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プロローグ
その日、1人の女性が地球上から姿を消した。
ボタボタと降り続いた、水分を多く含んだ重い雪は、いつの間にか冷たい雨に変わっていた。
木の葉を叩く水の音、木の葉から落ちる水の音。
薄暗い森の中、他に音はない。
誰も気付かない。
世界をつなぐゲートが現れたことも。
祠の姿をしたゲートが女性を1人飲み込んだことも。
彼女が消えたことも。
時はまだ止まらない。
あと1人、世界樹の扉を閉めるには、あと1人必要だ。
見るからに古びた祠は、建て付けが悪いらしい。
重々しくきしむ音を響かせながら、ゆっくりと扉が閉まった。