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黄昏の艦隊~The Twilight Fleet~  作者: 柱島頼
第二章
12/25

0-1-1

 場所は戻って太平洋。

 黒潮続流と北赤道海流の境目を通って二週間。

 白夜率いる黄昏の艦隊は目的地である硫黄島を目視できる距離まで近づいていた。


「どうだ? 港湾施設は見つかったか?」


「確認出来ません」


 信濃が硫黄島に飛ばしていた偵察機の情報を(もと)に報告する。


「やっぱりか。駄目元で行ってみたが、当てが外れたな」


「白夜! 硫黄島行きってダメ元だったの!?」


「そうだぞ」


 あっさりと白夜は返答する。


「日本の本土防衛の観点からみて、硫黄島は非常に重要は島だ。あそこに港を作れるなら太平洋戦争前にでもとっくに軍が作ってるさ」


 白夜の言の通り、硫黄島は日本の本土防衛の要であった。

 太平洋戦争開戦時、日本軍の小笠原諸島防衛の要とされており、平地の少ない父島の代わりに硫黄島に飛行場が建設された。その後、昭和十九年に父島に着任した栗林忠道中将(当時)は飛行場を有していることから硫黄島が米軍の標的になると判断し、父島から硫黄島に司令部を移し、要塞化を行った。一方、米海軍はB-29爆撃機及びその護衛を務めるP-51戦闘機の補給基地として運用するために硫黄島攻略作戦「デタッチメント作戦」を計画した。

 米軍は太平洋戦争末期の昭和二十年二月十九日に硫黄島の上陸を開始。米軍が予定していた五日を大きく超える一ヵ月半にも及んだ激闘の末、硫黄島は両軍に多大な戦死者を出しながらも米軍の占領下になった。これによって、サイパンからでは日本本土爆撃の際に航続距離の問題で運用できなかったP-51の往復可能範囲に日本本土が入り、B-29は悠々自適に本土並びに帝都爆撃を行うことができるようになった。

 以上より、硫黄島は日本の本土攻略の要であり、本土防衛の防波堤であった。にも拘わらず、港を整備していないことには、それなりの理由がある。

 それは硫黄島は火山活動が活発であるためだ。島の各地から噴出する硫黄による施設の腐食が激しく、平成二十六年には父島を抜き小笠原諸島で最大の島になるほど隆起活動も激しい。したがって、元の世界でも硫黄島に港が作ることができない。海からの上陸もボートもしくはLCACを用いて行っている。

 ともかく、元の世界同様硫黄島には港がないことが判った今、この海域に長居は無用である。

 さて、次はどこを目指そうか。

 近場で有名な軍港といえば横須賀、呉、佐世保、馬公、そしてグアム。この中で最も外洋に進出しやすい港はグアムである。それに加えて、グアムは現海域から最も近く、周囲に大きな島がなく見晴らしがいい。横須賀は浦賀水道を抑えられたら逃げ場がない。呉は瀬戸内海、佐世保は日本海、馬公は台湾海峡それぞれの両端にしか逃げ道がなく、近くに大きな山や島があって見通しが悪い。

 決まりだ。


「針路一八〇(ヒトハチマル)。行き先は大宮島――グアム島だ」


「宜候。取舵、針路一八〇」


 信濃をはじめとする黄昏の艦隊は西に向けていた艦首を南に向ける。


「次は港があるのでしょうね?」


「さあな。次の目的地もいわば勘だ。軍港があるところで拠点としてベターなものを選んだだけだ。真珠湾の例に従っただけ」


 白夜は冥霞の嫌味を含んだ問いに涼しい顔で答える。

 白夜たちバトルロワイヤル参加者のために軍港が用意されているという情報以外何もないのだ。見つけるには前例に縋り、勘に頼る他ない。


「とりあえず、何も起こらないことを願いたいな」

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