記憶
初めまして!作者のふじいです!
今回が初投稿になります!
文才もなく、誤字脱字などで読みにくい作品となるかも知れませんが、生暖かい目で見守ってくださると助かります笑
他の作品の箸休めにでも読んでいただけると嬉しく思います!
「疲れた……」
そんな、風に吹かれてしまえば飛んで行ってしまうんじゃないかと思う程、弱弱しくか細い声が聞こえた。
氷の世界に閉じ込められたようなこの冷え切った部屋にいるのは僕だけだった。
そう、それを言ったのは『僕』だった。
あたりを見回すと日々積み重なってしまったビールの空き缶が散乱している。
部屋の電気は切れていて、小さなテーブルランプとつけっぱなしのデスクトップのパソコンから光る青白い光のみだった。
手に持っている缶ビールを一気に飲み干し握りつぶしてそこらへんに投げ捨てた。
そのまま寝転がりタバコに火をつける。深く息を吸い、身体中に煙が侵食するかのようにもう一度深く息を吸い、そのまま吐き出す。
小さな光に照らされた煙は青と灰色に映った。
口火から出る煙と口から吐き出される煙の色を見て、まるで自分の人生のように思えた。
床に置いてあった灰皿は吸殻でいっぱいになっていて、灰を落とすと器からもれて床に落ちた。
この日は風が強く、冬の真っ只中だと言う事を部屋の中からでも感じられるほどに寒かった。
窓を遠慮もなしに叩く風の音に不安を感じながら僕はカーテンを開ける。
身体の芯から冷えてるのか、心なしか震えてる身体を起こして僕は窓の外を眺めた。
そこは『真っ暗な世界』だった。
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潮風に誘われて波の音色が耳に囁く。
僕たちを見守るように広大な山々はこの町を囲む。
自宅の部屋から見えるそんな風景が、毎日僕を待っていた。
町を歩けば少し腰が曲がった老夫婦がコンビニや商店街にずらりといる。些細な喧嘩も事件もこの町には存在すらしないかのように静かで平和な町だった。
実に微笑ましいそんな風景が十六歳の僕には物足りなく、いつも心と身体を持て余していた。
高校生になればなにかが変わると思っていた。新しい出会いや新たな夢が出来たり、そんな物語溢れる生活を想像していた。
だが現実はちがった。
新しい出会いはあったが、そこに僕はいない。
夢がもともと無い僕は、相変わらず先の事など何も考えてはいなかった。
そもそもこんな老人ばかりの田舎町で出会いや物語を求めてはいけないのだ。食パンを咥えて角を曲がれば確実におばあちゃんにぶつかるだろう。ましてや、しりもちをつかせたとなれば一大事である。運命的な奇跡的で奇譚的な出会いを果たそうが、おばあちゃんとガラスのお城へは向かえない。
ギャルゲーでおなじみの演出も此処では待ったなしのバッドエンドである。
そう、ここには物語が生まれない。良くも悪くも、何もない町なのだ。少子高齢化が進んでるとはいえ、ここまで集中的に集めなくてもいいと思う。
いつからか僕は考えることも望むことも、心の奥の深い部分では冷め切っていて諦めていたんだと思う。
『高坂 栞』
彼女がこの町に、僕のまえに現れるまでは本当にそう思っていた。
教室の窓際一番後ろの席に彼女は座っていた。
机に顔を突っ伏して、転校初日からずいぶんと不機嫌そうな女の子だった。
カーテンの隙間から射す光に彼女の長い黒髪が照らされて、僕は少しだけ胸の鼓動が早くなった気がした。
いつも笑顔の君。
些細な事で怒る君。
僕の手を引いて暗闇から連れ出してくれた君。
僕はそんな彼女が好きだった。
でも、君の本心を僕は何も知らなかったんだね。だからたくさん君を悲しませたね。本当にごめんなさい。
叶うなら、もう一度君と手を繋ぎたい。触れていたい。今度は僕が手を引くから……。
広いステージの上、スポットライトの光の中で交わした君との『約束』を僕は今でも君を想い、想っている。
こんなに文章を考えるのが大変だとは思いませんでした。。。笑
まだ始まってもいないストーリーですが、最後までお付き合い頂けると幸いです!