出発……していました
ガタン
ゴトン
「ん、んー? ふぁあー。」
私は体が揺れているのを感じ、目が覚めた。
「あら、リリーちゃん起きたのね。」
「リリー、おはようございます。」
「ねりね、ぷりむら、おはよー。」
寝起きでまだ頭がはっきりしない状態で挨拶を返す。
だんだんと頭がクリアになっていく。
そして今いるのが宿のベッドの上じゃないことがわかった。
「ここは?」
「馬車のなかよ。王都までは距離があるし、冒険を続けるなら馬車は必要だって思って買ってきたの。」
「ふふふ、リリーがあまりにも気持ち良さそうに眠っていたので起こすのはもったいな、じゃなくて可哀想だと思い、起こさずに運んだのですよ。」
「はい、これ。」
ネリネに手渡されたのはなにかを紙で包んだものだった。
「これは?」
「朝御飯よ。宿屋に言って馬車のなかでも食べれるようにパンに具を挟んだものにしてもらったの。私たちはもう食べたからこれはリリーちゃんの分。」
「いただきます。」
包みを開けると、パンに挟まれ、みずみずしい色をした野菜とタレのかかったらお肉が現れた。
早速、パンを口に含む。すると、濃い目のタレで味付けされたお肉が朝の空腹を満たしてくれる。野菜のしゃきしゃきとした食感とさっぱりとした味のおかげで、タレとお肉の味がくどくならずにすんでいる。朝からでもぺろりと完食できてしまった。
「ごちそうさまでした。」
「リリーちゃん口にタレがついてるわよ。」
「むぐっ!」
ネリネが口についたタレを拭いてくれた。
ちょっと子どもっぽくて恥ずかしい。
「はい、取れた。」
「ありがと、ネリネ。それにしても、ネリネ馬車なんて扱えたんだね。」
「私馬車なんて扱えないわよ。そもそもここにいるんだし。」
それもそうだ。ネリネはここにいる。プリムラの方を見る。
「私でもありません。」
じゃあ、いったい誰が馬車を動かしてるんだろう。
そう思い馬車から顔をだすと、御者席にいたのは──
「あ、ママおはよう!」
「ミラ!?」
ミラ1人だけだった。しかも、手綱も見当たらなかった。
「驚くわよね。私もそうだったわ。」
「ミラが馬に話しかけたと思ったら、馬がミラの指示に従うようになったのです。」
ミラは魔物。その事が関係しているのかな。
でも、狐の魔物のはずなんだけど。
そもそも、人型になれるのだから普通の魔物かすら怪しい。
ますます、ミラへの不思議が深まる一方だ。
「ママ、ママ! 見てて!」
ミラがそういって、馬に話しかけると馬車の速度が上がる。思わず馬車にしがみつく。
「み、ミラ! 早いよ!」
「おもしろーい!」
ミラは風を切って進む速さに興奮して私の声が聞こえないみたいだった。
ある程度進んでミラも落ち着いたのか、ようやく馬車の速度が落ち着き、休憩のためにも一旦止まることにした。
「ミラ! もうあんな危ないことはしちゃダメ!」
私はミラを叱った。それほどまでに馬車の速度がこわ、危なかったのだ。
「ご、ごめんなさい。」
ミラがしゅんとした。どうやらちゃんと反省しているみたい。
だから私は叱るのをやめ、次にミラの頭を撫でて褒めることにした。
「でもミラはすごいね。お馬とお話ができるんだから。ミラのおかげで馬車を動かすことができてるよ。ありがとう。」
ミラの顔がさっきのしゅんとした表情から一転、満開の花のような笑顔に変わった。
その笑顔を見ると私も嬉しくなってくる。ミラの笑顔は人を惹き付ける力がある。だって、ネリネもプリムラも緩んだ顔でこちらを見ているのだから。
「叱ってるリリーちゃんも可愛いわ。」
「でもやっぱりミラと一緒に笑っている姿が1番ですね! もう、どんな宝石よりも価値があります。」
ミラの笑顔に惹き付けられてるんだね……?




