初めてのお外です!
ママが外の世界に連れていってくれると約束してから数日。
ついに、お外に出れる日になりました!
「むふふー」
「あらあら、リリー。とても嬉しそうですね。」
「ママ! うん! やっと外の世界がみれるもん!」
「ふふふ。でも、あまり遠いところに行ってはダメよ? 森のなかには魔物も住んでいるから、襲われたら危ないですからね。」
「はいなの!」
そう言われても、初めての外に出れるこの気持ちを抑えることはできなかった。
「では、いきましょうか。私の転移魔法で移動しますから、手を握ってください。」
「転移!? わかったの!」
ママが転移魔法を使えるなんて初めて知った。転移魔法は伝説となっていって、精霊でも簡単には成功させることができないらしい。
(そんな転移魔法が使えるなんて、やっぱりママはすごいの)
ママの手を、ぎゅっ、と握るとママも握り返してくれた。
ママの手の優しい感触を感じて、ママの顔を見ようとすると、一瞬視界が揺れた。
気づくと今までいた部屋ではなく、森のなかに移動していた。
「では、ママは挨拶にいってくるので自由にしていいですが、あまり危険なことはしないでくださいね。」
そういうと、ママは森の奥へと進んでいった。
私はママが行っても、しばらく動くことができなかった。それほどに初めて見る外の世界は新鮮だったからだ。
精霊の国にも森はある。けれど、ここにあるのは今まで全くみたことのない植物だらけだった。
「わあ、わあ! すごい! こんなにも精霊の国と違うなんて!」
嬉しくなって思わず、駆け出してしまった。
みたことのない木々や花が視界の端を通りすぎていく。次々と変わる光景に胸が踊る。
やがて湖に行き着いた。湖に反射する日光はきらきらして輝いていた。
そこでやっと一息ついて、気づいた。思わず走り出してしまって、帰り道が分からないことを。
「ど、どうしよう。周りを見ても木しかない。ここがどこかなんて全くわからないの。」
だんだん心細くなってきた。やっぱり5歳児なのだ。ひとりで森にいるのは怖い。さっきまでは物珍しい光景に意識を取られて、考えられなかっただけなのだ。
「ママについていけばよかった。ママどこ……。」
ワオーン
遠くでなにかがなく声が聞こえた。
「ひいっ! ま、ママぁ」
目には涙がたまっていた。ここはいつも見ている精霊の国ではなく、森なのだ。声をかけられる人は誰もいなかった。
ワオーン
また、何かの声が聞こえた。
キャァァァァ
ただ今回は幼い、女の子の叫び声も聞こえた。