傷ついた魔物
「洞窟があるよ!」
「よかった。そこで雨宿りしよう。」
森から抜け出すために街道を探してる最中、大雨が降ってきてしまった。雨のせいで歩きにくく、視界も悪い。幸い、すぐに雨宿りができそうな洞窟を見つけることができた。
「くしゅん」
「りリーちゃんも私もこのままだと風邪引いちゃうね。」
「とりあえず、火を起こそ。ファイア」
収納魔法から予め拾っておいた枝を取りだし、魔法で火をつけた。
「着替えがあればよかったんだけど。」
「次の町についたら予備の防具や服も買ったほうがいいわね。」
雨に濡れて寒いせいか、自然と私とネリネの距離が近くなる。
パチパチと枝が燃える音がする。
「雨止まないね。」
「そうね。」
もはや私とネリネの間に距離なんてなかった。どちらからだったのだろうか。互いに寄り添いあっている。
「ねぇ、なにか聞こえない?」
「や、やめてよリリーちゃん。私幽霊とか苦手なんだから。」
「違うくて。」
洞窟の奥から生き物のか細い鳴き声が聞こえた。
「やっぱり聞こえる! ライト」
私は魔法で火を光を作り出し、洞窟の奥へ走り出した。
「ちょっとリリーちゃん!?」
ネリネもついてくる。
やがて、何かが横たわっているのが見えた。
「やっぱりいたっ!」
急いで近づこうとする。しかし、ネリネに止められた。
「ちょっと落ち着きなさい。」
「どうして!? 怪我をしているかもしれないんだよ!?」
「感じない? あの生き物魔力を宿してる。」
「それって……。」
魔力を宿している生き物は人間か魔物のみ。
「それでも怪我をしているのを見過ごすことはできない。」
「いいのね? 治した途端に襲ってくるかも知れないのよ。」
「その時はそのときだよ。」
ネリネが心配してくれているのもわかる。それでも私はこの魔物を助けてあげたかった。
ネリネに心配しなくてもいいよ、と微笑みかける。
「もう、強情なんだから。何かあったら私はリリーちゃんの命を優先するからね。」
それは襲ってきたらこの魔物を殺すと言っている。
「ありがとうネリネ。」
私は魔物に近づく。
魔物は狐のような姿をしていた。
「何かに噛まれた痕。それに体が冷たくなってる。すぐに治すからね。キュア」
回復魔法をかけると、魔物の傷が塞がり始める。
だんだん魔物の周りに狐火が浮かび始めた。でも狐火は熱くなかった。
「この魔物、ミラージュフォックスね。でもなんでこんなところに。」
ミラージュフォックスは本来、群れで木の根本に穴を掘って暮らす。こんな洞窟に一匹でいるはずがない。
やがて、ミラージュフォックスに体温が戻ってきた。傷も見当たらない。
「よかった。治ったよ。」
ミラージュフォックスが目を開ける。私たちを視界にいれると、震えだした。
「可哀想に。おそらく人間に商品として捕まったのね。見た目がいい魔物をペットに欲しがるひとも珍しくはないから。」
「ひどいっ。魔物も私たちと一緒で生きてるのに!」
自然と涙が溢れてくる。人間にそんな馬鹿なことをする者がいることに怒りがわいてくる。周りの空気が震えだす。私の魔力が暴走し出しているのだ。
ミラージュフォックスはそんな私をみて、余計怯えだした。
私は深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
そして、ミラージュフォックスにそっと抱きつき撫でた。
「大丈夫。もう大丈夫だからね。」
安心したのか、ミラージュフォックスから震えが消えている。
「今日はここで夜を明かしましょうか。リリーちゃんもそのミラージュフォックスのこと気になるだろうし。」
「うん!」
私たちは寝袋の準備をした。すでに私の腕のなかではミラージュフォックスがすやすやと眠っている。
ミラージュフォックスと一緒に寝袋にはいった。
「おやすみ。明日には元気には体力も戻るからね。そうしたら、群れまで連れていってあげるから。」
もう一度ミラージュフォックスをひとなですると、心なしか穏やかな表情になった気がした。




