夕暮れ
見上げた空は、日本で見ていた空とほとんど変わらなかった。
まるで太陽のように光り輝く星。
優雅に浮かぶ真っ白の雲。
夕暮れが迫っているのか、真っ青だった空は時を追うごとに赤く移ろいでいく。
低い建物が多くいつもより広く見えるからか、見たことのない晴天にユウは少しの間上げた顔を下げることができなかった。
ユウはコッチに連れられて病院を出た。
身体の不調も無い上、盛大に鳴った腹の音をコッチに聞かれてしまったのだ。
まとめる荷物もないユウは、さっさと手続きして出ていくコッチを追いかけて街へ繰り出した。
「どう?やっぱりおかしい?」
コッチの問いに、ユウは思わずうんと頷いた。
何よりも気になるのは、連なる建物の外観だ。
病院は住宅街の中にあったのか、幾重に折り重なる細い道を挟んで住宅が並んでいる。
大きい家からこじんまりした家、アパートのような外観まで、形は日本とそう大差はない。
問題は使われている材質だ。
小さな家やアパートなどそこまで裕福に見えないものは木造、塗装もほとんどされているようには見えず、茶色く組み合わされた木々がむき出しとなっている。
片や大きな家は、一面紫色の壁で覆われていた。
病院で見た壁と同じ、継ぎ目のないのっぺりとした紫色。
形は確かに家の形だが、それを家と呼んでいいのか迷ってしまうほどに、不思議な見た目をしている。
何を見て不思議がっているのか見透かされているように、コッチが簡単に補足してくれる。
「核素材の建物はまだ普及してないんだ。全世界で全然核が足りてない。まぁ素材のウィルスは減る気配もないし、それで稼いでる俺は文句の1つもないんだけど。」
またも初めての言葉の連続に、またもユウは難しい顔をする。
「そっか。どこら辺まで話が通じるのか、しっかりすり合わせた方がいいね。」
それを察知したコッチは、笑ってフォローしてくれた。