病院
「鍵師、ねぇ。」
ユウの話に、医者のハスロは疑問の声をあげた。
問診を受ける中、ユウは正直に聞いてみることにした。
自分が日本から来たことや、鍵師として鍵を集めて回らないといけないこと。
自分の置かれた状況もよくわからず支離滅裂になりながらも、2人は最後まで耳を傾けてくれた。
ただし打ち明けてはみたものの、2人は困ったように顔を見合わせてしまった。
「鍵師ってのはよくわかんないけど、異世界から来てるって事は、もしかして”樹人”ってことなんじゃないの?」
コッチの”ジュビト”と言う言葉に、ハスロは確かにと返した。
また新しい言葉が出てしまった。
「もうそんな時期だったか。でも鍵を集めるなんて話は聞いたことないな。」
「そんな時期?」
ユウは難しい顔で口を挟んだ。
そんな時期ということは、先人がいるということだろうか。
「うん、樹人。何十年かに1度、異界から現れる人のこと。世界樹の使者って呼ばれることもあるかな。突然現れては突然消えていく、不思議な存在って言われてる。」
世界樹の使者。
あの男は、ユウは世界樹に選ばれたと言っていた。
突然消えるというのは、鍵を集め終わったということだろうか。
こんな不確かな情報しかないのに、自分の状況と重ね合わせてしまう。
ジリリリと、アラームのような音がハスロの胸ポケットから鳴り響いた。
ユウは思考の海からグイと引き戻される。
「呼び出しだ。この後のことはコッチに任せるよ。1晩程度なら泊まっていっても構わないし、身体が大丈夫なら退院してしまって構わない。特別悪そうな場所も見当たらないしね。それと、」
ハスロは1度言葉を切り、目線をコッチに移した。
「コッチなら大丈夫だと思うが。さっきの話、わかっているな?」
コッチの大丈夫だよという返答を待って、ハスロはイソイソと部屋を出ていった。