45話 集まる人達
ついに会ってしまう者達…。
メリルの鍛冶屋へとやって来た従者達…。
「はじめまして。私はカイン様の従者で、メイド、暗殺者、愛人をやっていますソフィアと申します。」
メイド服のスカートの裾を摘みながら丁寧にお辞儀をするソフィア。かなり肩書が多いがこれでも一部分である。
「我は「なんだってっ!!!!」…り高「カインは一体どこにいるんだいっ!!」…だっ!!」
同じく自己紹介したアルディオは再びドヤ顔で大きな胸張っている……のだがメリルと言葉が被っており、誰も聞いてなかった。
完全に無視しながらソフィアに詰め寄るメリル。
「カイン様は急用が出来たのでオボルにはいません。しかし、代わりにお手紙を預かっていますのでどうぞ…。」
どこかから手紙を取り出してメリルへと渡した。もちろん、アイテムボックスだが存在を知らないメリルは少し驚いて……。
「っ!!……また、手紙かい…。」
しかし、手紙を受け取ると少し暗い表情になるメリル。また本人ではなく手紙だけなので不満があるようだ。
「本当はカイン様も来たがっていたのですが、向こうの案件はカイン様以外には務まらないという事で渋々向かわれました。」
カインの名誉の為にきちんと説明するソフィア。どんな相手だったとしても主人を悪く言われるのは嫌なのだ。
「そうかい…。それにしても従者が2人居るとは、しかも女の子というのも何処に行ってもカインはカインという事だね。」
ソフィアの言葉を聞いて納得するメリル。そして、ミストラルと同じような事を言っている。
「今日は依頼を受けてもらう為に来たのですが、とりあえずカイン様の手紙を読んでください。」
「わかった…。わしも、少し休憩していたところだったから丁度よかった。」
そう言いながら、カウンターにある椅子へと腰掛けるメリル。そして、封筒を開封して手紙を読み始めた。
それを見ていた従者達は……。
「なぁソフィアよ…。我はいつまでやっていれば良いのだ?」
「……………もういいです…。」
自己紹介からずっとポーズを決めていたアルディオがソフィアに問いかける。その言葉を聞いてソフィアは完全に呆れていた。逆に何で続けていたのか聞きたいくらいである…。
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「なるほど…ナニカ専用の武器や防具か…。」
手紙を読み終えたメリルは、カインから依頼されているナニカ専用の武具について考えている。
「カイン様は、メリルさんなら一般向けの武具を作れると言っていました。そして、これが素材になる神樹の葉です。」
ソフィアは神樹の葉をアイテムボックスβから取り出してメリルに手渡した。深緑色の神樹の葉は淡い光を放っている。
「これが例の素材だね。
はぁ…。本当に入手してくるとは…さすがカインと言ったところか…。」
ソフィアから神樹の葉を受け取りながら、2年前の事を思い出して溜息を吐くメリル。用意したカインに対して感心半分、呆れ半分である。
「主に不可能な事は無いのだっ!!」
自分の事のように自慢しているアルディオはいつものポーズを決めている。さっき無視されたのに全く懲りていない…。
「アルディオ、あまり言い過ぎるとカイン様に怒られますよ。自分の事を凡人だと思っているのですから……。」
「また器用貧乏とか言っているんだろうね…。」
ソフィアに同意するメリル。自覚はないがカイン以上に、全ての分野において最上クラスという超高性能な人間はいないのだ。
「まあ、わしも2年間ナニカに対抗できる武具の開発をしていた。問題の素材をこうして用意してもらったんだから、後は期待に答えて作るしかないね。」
滞っていたナニカ専用の武具開発を再開できる事に嬉しそうにしているメリル。早速鍛冶場へと向かい製作に移るみたいだ。
「何か必要な素材があったら言ってくださいね。カイン様から様々な素材を預かっていますので。」
鍛冶場へ走っていくメリルにその場で声をかけるソフィア。AランクやSランクのモンスターの素材をカインから大量に預かっているのだ。
「あとで必要な素材を紙に書いてまとめておくから、持っているのならよろしく頼むよ。」
最後にそう言い残して鍛冶場へと消えて行くメリル。その場にはソフィアとアルディオだけが取り残された。
「ソフィアよ、この後どうするのだ?」
とりあえず、メリルへの依頼を受けてもらえるようになったので任務は達成された。武具の製作には無力な2人は特にすることが無いのだ。
「そうですね…。素材を全部渡したら他に私達に出来る事はありませんし、カイン様は休暇とおっしゃっていたので観光とかですか?」
「うむ、有名人にも会わないといけないな。」
まだ有名人に会いたがっているアルディオ。先日の事はまだ懲りていないらしい。この神獣の学習能力は皆無なのである。
そんなアルディオに呆れながら、ソフィアが返事をしようとしていたその時…。
「まだそんな事を「メリルさん、居ますかっ!!!」……貴方は…。」
突然、メリルの鍛冶屋に慌てた様子で入ってきた女の子。豪華な装飾の入った服は乱れており、綺麗な長い銀髪も汗で濡れている。
ソフィアには、女の子が誰だか直ぐに分かったようだ。1回しか会ったことは無いが綺麗な銀髪がとても印象に残っていた。
「……エルミナ・アフェリーですか…。」
急に真剣な表情になったソフィア。なにかエルミナに対して思っている事があるようだ。
「っ!!!ソフィアさんですか?」
