ただの魔物じゃありませんでした
鳥のさえずりが聞こえる。
洞窟の入り口からは、朝露に反射した日光がキラキラと輝き、入ってくる。
「ふぁー。よく寝た。」
一夜明けて、雨は止んだようだ。
隣のネリネをみるとまだ幸せそうに寝ている。そんなネリネをみているとこっちまで幸せな気持ちになる。
ずっと眺めていたい気もしたけど、ネリネが起きる前に朝御飯を作ることにした。
「ん、なんか体が動かないな。」
体が起き上がらない。なにかが乗っているようだった。
「あーミラージュフォックスかな。」
昨日魔物の傷を治して、一緒に寝たことを思い出した。
可愛い姿を見ようと寝袋を除いた。
「きれいな白い肌だなー。ん、肌?」
なぜかそこには毛並みではなく、肌が見える。よく覗いてみると、そこには……
「きゃあぁぁぁぁぁ!!」
「リリーちゃんどうしたの!?」
私の悲鳴にネリネが飛び起きた。
「ひ、ひと。女の子が……!」
白い肌。膝まである白銀の髪。うっすらと赤い頬。身長は130センチぐらいの狐耳と尻尾のついた女の子が私の胸の上で寝ている。
「リリーちゃん。誰よその女は!?」
なんかネリネもおかしくなってる!?
「ち、ちが。朝起きたら目の前に。」
「私という者がありながらー!」
ネリネは寝ぼけてるだけ。そうだと信じたい。
夢なら覚めてほしい。
「きゅうー。」
朝からどたばたしたせいか、私は気を失った。
***
鼻腔をくすぐるいい香りが漂っている。これは昨日作った煮込み料理の匂い。
「ふぁー。美味しそうな匂い。」
私は目が覚めた。
「あら、リリーちゃん。おはよう。」
「おはよう、ネリネ。」
ネリネが先に起きて朝御飯を作ってくれていたようだ。
「それにしても変な夢みたよー。朝起きたら目の前に知らない少女がいてね。ネリネが急に怒り出すの。」
「あはは、変な夢。よかったんだけどね……。」
ネリネは私から目をそらす。
そらした方向をみると
「ママ!」
女の子が抱きついてきた。
「ゆ、夢じゃなかった。ってママ!?」
「そうなのよ。この娘リリーちゃんのことずっとママって呼んでて。」
あれ、でも夢じゃなかったということは、ネリネが怒ってたのも本当だったって言うことに。
「あの、ネリネはもう怒ってないの?」
恐る恐る聞いてみる。
「怒ってないわよ。私の勘違いだってわかったからね。怖がらせてごめんね。」
「ううん。怒ってないならいいよ。それにしても……。」
私はもう一度少女に向き合う。
「貴女の名前は何て言うの?」
「ミラだよ、ママ!」
「私はママじゃないよ。リリーって言うの。」
「リリー? ママはママだよ!」
ミラのなかでは私はママ以外の選択はないらしい。
「ちょっとずつ覚えていこうね。それで、今料理してるのは私の友達のネリネだよ。」
「違うよママ? パパだよ!」
「パパ!?」
まさか私より胸があるのに男扱いなんて! 怒ってないかネリネを覗き見る。すると
「えへへ。ミラちゃん偉いねー。私がパパだよー。」
「違うよね!?」
思わずツッコミをしてしまった。それにしても、ネリネの幸せそうで蕩けるような表情。とても可愛い。じゃなくて、起きたときに怒ってなかったのはパパと呼ばれたから?
「ミラ。ネリネは女の子だからパパじゃないよ?」
ネリネが少し寂しそうな表情になった気がした。気のせいだと思いたい。
「ママを好きな人はパパだよ? ママはパパが嫌い?」
「私もネリネが好きだよ!」
思わず即答してしまった。まあネリネがなんだか幸せそうだしいいかな。
「ミラのことも好き?」
「可愛い! 私もミラのこと大好きだよ!!」
「これは、リリーちゃんと夫婦になれてこんなに可愛い娘までできるなんて! 大好きが2倍。いやそれ以上! 幸せ……。」
うるうるとした表情で上目遣いされた、好きになるに決まってる。
それはそうと、ネリネの鼻血が尋常じゃない量になっている。倒れたりしないだろうか。天にも昇る表情をしているけど。
「ミラもママとパパ大好き!」
ミラの満点な笑顔がみれたし、細かいことはいいかなって思う。




