足元の床だけがピシピシと音をたてて割れ、そして落下する!
そんな事を考えてしまうのが高所恐怖症だ。異論は認める。
まぁそんな事、起こるはずがないんだけどな。
『ピシッ――』
ん? 今の音はなんだ?
ははは。まさかな。
「お、おい夢雄……お前、足元の床が――」
「え?」
友人に言われ足元を見た瞬間――床が割れ、俺だけが落下した――。
「こ、こんな所で死ぬなんて、嫌だあぁぁぁっ!」
が、落下した先は異世界だった。
何を言っているのか分からないだろうが俺には分かる。
そう。俺は遂に異世界転移を果たしたのだ!
転生でないのは少し残念でもあるが、子供時代は面倒くさいので超絶スキップしたと思えばいい。
さて、異世界に来たんだからやる事は一つ。
「まずは冒険者ギルドに行こう!」
その為にも町に行かなければならない。
街道らしき道を発見し、とにかく町を目指す。道中、この先にある町の町長の娘だという美少女を助けた。どうやって助けたかは省略。
彼女が乗せられていた馬車でサクっと町へ到着する。
「冒険者ギルドでしたら、町の中央です。御用がお済になられましたら、また是非ここにいらしてください」」
町でひと際大きな建物の前で顔を赤くした彼女を下ろし、俺は言われた通り町の中央へと向かった。
途中、行き交う人に場所を再確認しながら、だが全員口を揃えて「町の中央だ」と答えた。住人全てが冒険者ギルドの建物を知っているみたいだな。
やって来たギルドのスィングドアを押し中へ入るが、そこには冒険者らしき人影は全くなく。
そして――
「「冒険者ギルドへようこそ!」」
と、野太い声で斜め45度にお辞儀をする、スキンヘッドのマッチョたち。しかもパンいちだ。あ、パンツ一枚ってことね。
「待てえぇぇい! ここまであるあるだったのに、なんでそこで受付嬢がスキンヘッドのマッチョなおっさんズなんだよ!」
「そ、そのような事を申されましても。これが冒険者ギルドでは普通ですが?」
「そんな訳あるかーいっ。美人受付嬢を出せ! 眼鏡っ娘を出せ!! 寧ろあんたらはギルドマスターだろ!?」
「はひっ。わ、我々はギルドの受付専用スタッフでして。美人で眼鏡っ娘……それはつまり――」
ガチムキマッショのおっさんズが揃って体をくの字に曲げる。完璧なまでのシンクロ率だ。
おっさんズの言葉が合図だったかのように、彼らの後ろにあった扉がバンッと勢いよく開け放たれた。
現れたのはメイド服を着た眼鏡の美人。僅かに幼さが残る、これぞ『受付嬢!』然とした女性だ。
これだよこれこれ。これこそまさに冒険者ギルドあるあるだろう!
と思ったが、何故か彼女の手には調教用の鞭が握られており……。
「新規登録にいらっしゃった方に、なんて失礼な態度を取っているのですか! お仕置きよ!!」
ピッシィィィィっと鞭が鳴る。
そしておっさんの「あぅっ」という、どこか快楽に身もだえるような、吐き気のする声が聞こえた。
「あふんっ。ギ、ギルドマスター、有難き幸せ!」
「ギルマス、ぜひ自分にもお仕置きをっ」
「私にもぜひ!」
「いいえ、この私にこそっ」
俺はスイングドアをそっ閉じした。
こうして……異世界の冒険者ギルドは衰退し、冒険者を名乗る奴も居なくなった。
居なくなって当たり前だよ馬鹿野郎!!!
後半をシンプルにしました。




