5話 金髪魔人降臨?
討伐クエストに向けて出発です。
新たなパーティメンバーを迎えて、ようやくティアと一緒に討伐クエストに行くことになった。
話し合った結果。オボルから10kmの所にある【サナラ山】に生息する、Cランクのモンスターの【アイアンリザード】の討伐だ。
アイアンリザードは、全長5mで皮膚が鉄よりも固く、ブレスも使ってくる為、Cランクの冒険者のパーティが討伐の目安となっている。
クエスト報酬は金貨5枚、討伐報酬も金貨5枚である。
およそ、2泊3日になるだろうと予測している。なので、準備期間を設けており、ようやく今日が出発だ。
カイン達は、ティアを迎えるためにオボルの転移門の前で待っていた…。
「ひゃっはーーっ!!今日はいい天気だなぁっ!!!」
「ヒロ…。さっきから落ち着きがないなぁ。俺達の方をさっきから、周りの人にチラチラ見られて恥ずかしいじゃないか…。」
「はっはっはっ!!俺がこの日をどんなに待ち望んでいた事かっ!!ようやくティアちゃんに会えるんだぞっ!!!」
「バカ兄貴っ!!ティアさんに迷惑かけるんじゃないよっ!!」
「ふふふ…。俺の紳士な対応を見せつけてやるぜっ!」
「ヒロくん…。紳士は見せつけるとか言わないよ…。」
転移門の前ではしゃいでいる4人は、かなり注目の的となっていた。
確かにヒロがうるさいので目立っているが、注目を集めている理由の大半は別にある。この4人は、12歳くらいの集まりであるが全員容姿が良く、誰が見ても美男美女の集りにしか見えないのだ。
そういう意味なら、さきほどヒロのせいにしていたカインが、1番の理由でもある…。
「………。」
「はははっ!お前らも、俺の”良い人アピール”でも見て勉強するんだなっ!!!ティアちゃんも俺にメロメロだぜっ!!!」
「………………………。」
「今日から俺もナンパ師の称号は卒業だっ!!これからは紳士ヒロを名乗るぜっ!」
「………………………………………。」
「ん?お前らさっきから何黙って……。っ!!!」
ヒロ以外のメンバーが黙っていた理由。
それは、さっきから実はティアがこの場に来ていた。気が付いていないのはヒロだけで、全て聞かれていたみたいだ…。
焦るナンパ野郎…。だがしかし!
「は、初めまして。私の名前はヒロといいます。ティアさんよろしくお願いします。」
(((こいつ、開き直りやがった…。)))
ティアの顔が引き攣っている。
ヒロは、無理矢理なかった事にしようとした。しかし、それは無理なようだ…。
「ヒロ…。もう紳士は無理だ。諦めろ…。」
「ちょっ!!カイっ!お前フォローしろよっ!!!」
「いや。ティアがかなり引いてるから…。」
ティアに視線を向けるヒロ…。しかし、全力で視線を外される…。
「お、おはよう!待たせちゃったね。」
「おはようございます。初めまして、スズと言います。今日からよろしくお願いしますティアさん。」
「うん、スズちゃんだね。こっちこそよろしくね。」
「ふふっ、ティアちゃんもスズちゃんも仲良く出来そうで良かったよ。これからは”4人”で頑張って行こうね。」
女子3人組は和やかに親睦を深めている…。この3人ならすぐに仲良くなるだろう。
しかし、男達の会話は…。
「…………。」
「ヒロ…。おまえ完全に無かった事にされたな。さすがの俺もフォローは出来ない…。」
「うう…。カイなんとかしてくれよ…。」
「まぁ、お前のナンパ師としての活躍をこれからも応援しているよっ!」
カインの見事なサムズアップだ!
「おいっ!!!見捨てるなぁぁぁあーーーーーーっ!!!」
ヒロの紳士計画はこうして失敗に終わるのであった…。
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時間をかけて必死に取り繕った結果。何とか女子達からのハブりを回避したヒロだったが、懐が少し寂しくなった。
そしてギルドへと着いた5人…。
「はぁ…。当分デートはお預けだなぁ…。」
「ヒロ…お前やっぱり反省してないだろ…。」
カインは、掲示板からアイアンリザードの討伐依頼を持って受付へと向かっていた。
バンッ!!
その時、ギルドの入り口が開いた。
そこには、圧倒的な存在感を放つ金髪のエルフの美女がいた。
「「「っ!!!」」」 「げっ!!」
そのエルフは真っ直ぐカイン達の方へ向かって来る。
ヒロはその場から離れようとするが…。
「ヒロ。どこへ行くんだい?」
ビクッ!!
