56話 赤髪のレイン
ストンブルグへ到着したカイン達は…。
「おおっ!!!ストンブルグが見えて来たのじゃっ!!」
10日間、ジェットブラックによる空の旅を満喫したカイン達はようやくストンブルグが見える位置まで来ていた。
窓から外を覗いていたミンアはストンブルグを見て興奮している。
「ミン、そろそろ降りる準備をしておけ。イジェルに都市へ直接ジェットブラックで入るのは禁止されたから、都市の近くに降りて歩いて行くからな。」
10日間でミンアとカルベロと仲良くなったカインは、2人の事を愛称で呼ぶ仲となっていた。ちなみに、提案したのはミンアである。
「うむ、了解したのじゃっ!!」
カインの言葉を聞いて、急いで客間へと走っていくミンア。
入れ替わりで準備を終えてきたカルベロが…。
「確かにジェットブラックで入ると目立ち過ぎますね。よくよく考えれば、空飛ぶ魔導四輪とか聞いたことありませんよ。」
どうやら、カルベロもさっきの会話を聞いていたらしい。
さすがに規格外の魔導四輪であるジェットブラックの扱いを心得ていたカルベロ。確かにストンブルグへ直接入ろうものなら大騒ぎになるだろう。
「はぁ…。せっかく作った魔導四輪なのに直接入れないのは納得出来無いな…。」
普通の魔導四輪としても問題ある性能なので、走行して都市にも入れないジェットブラック。それを理不尽と思っているカインは納得出来いらしい。
「カインさん…自重って言葉を知ってますか?」
呆れながらカインに質問するカルベロ。
「ああ、俺ほど自重している人間はいないっ!!」
何を当たり前な事を言っているんだと言わんばかりの発言をするカイン。これでも一応自重しているらしい…。
「……そ、そうですか…。」
カインの言葉を聞いて、何を言ってもダメそうなので諦めたカルベロ。
そんな2人の元へミンアが帰ってきた。
「カインっ!!妾も準備が出来たのじゃっ!」
元気よくカインに話しかけるミンア。
「よし、では着陸するぞ。」
こうして、降りる準備が出来た事を確認した後カインはジェットブラックをストンブルグの近くへと着陸させていった。
そして着陸後、3人は歩いてストンブルグへと向かっていくのであった…。
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「……なぁ、カインよ。その格好は何なのじゃ?」
ストンブルグの中へと入ったカイン達は、現在泊まる為の宿屋へと向っていた。しかし、先程からカインの方をチラチラ見てくる人が大勢いる。
それは、いつもの容姿が目立つとかでは無くカインの格好に問題があった。
「2人とも、これからは俺の事をレインと呼んでくれ。イジェルに推薦状の名前もレインという名で登録してもらったからな。」
特に周りを気にした様子もなく答えるカイン。これからはレインと名前を呼んでくれと頼んでいる。
「えーと…。レインさん?この際名前と”その髪の色”は置いときましょう。その”レンズの黒い眼鏡”には理由はあるのですか?」
カルベロは”赤髪”になったカインのかけている”真っ黒なレンズの眼鏡”を見ながら質問していく。名前や髪色よりもそっちの方が気になるらしい…。
「妾も気になるのじゃよっ!!黒いレンズの眼鏡見たのは初めてなのじゃっ!!」
ミンアも、カインの偽名よりも黒レンズの眼鏡の方が気になっているようだ。
「ん?これは俺の顔を隠す為の物だ。名前は『サングラス』とかいうらしい。古代書に書いてあったんだが、面白そうだったので昨日作ってみたんだ。」
自分のかけているサングラスを指差しながら説明していくカイン。どこかの世界のスポーツ選手が付けているにようなタイプのサングラスである。
実は、天鳥レイバトリオから古代の品について書かれた本を貰っていた。そこで、”とある理由”から顔を隠す為にわざわざ作ってみたという事らしい。
「サングラス?ですか…。何に使う物なんです?」
サングラスに興味を持ったカルベロが質問する。
「元々は光から目を守る為の物らしいがコレはそれだけじゃない。この『サングラスNEO』には様々な能力を追加してる。それは…。」
カインは、2人に自作のサングラスNEOの能力も説明していった。
●3km先まで見える拡大機能。
●暗闇での視認可能。
●地図機能&索敵機能の内部表示。
●闘気や魔力を微量自然回復可能。
●髪色が赤く変わり、声も変化する。
「そして、身体能力を2倍にする事が可能だ。」
身体能力を倍加させる事が出来るのは神樹の素材を使用した場合のみだ。つまり、このサングラスNEOにはカインの専用武具の試作として神樹の素材を使用している。
「し、身体能力の倍加じゃとっ!!」
この世界ではエレメント以外では身体能力の倍加など絶対にありえない。
カインの発言を聞いたミンアは物凄く驚いているようだ。
「……この10日間でカ…レインさんの事を大体知っている僕でも信じられない事ですね…。」
10日間でカインの非常識さが分かってきたカルベロも完全には信じられないらしい。
「まぁ、信じられないのは無理も無い。だが、ランキング戦が終わる頃には世界の常識が変わる事になるだろう…。」
2人の考えには共感しているカイン。しかし、最後に意味深な事を言った。
「ランキング戦が終わる頃にはとは、どういう事なのじゃっ!!」
「その格好の事もありますし、何かしようとしているんですか?」
カインの言葉に反応した2人は立て続けに質問していく。現在のカインの格好も関係しているのかと…。
「……それはお楽しみって事で。」
少し悩んだ後、やっぱり2人には早いと判断して言葉を濁したカイン。
「そ、それはずるいのじゃっ!!」
「はぁ…。仕方無いですね。とりあえずはランキング戦を楽しむ事にしますよ。」
カインにすがりながら文句を言うミンアと溜息を吐きながら諦めるカルベロ。
「ははっ、そのうち分かる事だ。」
そんな2人を見て笑い出すカイン。
「妾は気になるのじゃっ!!こうなったら、何がなんでも聞き出して見せるのじゃぁあーっ!!」
何故かムキになっているミンア。どうしてもさっき言った意味をカインから聞き出そうとしているが…。
「よしよし、ミンアは落ち着こうな。」
ミンアの頭を撫でてなだめるカイン。
「うむっ、気持ちいいのじゃっ!!………て、そうではないっ!!!早く教えるのじゃぁぁぁああーーっ!!」
一瞬、カインにやり込められそうになるミンアだったが、なんとか持ち直した。
「ここも撫でてやるぞ。」
今度はミンアの短い角を撫で始めるカイン。
「おおっ!カインに撫でてもらうと気持ちが良いのじゃっ!!」
完全に話を忘れて目を瞑り、角を撫でられる事を堪能しているミンア。
そんな姉の様子を見ていた弟は…。
「姉さんでは、絶対に無理ですね…。」
幸せそうな顔をしているミンアを見ながら苦笑している。
そんな弟の言葉を聞いて…。
「だ、騙されたのじゃっ!!……もう怒ったのじゃよっ!!!何がなんでも、絶対の絶対に聞き出してやるのじゃぁぁぁあああーっ!!!」
完全に怒った様子のミンア。
「はいはい。分かった分かった。」
そして、またもや撫でてなだめていくカイン。
「こ、こ、この程度で妾は…。」
嬉しそうな顔をしながら何とか抗おうとしているミンア。もはや顔と言葉が一致していない…。
「姉さん、諦めてくださいよ…。」
苦笑どころか呆れに変わっているカルベロ。
結局、その後も駄々をこねるミンアをなだめながらもカインが2人に内容を話すことは無かった…。
次回、カインの鍛錬方法…。
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