戦闘です
どれくらい話していただろう。もうネリネに緊張はみられなかった。
「そろそろでるの。町の方向はどっちなの?」
「えっとね、あっちのほう。」
私たちは洞穴からでて町を目指すことにした。
「静かに行くの。町さえ見えちゃえばこっちの勝ちなの。」
「まだ魔物もいるかもしれないもんね。」
周りに注意しながら私たちは歩き出した。
今のところ魔物の姿はない。
案外町は近かったようだ。少し歩くと、草花のない道にたどり着いた。
「ここまで来たらもうすぐね!」
ネリネは笑顔を見せた。どんなにお話して、緊張が和らいでも、命を狙われた恐怖はなくならなかった。
「じゃあ、急ごうなの!」
私たちは互いの手をとりあって、走り出した。
しかし、
「きゃあぁぁぁ。」
町の門が見えてきたとき、横の茂みから魔物が飛び出してきた。
「あと少しだったのに」
門は目視できる範囲にある。しかし、門番が助けに来るより先に私たちはこの魔物に食べられてしまうだろう。
ネリネは絶望した。
「しょうがないの。ここで倒してしまうの」
それでも、そんなネリネに希望を与えるのは1歳年下のリリーだった。魔物に襲われていたときも助けてくれたリリーはここでもネリネを助けてくれるようだ。
「無、無理だよ。あんなに素早い相手。」
「見ててなの。水球!」
リリーが魔法を発動させると、魔物に水の塊が飛んでいった。
しかし、魔物は素早かった。横に避けるとともに、こちらにかけてきた。
「次は、落とし穴!」
この魔法は精霊の国でいたずらのために、ママが子供の頃につくったらしい。ママにもやんちゃな時期があったようだ。
魔物の進行方向に穴を開けた。
すると、魔物はそれを飛び越えようと上に跳んだ。
「空中に逃げ場はないの。火球!」
拳大の火球が魔物へと飛んでいった。
そのまま魔物は避けることもできず火球に当たり燃え上がった。
「きゃうぅぅぅ」
鳴き声を聞くと罪悪感を覚えた。
初めての命を奪ったのだ。5歳の心にそれを耐えることは酷というものだ。
それでも、友達を守るため、命を奪うことに向き合うためにリリーは決して目をそらさなかった。
やがて、魔物は動かなくなった。