55話 ゲイドルビュード家
天族ゲイドルビュード家…。
ランキング戦が行われるストンブルグへと向かっていたカイン。その為、空をジェットブラックで飛んでいたのだが同じ空中で橙色のドラゴンに乗っている竜人族の美少女と遭遇した……。
「お前こそ何者じゃっ!!この空は妾の領域じゃぞっ!!」
空を飛んでいる魔導四輪ジェットブラックの上に立つカインに向けて指を差す女の子。
「ガルルルルルッ!!!」
ついでに彼女の乗っているドラゴンもカインを威嚇し始める。
「えーと…空に領域があるとか言われてもな…。それに、俺はストンブルグへ向かっているだけだ。」
どう対応したらいいのか少し悩みながらも説明していくカイン。
「妾が通っている空は全て妾の領域なのじゃっ!!それなのに妾を追い越していったお前が悪いのじゃよっ!!」
「ガルッ!」
とても理不尽な事を言っている女の子とそれに同意するかのように唸るドラゴン。どうやら攻撃した理由は、自分を追い越していった者が気にいらなかっただけらしい。
「なんだと……。この魔導四輪じゃなかったら撃墜していた攻撃をしておいて、それが当たり前みたいに言うなっ!!」
そんな理由で攻撃してきた女の子に対して、少し怒ったような口調で話すカイン。
「わ、わ、妾は悪くないのじゃっ!!」
「ガ、ガルルッ!」
身体を一瞬ビクつかせ、明らかに動揺している女の子とドラゴン。
「あのな、俺じゃ無かったら死んでいたかもしれないんだぞっ!それなのに反省もしていないのかっ!!」
さらに口調を強めて話し始めるカイン。大した理由も無いのに、人の命を簡単に奪うような行為をしたので許せないらしい。
「そ、そ、そ、それはっ!!」
「ガ、ガルっ!」
さっきよりも動揺した感じで焦り始める女の子とドラゴン。何か言い訳をしようとしているが…。
「ごめんなさいは?」
かなり真剣な表情で女の子達を見つめているカイン。有無を言わせない圧倒的なオーラを放出して威圧している。
「ご……ごめんなさいなのじゃ…。」
「グル……グルル……。」
そんなカインを見て一瞬で大人しくなる女の子とドラゴン。カインの様子をチラチラ伺いながら心配そうに見つめている。
「よし、じゃあ許すとしよう。
そういえば、俺と同じ方角に向かっていたようだけど目的地はどこだ?」
女の子達に微笑みながら話しかけるカイン。実は孤児院の子供達を叱る感じで説教していたのだ。
それを見て安心した女の子とドラゴンは……。
「よ、良かったのじゃ…。
目的地じゃったな、お前と同じストンブルグじゃっ!!」
「ガルルッ!」
結局、カインと同じ目的地へと向かうらしい。
そんな1人と1匹を見て少し考えながら…。
「………じゃあ、俺と一緒にジェットブラックに乗って行くか?こう見えて中は結構広いぞ。」
どうせ目的地が一緒なら乗って行くかと軽い感じで聞いたカイン。
「よ、良いのじゃなっ!!」
「ガルッ!ガルルルルルッ!!!」
乗せてもらえると分かると物凄い食らいつく女の子とドラゴン。さっきは攻撃して来たくせに非常に乗り気なようだ。
「お、おう…。てか、そのドラゴンは…。」
女の子が乗っているドラゴンを見て普通のモンスターでは無いと感じていたカイン。
そして、そのドラゴンとは…。
「ん?こいつか?こいつは妾の弟じゃっ!!」
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「色々と探検できて楽しかったのじゃっ!!」
「いや、規格外過ぎて驚きのほうが大きかったですよ。」
楽しそうにしている女の子と、疲れたような表情をしている男の子の2人組…。
「まぁ、改めて自己紹介からしていこう。
俺の名前はカイン。Aランク冒険者だ。」
ジェットブラックに2人を招いたカイン。ひとまず少し車内を案内した後、リビングにあるソファに座り自己紹介を始めていた。
「妾の名はミンア・ゲイドルビュードなのじゃっ!!」
とても元気よく自己紹介をするミンア。少しウェーブのかかった桃色の髪を揺らしている。
「僕の名はカルベロ・ゲイドルビュードですっ!!」
もう1人、ミンアの隣に座っている男の子が元気よく自己紹介をした。カルベロとは先程ミンアの乗っていたドラゴンの事である。
カルベロの髪は橙色をしており、ミンアと同じく竜人族の特徴である短い角が頭から2本生えている。身長は165cmのミンアと全く同じくらいで、顔立ちもミンアと良く似ていた。
ようするに、この2人は双子なのだが…。
「……ゲイドルビュードって事は…。」
カインは、2人の家名を聞いてどういう子達なのか理解してきた。
「そうなのじゃっ!!妾は〚龍〛のエレメントの顕現者にして天族ゲイドルビュード家の長女なのじゃよっ!!」
