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東から西に濃紺から丹色のグラデーションが空に浮かぶ時間帯。武蔵をはじめ、利根、筑摩、島風、夕雲、岸波を率いた黄丹艦隊と白夜に託された信濃、秋月、涼月、明石を預かった昏鐘鳴艦隊が合流した。
現在地はミッドウェー島の南方六〇〇カイリ。北回帰線上だ。
白夜たち十二人全員は信濃の艦橋横の甲板に出ている。
白夜は艦橋を背に十一人の前に出る。
「まずはお疲れ様。昨日の戦闘は反省、改善すべき点はあるが見事だった。随時ソフトウェアのアップデートはしていくが、今回はこれだ」
白夜は一歩横に退く。そこにあったのは艦橋の壁に貼り付けられた長方形の黒い布。
「一応聞くわよ。白夜、なにそれ? 経緯も含めて教えてちょうだい」
「わかったよ。まあ、とりあえずこれからだな」
白夜は、バサッと壁の布を取り払う。そこから現れたのは、一枚の絵。否、旗だった。
描かれているのは、言うなれば、濃紺と丹色の旭日旗。しかし太陽の位置は大日本帝国海軍や海上自衛隊の軍艦旗である旭日旗とは左右逆になっており、まるで水平線の向うに沈んで行っているかのように、円の下四分の一とそこから出る光線は切り取られ、その下には三本の丹色のラインが下に向かって長くなるようにあしらわれている。加えて、太陽の左斜め上には三条の淡い灰色の雲がかかっている。
「まず、言っておくがお前たちは陛下の艦でなければ、日本海軍の艦でもない。俺の、俺たちの艦だ。いわば海賊だな。その証拠に艦首の菊花紋章もなければ、旭日の軍艦旗及び戦闘旗もない」
一旦間を置き、深呼吸をする。
「ということで、これがお前たちが掲げる新しい旗だ。俺と冥霞のコンビで使っている黄昏を旭日旗をベースにあしらった。まあ、日出ずる国である日本を名実ともに出奔した身だ。その逆である黄昏はちょうどいい。いわば俺たちは黄昏の艦隊《The Twilight Fleet》ってところか」
「それで本音は?」
冥霞は白夜の言い分を信用していないらしい。白い目で白夜を見ている。結構いいこと言ったつもりなのに。
「クレセリアとの別れ際に貰った端末があるだろ。あれに艦隊名を登録して使うシステムがあったんだ。それを使うと俺たちを含めた彼女たちに呼ばれた者の艦隊名、撃破数、存在の有無が見れるようになるみたいだ。これならどの艦隊がどこにいるかはわからなくても、どの艦隊の近くにいたかわかる」
冥霞は自分の端末を開いて見てみる。ホーム画面に新しいアイコンが増えていた。アイコンを開いて中を確認してみるとすでに「黄昏の艦隊《The Twilight Fleet》」で登録が終わっていた。艦隊旗として目の前の旗も登録済みだった。
「あと、面白そうだったしな」
絶対に最後のが一番の理由だ。そうに違いない。
「しかしそれでは逆にこちらの情報を渡すことになりませんか?」
シナノが己の疑問を問いかける。情報の有無が勝敗を分ける。それを少しとはいえ、私低位のだろうか。
「それはそれでいいのよ。こちらも読みやすくなるからね」
白夜の考えを読み取っていた冥霞が答えた。
「さて、これからだが硫黄島に向かう」
他に質問等がないことを確認してから白夜は次の目的地を伝える。
「どうしてそこなんだ? 提督」
理由を聞いてくるムサシ。
「そこに基地施設が置いてあると思うんだよ。まあ、勘だけど。でもそこに基地があれば日本に近い分、俺と冥霞は過ごしやすいと思ってる」
「それも大切ッスよね」
「姉さんとぉ、同じく~」
「他には何もないな? よし、一九〇〇に出発、針路二七〇。各自戻って出発準備。解散」
「「「「「「「「「「ハッ!」」」」」」」」」」