エルミナもソフィアに気が付いて驚きながらも質問をした。1年前に会ったきりだが、顔はよく覚えていた…。
「はい、私は確かにソフィア・ナイトリーツです。」
今度は急に作ったような満面の笑みで答えるソフィア。先ほどとのギャップが凄い…。
「え、えーと…。どうしてメイド服を?」
そんなソフィアの様子に、少し困りながら質問するエルミナ。皇族であるソフィアがメイド服を着ている事に違和感を感じたのだ。
「私は現在”とある偉大なお方”の従者をしているので、このように正装するのは当たり前ですよ。」
「あっ、ナイトリーツ家の家柄でしたね。」
エルミナもソフィアの言葉を聞いて、ナイトリーツ家の事について思い出したようだ。納得の顔をしている。
「それで、どうして貴方はここに来たんですか?」
エルミナの来た理由を尋ねるソフィア。物凄い慌てていたので余程の用事だと推測している。
エルミナも予想外のソフィアとの出会いによって、本題について忘れていたようだ。
「……私の大切な人が失踪したと聞いて、メリルさんなら何か知っているのかなと思ったんです…。」
突然暗い表情になるエルミナ。下を向いて悲しそうにしている。
「残念ですが、現在メリルさんは私達の依頼を受けてもらっています。とても忙しいので、その話はまた後日にして下さい。」
きっぱりとエルミナの用事を断るソフィア。エルミナに対する当たりが相当きついようだ。
しかし、納得出来無いエルミナが…。
「で、でもっ!!私は「おおっ!!!エルミナ・アフェリーとか言ったなっ!!!」……は、はい…。」
突然話に入ってきたアルディオ。実は、先ほどからソフィアの言った名前についてずっと考えていたのだ。そして、ようやく有名人の名前だったと思い出して声をかけたのである。
そんな有名人好きなアルディオの勢いに、少し圧倒されるエルミナ。思わず、言おうとした言葉を中断して普通に返事をしてしまった。
「我もソフィアと同じく主に仕えている者だっ!!誇り高き天狼で名はアルディオと言うっ!!!」
エルミナのすぐ目の前で、ドヤ顔をするアルディオ。この数分の間にこのポーズをしたのは3回だ。
「天狼……神獣様ですかっ!!」
天狼と言う言葉から神獣だと気が付いて驚くエルミナ。どうやらアルディオの言ったことを疑ってはいないようだ。
「ふふっ、そうとも呼ばれておるな。」
更にドヤ顔が濃くなるアルディオ。何回も頷いて満足そうな表情である。
「皇族のソフィアさんや、神獣様がお仕えする存在とは…。とても凄い人なのですね…。」
まだ見ぬ2人の従者の主人に感心するエルミナ。まさか自分の幼馴染の事だとは思わないだろう。
そんな3人の元へ更に1人の女性が…。
「エルミナ様っ!!勝手に1人で行ってしまわれては困りますっ!!」
その女性とはエルミナを追ってきたアンドラである。どうやらエルミナは1人で走ってここまで来たようだ。
「アンドラ…ごめんなさい。でも、カイくんが失踪したと聞いたら居ても立っても居られなくなってしまって……。」
少し反省している様子のエルミナ。カインの失踪を聞いて周りが見えなくなっていたようだ。
「まぁ、お気持ちは分かりますが…。」
エルミナの気持ちをアンドラはよく理解していた。
「もう大丈夫。ソフィアさん達に会って少し落ち着いたところだったから。」
「それなら良かったです。
しかし、ソフィア様まで居られるとは…。
お久しぶりです。私は七星天兵団第一師団に所属しており、現在はエルミナ様の従者をやっておりますアンドラ・センナハルです。」
ソフィアに気が付いていたアンドラは、相手が皇族なのできちんと挨拶をした。七星天兵団において上の者に対する礼儀は絶対なのだ。
「……お久しぶりです。なるほど、貴方がエルミナさんの従者になったのですね。」
「はい、私は「ソフィアっ!!!あの野郎は何処だっ!!!」………フィリップ様…。」
今度は、突然ソフィアの兄であるフィリップが乱入して来た。どうやらずっとカインを探していたようだが……。
「おお、変態兄貴では無いかっ!!!」
乱入して来たフィリップを見てアルディオが叫んだ。とても不名誉な呼ばれ方をしている。
「誰が変態だっ!!!俺は変態じゃないっ!!」
咄嗟に言い返すフィリップ。美少女3人と美女1人の前で変態扱いされるなどあってはならない。
「ソフィアが言っていたぞっ!!兄のくせに一緒に寝ようとしたり、一緒にお風呂に入ろうとしたらしいでは無いかっ!!!」
「兄妹なんだから当たり前だろっ!!」
「そんな事が許されるのは主だけだっ!!!」
カインなら何でも許されると思っているアルディオ。まぁ、実際にその通りである。
その言葉を聞いたフィリップはカインの事を思い出して…。
「あっ、そうだっ!!あのクソ野郎は何処に居るんだっ!!!」
「主なら現在はバルシリガ家に行っているぞっ!!」
「何だとっ!!遠過ぎるわっ!!!」
ここから、バルシリガ家のあるスピリュークまでは魔導飛行船でも1ヶ月はかかる距離だ。とてもじゃないけど簡単には行けない。
そんな賑やかになってきた5人の元へ……。
「あんたら、さっきからうるさいっ!!!わしが集中して鍛冶出来ないじゃないかいっ!!!」
1人で鍛冶をしていたメリルまでやって来る。どうやら、2人の声が大きすぎてかなり迷惑だったらしい。
こうして、この場に6人の個性的メンバーが集結した……。
次回、集結した6人は…。
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