6話 サラナ山に向けて
初の戦闘シーンです。
サラナ山に向けて出発した”5人”は、現在Dランクのモンスター【ストーンキャタピラー】と対峙していた。
ストーンキャタピラーは、全長3mで背中に硬い石の鱗を持っており、丸まって転がりながら攻撃してくる厄介な魔物だ。
「くっ!!」
スズが正面からストーンキャタピラーを受け止めたが、思いのほか衝撃が強く顔を歪ませる。
カインは即座にスズに指示を出す!
「スズっ!!正面から相手をするな!牽制しながら動きを止めるんだっ!!」
「了解っ!バカ兄貴いくよっ!!」
「おうっ!俺は、左翼から攻撃するから右翼は任せた。」
今回は、前衛による連携の練習を兼ねているので、エルミナとティアは不参加だ。
カインはサポートに回っている。
「俺が動きを止めるっ![ストーンフォール]。」
カインが地系統の中級魔法を発動する。
転がってたストーンキャタピラーの前に、土で出来た壁が現れた。
ドンッッッ!!
大きな音をたてたがら、壁にぶつかりストーンキャタピラーの動きが止まる。
その間に、ヒロはストーンキャタピラーの左翼に向かった。
「今だっ!![十字斬り]っ!!」
カンッ!!
ヒロが闘技を放ったが石の鱗に阻まれる。十字斬りとは、闘気を纏って十字に斬る無系統の初級闘技である。
「か、硬いっ!!カインこいつの弱点はっ?」
「背中が硬い分、お腹はそれ程でもない筈だっ!!スズっ!!」
「はいっ!![朧月の舞]っ!」
スズが右翼に回って、水系統の中級闘技である[朧月の舞]を発動した。
するとストーンキャタピラーの足元から円形の直径2mはある水柱が発生して、ストーンキャタピラーの身体が持ち上がっていく。
「ギュルルルルルルルルルルっ。」
ストーンキャタピラーは叫びながら?舞い上がって行く。
3mの巨体が地面からどんどん離れていく。
「うおおおお!スズの奴、いつの間にあんな技をっ!!」
「ヒロがナンパしてる間にじゃないのか?」
「もうお願いだから、そのネタ止めてくれぇっ!!!」
ストーンキャタピラーが落ちて来る。
お腹を晒しており殆ど死にかけているようだ。
「プッ…ギャアアア…。」
「よしっ!!止めは俺に任せろっ!!」
ヒロが張り切りながら、ストーンキャタピラーへと向かっていく。
「おいっ!ヒロ待てっ!!」
「へ?」
ストーンキャタピラーが最後の抵抗とばかりに、口から糸を吐いた!
窮鼠猫を噛む…。
「ぎゃぁぁぁああああっ!!」
ヒロは顔面にストーンキャタピラーの糸をもろに食らった。殺傷能力はないが粘着性があり、よく獲物の動きを封じる時に使われるものだ。
そして、ストーンキャタピラーは息絶えた…。
「瀕死の相手にわざわざダメージを貰いに行くとは…。流石だな…。引くわ…。」
カインは、馬鹿な幼馴染に呆れながらストーンキャタピラーの生死を確認する。
スズの近くには遠くで様子を見ていたエルミナとティアがやって来る。
「お疲れ様っ!スズちゃんの闘技凄かったね!」
「うんうん、あの巨体を浮かせるなんてびっくりしたよ。ヒロくんには別の意味でびっくりしたよ。」
ヒロは、まだ顔面の糸と格闘中だ。
カインは、ストーンキャタピラーの解体をしている。
「ありがとう、皆に追いつく為に必死で頑張ったからね…。
ティアさん。バカ兄貴の事は、昔からあれなので、気にしない方がいいですよ。」
「はは…。朝の出来事を挽回をしようと、頑張っているのが裏目に出てるね。」
「まぁ、ヒロくんなら仕方ないよ。あれでも死に直結するミスはしないから。」
「うーん、ヒロくんの事がだいたい分かって来たよ…。」
次はギルド内での醜態を、なんとか挽回しようとしていたヒロだったが、なかなか上手くは行かないようだ。実際に真剣になるとヒロは強いが、なかなか真剣にならない…。
「ふぅ…。解体は終わったよ。とりあえず、魔石と使える部位以外は焼却しておいたから。」
「ありがとう、カイくん。少し寒くなって来たけど、後サラナ山までどのくらいなのかな?」
エルミナがカインに質問をする。
今はオボルから3時間歩いて来た地点にいる。今日はサラナ山の麓の村に行き、村で1泊してから、早朝に山に向けて出発する予定である。
「うーん、このペースなら夕方までにはつくかな?とりあえずもう昼だから、安全な場所を確保して昼食にしようか。」
「「「はーい。」」」
4人は昼食の準備をはじめる…。
「ふごっ!ふごっ!ふごぉぉぉっ!!!(誰か俺を助けてくれぇ!!!)」
ヒロの挽回への道のりは遠い…。
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結局カインがヒロを助けてあげて、皆で昼食をとっていたのだが…。
「…………。」
「8人か?いや、10人は居そうだな?」
「ん?どうしたの?なんの話かな?」
カインは黙ったままで、ヒロは何かを感じたようだ。ティアに至っては何が何だか分かっていない…。