ヒロは固まった。蛇に睨まれたカエルである。
「やぁ、ミスティさんおかえり。」
「ふぅ、カイン久しぶりだねぇ。ようやく戻ってこれたよ。」
「あのミスティさんがこんなに時間がかかるなんて、かなりの大物だったみたいだね。」
「あぁ。スカイドラゴンの討伐だったんだけど、異常種でかなり手こずってしまったねぇ。」
スカイドラゴンとはAランクのモンスターであるが、飛行型で機動力がやっかいなドラゴンである。異常種ともなればSランクモンスターにも近い存在だ。
(((逆にそれだけの相手を手こずっても、1人で倒すのが凄いんだけど…。)))
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ギルド内にいるおっさん共…。
「誰だ?あの超絶美女は…。ちょっと声でもかけてみるか?」
「ばっ、お前知らないのか?あれは『魔人』の二つ名を持つ正真正銘の化け物だぞっ!!」
「ま、魔人っ!!声掛けた男を半殺しにするあれかっ!!」
「いや。声掛けたぐらいじゃ、流石に半殺しにはされないからな。でもナンパだけは絶対するなよ。あの人ナンパ嫌いだから…。」
「あ、あぁ…。ナンパキラーねぇ…。」
おっさんは世の中ナンパ師に向けて哀れみを持つのであった…。
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「で、最近ヒロの奴は馬鹿な事はしてないかい?」
「も、もちろんです!ミスティさんっ!!!」
ヒロはもう全力である。命が掛かっているのだ!
だが、反省してない者に対してそれを見過ごす事は出来ない…。
「ミスティさん、お久しぶりです。さっきバカ兄貴がティアさんをナンパしてました。」
「ほうほう。なるほどねぇ…。」
少し、離れたところにいた女子達もやって来たようだ。
ミスティの瞳が怪しく光る…、ように見える。《ヒロ目線》
「ば、馬鹿っ!!あれは違うっ!!ただ挨拶しただけだっ!」
「ヒロくん先日から、『うひょー』とか、『良い人アピール』とか、『美少女ぐへへっ』とか言ってたよ。」
ティアはカインの後ろに隠れた…。
「お、おいっ!!前の2つは確かに言ったけど最後のはなんだよっ!!!勝手作ったのが一番アウトな奴じゃねぇかっ!!」
「「ヒロくん(バカ兄貴)の心の声?」」
「うおーーいっ!!心の声漏れてねぇわ!」
「ヒロ…。それ、心の声はそうだと認めてるからな。」
ヒロとティアとの距離がどんどん遠くなる。カインはもう完全に呆れている…。
ミスティから魔力が溢れ出ている。
「ふーん。まだ懲りてないみたいだねぇ。ヒロ、覚悟は出来ているかい?」
「ミ、ミスティさんっ!!待ってください、こ、これはっ!!」
「問答無用っ!![スパークバレット]」
ミスティの指先から、雷の光の玉が無数にヒロの元へと向かう。スパークバレットとは雷系統の中級魔法であり、使用者によって放つ数が異なる。威力調節も可能だ。
「ちょっ!ぎゃぁぁぁあああああああああっ!!!!!」
「「「「……………。」」」」
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「ふーん、アイアンリザードの討伐ねぇ。たしかサラナ山だったかな?あそこは雪山だから、あたしはキライだねぇ。」
「ははっ、ミスティさんは寒いのダメだったね。俺は別に気にしてないし、防寒用のマジックアイテムも一応用意した。まぁなんとかなるかな。」
「カイくんは大丈夫だけど、私は苦手だなぁ…。まあ戦闘になったらそれどころではないんだけどね…。」
「私は、雪まだ見た事ないから楽しみだよっ!」
ティアはどうやら雪を見た事が無いらしい…。とても興奮している。
「はぁ…。あたしはそんな気にはなれないねぇ。まぁあんた達の新パーティの初討伐だろ。気をつけて行ってきなよ!」
「はーい。帰って来たら、まだミスティさんにお披露目していない新魔法あるから、その時はよろしくね!」
「はぁ…。カインはまた新しい魔法を考えたのかい。まぁ楽しみに待っておくことにするよ。」
カインはこれまでに、いくつかの新魔法を開発している。生活魔法の[クリーン《清潔》]は、カインによって作られたものでもある。
「カイ兄の新魔法って…。あれか!初めて見た時は幻覚かと思ったよ。」
「確かに…。でも、あれは普通の人には使用できないと思う。」
スズは初めて見た時はかなり興奮してはしゃいでいたが、ティアは実際かなり呆れていた。ここまでやるのか!と。
「へぇ、それは余計に楽しみだねぇ。あたしも使えるのかい?」
「うん、ミスティさんならできると思う。まぁ慣れるまでは難しいと思うけど。」
「私は早々に諦めたからね。カイくんはよく出来ると思うよ。」
実際エルミナもティアも試したのだが、上手く扱う事が出来なかった。難易度なら最上級魔法にも匹敵する。
「まぁ、それは帰ってきた時という事で…。じゃあ、そろそろ出発しようかな?ミスティさんまたねっ!」
「あいよっ!」
受付へと向かいナナエラさんに受注して貰う。
「これで完了よ!アイアンリザードはベテランでも苦戦するから気を付けて行って来てね。」
「はい、新パーティ記念として頑張って来ます!」
そして4人はギルドを後にするのであった…。
果たしてサラナ山で何が起こるのか、新パーティの活躍に期待する!
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その頃ギルド内にて…。
「お…俺を…おい…て…い…く…な…。」
出発の前から大ダメージを受けた、ナンパ師の活躍には期待しない。
ようやく次回は戦闘シーン…。
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