5歳になりました
精霊の姫が生まれてから5年の月日が流れた。
私はリリー! 今年で5歳になったの!
そして今日から魔法の勉強ができるの!
みんな魔法を使ってるのに、私にはまだ早いって教えてくれなかったの。でもでも、5歳になったら教えてくれるってママのひしょさんが約束してくれて、今日やっと魔法が使えるようになる!
「リリー? ひとりでにやけてないでこちらにいらっしゃい。今から魔法の勉強を始めます。」
「はい! なの。」
「やる気は十分ですね。まず初めに、魔法を使うには自分の中の魔力を感じなくてはいけません。心を落ち着かせて、自分の体に流れる血とは違う、別の流れを見つけてください。」
「すーはー」
まず深呼吸をして気持ちを落ち着かせてみた。
どのくらい時間がたったかはわからない。けれどだんだん、血とは別に、暖かいものが体を流れるのを感じた。
「マリーせんせー、なんか暖かいものが流れてるの。」
「せ、先生!? 」
私がマリーを先生と呼ぶと、マリー先生は驚いた顔をした。そして、少し引くぐらい顔が緩んでいる。
「先生、先生。フフフ、いいですね。これからは私のことを先生と呼んでください。それと、その暖かいものが魔力です。ではその魔力を意識して手のひらに集めてください。集めることができたら手のひらがさっきより温かく感じるはずです。」
「わかったの、せんせー」
再びにやけ始めるマリー先生を放っといて、私は自分の体に流れる魔力に意識を集中させた。
すると少しだけ、その魔力が動いてくれる感じがした。
「むむむむー」
それでも魔力の動きは微々たるもので、手のひらに集めることは難しかった。
「体に力が入っていますよ。魔力を動かそうと思うのではなく、魔力が手のひらに流れるようなイメージをしてみてください。」
からだに力がはいりすぎて、顔が真っ赤のなっていた私にマリー先生がアドバイスをした。
(魔力の流れ。道が手のひらに繋がるように……)
アドバイス通りにイメージすると、今まで全く集まろうとしなかった魔力が自然と手のひらに溜まっていく感じがした。
「そう、そのままですよ。それで初めて魔法を使う準備が整いました。では、簡単なこの魔法を使ってみましょう。ライト」
先生が人差し指を立ててそういうと、先生の指の先端に小さな光の球が浮かんでいた。
「これは、無属性魔法のライト。ランプの火がないときにべんりですよ。大きさは込める魔力によって変えることができます。では、リリーもやってみてください。」
「ら、ライト」
そう私が言うと、先生よりも弱々しいけれど、確かに光の球が私の手のひらに浮かんでいた。
「光が弱々しいのは、イメージが足りないからです。魔法はイメージさえあればなんでも作り出すことができます。ほら、このようの」
そういうと、先生の周りから様々な色の動物たちが生まれた。
「わあ!わあ!かわいい!」
「色が違うのは込める魔力の属性によって変わります。なにも込めないとすべて無属性になります。けれどこれは、私たち精霊だからこそできるのですよ。」
「精霊だから? 他の種族の人たちはどうするの?」
「他の種族は生まれながらにして、使える魔力の属性が決まっています。それに、全員が魔法が使えるのではなく、魔法の素養があるものだけです。私たちには得意な属性こそあっても、使えないということはないのですよ。ほかに質問はありますか?」
「はい!なの 得意な属性はどうやってわかりますか!」
「私たち精霊は得意な属性ごとに髪の色が変わります。火属性の場合は赤、水属性の場合は青などですね。私の髪の色は、金色。これは光属性が得意な属性ということになります。」
「じゃあじゃあ、私の髪の色は! 何の属性が得意!?」
「リリーの髪の色は白ですから、どんな属性の魔法でも使いこなすことができますよ。これは貴女のお母様も同じですね。さすが、私たちのお姫様です。」
「ママと同じ! えへへ、嬉しいな」
妖精女王アマリリスと同じと言われて、リリーは嬉しそうにはにかんだ。
「ぐはっ」
そんなリリーの笑顔を見て、マリーは鼻を押さえて、倒れてこんだ。
「はぁはぁ、やっぱりリリーはかわいいです」
精霊たちにとってリリーはお姫様なだけではなく、久しぶりに生まれた子供。みんなが、リリーをかわいく思っている。それは、もう本当に。笑顔を見て鼻を押さえるぐらいに。」
「あれでもせんせー。魔力に属性を込めるのはどうすればいいんですか?」
「それも精霊だからできることですが、イメージするだけですよ。魔力に色をつけるイメージです。試しに、魔力に水属性を込めて、コップに水を出してみてください。」
「やってみるの!」
(水属性。青色。空のような澄んだ青。こんな感じかな)
「水出てきて!」
私がそう叫ぶと、コップ一杯分の水が手のひらから放出された。
「やったぁ! 水が出た!」
「初めから属性をつけることができるのはすごいことですよ。そうそう、リリーが無意識に言葉を叫んだように、イメージさえあれば、どんな言葉でも魔法は発動できますからね。」
私は、思わず言葉を出してしまっことを少し恥ずかしく感じた。
「しかし、注意する点はありますり魔力量には限りがあるので、はじめと使うと加減がわからず、使いすぎて倒れてしまいます。」
「え、でもせんせー、私まだ疲れてないの。」
「ほんとうですか!? 簡単に魔法が使えたので、才能はあると思いましたが……。初期魔力量も多いなんて。普通、5歳ぐらいの子が初めて魔法を使うと、いかに精霊といへども、一回や二回ぐらいで限界が来てしまうのですよ。精霊と他の種族との違いは、そのあとの成長度合いぐらいですから。これは、どこまで成長するか私には想像もつきませんね。」
才能があると言われて、私は照れ臭かった。
「魔力量は上限はありますが、毎日限界まで魔法を使っていると増えていきます。それに、魔力を集める練習をこまめに行うと、意識しなくてもできるようになります。今日は、初めてということもあるので、肉体的には疲れてはいないでしょうけど、精神的には疲れているかもしれないのでこれで終わりにします。」
「はいなの! マリーせんせーありがとうございました!」
「ふふふ、また時間が空いたときに教えてあげますからね。それでは、またいづれ。」
こうした初めての魔法の勉強は楽しく終わった。