「ティアちゃんは、私達みたいな子供だけで行動した事ないと思うけど、私達は結構何回もあるんだよね…。」
「話には聞いていたけど、やっぱりこういう事もあるんだね。でも、あの気配の隠し方では大したことないかな?」
「えーと…。わ、分からない…。」
エルミナとスズも気が付いているみたいだが、ティアは相変わらず分かっていない。
「うん、10人だね。弓を持ったのが3人いるから、狙うならそっちが先かな。俺が囮に出るから、エルとティアは弓を持った奴から狙ってくれ!スズとヒロは周りの奴をよろしくっ!」
「「りょうかいっ」」「おうっ!」
「えーと…。りょうかい?って何が?」
「盗賊だよ。俺らのパーティは子供しかいないから、結構盗賊連中に標的にされるんだ。まぁ今回のは、数が少ないし大したことはないかな?」
「と、盗賊っ!!!そ、そんなのがいるんだ…。」
「まぁ、初めてなら仕方ないけどね。向こうは俺等を奴隷にしたり、身体目当てにしてくるから、こういう時は相手にも容赦は要らないよっ!」
「っ!!う、うん。わかったよ。」
カインは、こちらに向かって来る3人の冒険者風の格好をしている者へと向かっていった。
エルミナ達はいつでも動けるのように準備をはじめる…。
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「ようっ!!ガキだけで外に出るとか大変そうだなぁ。なんなら俺達が街まで連れて行ってやろうか?」
おっさん共はニヤニヤしながら話しかけて来た。
「いえ、俺達の事は気にしないで下さい。自分達だけで十分ですので。」
カインは丁寧にお辞儀をして断るのだが…。
「おいおい。こっちはそう言う訳にはいかないんだよ。」
「……一体どういうことですかね?こっちにはもう用はないんですが…。」
「それはな…。男共は半殺しにして、あそこに居る女の子達を犯す為だよっ!!!その後は奴隷にして売り付けてやるよっ!!」
いきなりカインに向かって、剣を抜いて斬りかかった。
しかし、突然盗賊の動きが止まる。
「お、おい!どうしたんだよ?」
不審に思ったもう1人の盗賊が話しかけたが、返事はない…。
すると、突然カインに斬りかかった盗賊の首が地面に落ちた。
「「ひっ、ひぃぃぃぃぃっ!!!」」
突然の出来事に、残りの2人は叫びだした。
「お前ら、先に斬りかかって来たんだ。それにあんな事まで言ったんだから、死ぬ覚悟は出来てるんだろ?」
カインは、2人歩み寄って行く。
その様子に我に帰った盗賊共は…。
「て、てめぇっ!!調子に乗るんじゃねぇっ!!」
「うぉぉぉっ!!」
今度は2人が同時に斬りかかってきた。だが、ただ斬りかかってくるだけの素人相手には、カインにとっては立っているのと然程変わらない…。
「遅い…。」
一瞬で盗賊2人に詰め寄ったカインは、腰に差していた刀を左手で抜きさり、そのまま盗賊へと刀は向かっていく。
スッ…、殆ど音も無いまま振りぬいた刀をそのまま鞘に戻す。
盗賊2人は、何をされたのかもわからないまま身体が上下半分になった。
そして、そのまま命の灯火は永久に消え失せる…。
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遠くから見ていたエルミナらには、一筋の閃光だけ見えていた。
「っ!!!す、凄いっ!!カインくんは何をしたの?」
ティアは、カインが何をしたのかが分からなかった。それほどまでに一瞬の出来事でもあった。
「今のは、雷系統の上級闘技の[紫電一閃]だよ。カイ兄の得意技だね。鞘から刀を抜くまでに闘気を溜めて、抜くときにそのまま相手に斬りかかる。雷によって速度と斬味が上昇しているから、あの程度の相手には何があったのかも分かっていないかも。」
「相手の血も付かないほどの疾い斬撃だからな。相手が何を言ったのかは知らないけど、相当カイを怒らせたみたいだな。」
「そ、そうなんだ…。わ、私、人の首が落ちるとこ初めて見たから…。ちょ、ちょっとびっくりしちゃって…。」
ティアの顔色が少し青くなっている…。
「ティアちゃん大丈夫?まぁ初めてなら仕方ないけど、冒険者ならこういう事もあるからね。なんとか割り切らないと…。」
「う、うん。そうだね…。だ、大丈夫!私もがんばるよっ!」
「よーしっ!!そろそろ他の盗賊も出てくるから、俺らも加勢に行くかっ!!まぁあの程度ならカイには必要ないけど。」
「まぁまぁ、そう言う事は言わないの。カイくんの指示通りに行くよっ!」
「ええ!」「りょうかいっ!」「よっしゃーっ!」
カインに加勢した4人は、あっと言う間に盗賊を破滅へとみちびいて行くのであった…。
いよいよサラナ山の麓の村へと到着します…。
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