「そして、僕は天族ゲイドルビュード家の長男ですっ!!」
堂々と身分を明かしていく2人。よほど自分の家名に誇りを持っているようだが…。
「天族か……まぁ、俺には関係ないな。」
相手が天族だと分かっても特に態度を変えないカイン。
「ど、どうしてじゃっ!!妾は天族じゃぞっ!!」
カインのまさかの反応に動揺するミンア。普通の人は、自分が天族と分かれば直ぐに態度を変える。それなのに全く気にしていないカインに困惑しているようだ。
「ん?ミンアは俺に態度を変えて欲しいのか?」
首を傾げながらミンアに問いかけるカイン。
「い、いやっ!!良いのじゃっ!!カインになら妾をミンアと呼ぶことを許すのじゃっ!!」
少し嬉しそうにしながら1人で頷いているミンア。
「姉さんは、友達がいませんからね。カインさんが気安い態度を取ってくれるのが嬉しいんですよ。」
隣のミンアを見ながら嬉しそうに説明していくカルベロ。本人を前に正直にぶっちゃけている…。
「な、な、何を言うのじゃっ!!わ、妾はっ!!そ、それにカルベロも友達がいないのじゃよっ!!」
顔を真っ赤にしながら動揺するミンア。弟の発言を聞いてあたふたしている…。
「ぼ、僕はっ!!確かにいないですけど…。」
ミンアの発言を聞いて否定しようとするが、真実なので反論できずに落ち込むカルベロ。
そんな2人のやり取り見ていたカインは…。
「そうか…。それなら俺達はもう友達だな。」
2人に微笑みながら優しく告げた。
「おおっ!!!し、仕方無いのじゃっ!!と、と、友達になってあげるじゃよっ!!」
言葉とは裏腹に非常に嬉しそうにしているミンア。
「で、では、僕共々よろしくお願いします。」
きちんとカインに頭を下げるカルベロ。下を向いているが嬉しそうな表情をしているのは分かる。
「ははっ、素直な奴らだな。」
嬉しさを全く隠し切れていない2人を笑うカイン。
「う、うるさいのじゃっ!!
そ、そういえばカインは何故ストンブルグに向っているのじゃ?」
完全な照れ隠しで話題を変えてくるミンア。
「ミンアは面白いな…。まぁ、ストンブルグで行われる冒険者のランキング戦に出場する為に向かっているんだ。」
急に話題を変えたミンアに微笑みながら答えるカイン。
「ラ、ランキング戦じゃとっ!!」
「えっ!!カインさんはランキング戦に出場するのですかっ!!」
カインの発言に驚く2人。突然椅子から立ち上がり身を乗り出している。
「さっき、Aランク冒険者だと言ったろ?ナタール支部の代表として出場する事になったんだ。」
カインが無理やりイジェルに推薦状を書かせたとはいえ、ナタール支部の代表なのは確かである。
「おおっ!!!妾と同じ年齢なのに凄いのじゃっ!!」
「なるほど、見た目だけじゃなく実力も超一流なんですねっ!!」
カインがランキング戦に出場する事が分かると物凄い興奮している2人。
そんな2人に疑問を持ったカインは…。
「ランキング戦を知っているって事は、お前らの知り合いも出場するのか?」
こんな事を聞いた理由…それは、本来ランキング戦とはAランク冒険者になった者しか知らされることは無い武道大会だからだ。
つまり、知っているって事は知り合いが出場する場合のみで、その応援者という事になる。
「そうなのじゃっ!!妾達のお祖父ちゃんが出場するのじゃよっ!!」
自分の事のように自慢するミンア。
「お祖父様は当主の座から降りた後、Aランク冒険者として活躍していました。そして、今回は初めてランキング戦に出場するという事を聞いたので、僕達は修行の旅も兼ねて応援に行こうという話になったんですよ。」
どうやら2人の祖父もランキング戦に出場するみたいだ。しかも、元天族の当主が冒険者として…。
「なるほど、天族の前当主か…。
それは楽しみになってきたな。」
そんな物凄い人が出場すると聞いたカインだが、全く気後れせず逆に楽しんでいるようだ。
「で、では仕方無くカインの事も応援してやるのじゃっ!!と、と、と、友達じゃからなっ!!」
顔を背けながら嬉しそうに言っているミンア。
「ああ、よろしくなミンアっ!!」
そんなミンアに微笑みながら答えるカイン。
「僕もカインさんがどこまで行くのか楽しみにしています。500位以内に入れば凄いですけど、一体何位を目標にしているのですか?」
カルベロはカインの実力を知らないので、3000人いる出場者の中で500位以内に入ったら凄い事だと思っていた。
しかし、カインの目標は遥か上…。
「もちろん、俺が狙うのは1位のみだ。」
次回、ストンブルグへと到着…。
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