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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
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42話 従者達の思惑

今回は、ついにあの人物が……。

 「やっと到着したねっ!!

  2年ぶりだけど、オボルは全く変わってないなぁ。」


 発言したのは銀髪の美少女エルミナだ。

 長い間待ち望んだオボルへの帰郷なので、とても嬉しそうにしている。


 「エルミナ様は嬉しそうですね。まぁ、この日が来るのをずっと待ち望んでいましたから当たり前ですが。」


 エルミナの様子を見て発言したのは、エルミナの従者をしているアンドラ・センナハルだ。元センナハル王国の第二王女で七星天兵団、第一師団に所属している。

 アンドラは、肩までの短い水色の髪を持ち身長は170cmあり非常に容姿の良い美人だ。


 「色々皇族の仕事が大変だったけど、この日の為にと思えば頑張って来て良かったよ。

  これで、胸を張ってカイくんに会える…。」


 新たな皇族の1代目当主としての仕事が多過ぎて、とても忙しい毎日を送っていたエルミナ。慣れない事にもひたむきに頑張って取り組んできたのだ。

 それは、自分の愛しい人と再会する為でもある…。


 「…………………。」


 そんなエルミナに対して、アンドラは黙ってエルミナを見つめていた。

 その様子を不審に思ったエルミナは……。


 「アンドラ?どうかしたの?」


 「……いえ、少し考え事をしていただけです。そろそろ、第四師団オボル支部へと着陸しますとで降りる準備をして下さい。」


 少し間があったが、着陸の準備をうながすアンドラ。何か考え事をしていたらしい。


 「あっ、降りる準備して無かったよっ!

  早く降りられるようにいそがないとねっ!!」


 「はい、私も直ぐに参ります。」


 慌てて自室へと戻って行くエルミナ。この魔導飛行船はアフェリー家が所有しているので、エルミナの部屋が存在するのだ。

 その場に残ったアンドラは…。


 「……………。」


 オボルの街を眺めながら再び黙って考え事をしている。尊敬する主人の為には慎重に行動する必要があるので、先月聞いた情報に頭を悩ませていたのだ。


 (あの噂が真実なら、エルミナ様をあの男に会わせる訳にはいきません…。ですが、オボルから出て行ったらしいので丁度良かったです。

  結局、エルミナ様には言い出せなかったですけどね……。)


 アンドラは、オボルへと向かう1ヶ月前から事前に色々と調べていたのだ。なので、エルミナの関わりのあった人物を中心に危険の有無や身分や性格なども全てを把握していた。

 そして、1番力を入れて調べたのがカインである。エルミナの想い人なので最優先事項だった。

 結果、調べて分かったのはオボルを出て行った事と、その理由である。


 (……無能者ですか…。)


 世界のゴミとまで言われている無能者。人間扱いされず汚物として忌み嫌われる存在だ。

 もしエルミナの想い人が無能者だとしたら、皇族の従者として適正な対応をするしかない。たとえ、主人の思いとは違ったとしても…。


 (…とりあえず、降りる準備をしましょう。)


 アンドラは、色々な思いを巡らせながらエルミナの部屋へと向かうのだった…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 一方、エルミナの乗っている魔導飛行船を眺めている者達は……。


 「おおっ!!」「エルミナ様ぁーっ!!」「あれが魔導飛行船かっ!!」「わぁ、大きいっ!!」「皇族はレベルが違うな…。」「わしも負けんっ!!」「た、助けてくれぇ…。」


 色々な声が飛び交っているが褒め称えている声が多い。

 しかし、アルディオは……。


 「小さいではないかっ!!!まだミストラルの魔導飛行船の方が大きかったぞっ!!!

  期待ハズレだなっ!!」


 通常サイズの魔導飛行船を見て文句を言っていた。


 「お嬢ちゃん、何を期待していたんだよ…。」


 周りは賞賛しているのに、1人だけ大声で文句を言っているアルディオに呆れるハゲ男。


 「ハゲ男が有名人だとか言うから、もっと大きい魔導飛行船かと思ったんだっ!!お前のせいだっ!!」


 「エルミナ様が乗っているんだぜっ!!魔導飛行船そのものは関係ないだろっ!!」


 「そもそも、エルミナ様が誰か分からんっ!!」


 「さっき、説明しただろうがっ!!!聞いてなかったのかよっ!!!」


 「聞いたけど、忘れたのだっ!!!」


 空を飛んでいる魔導飛行船を尻目に、無茶苦茶なアルディオと正論のハゲ男が言い争いを始めた。普通に考えて、悪いのはアルディオである。


 「お嬢ちゃんと話していたら疲れるぜ…。」


 早くも神獣の精神攻撃に疲れてきたハゲ男。


 「ふっ、そんなに褒められても困るぞっ!!」


 「全く褒めてないからなっ!!!

  はぁ…。メイドのお嬢ちゃん、助けてくれよ…。」


 続けて精神攻撃をしてくるアルディオに溜息を吐きながら、ソフィアに助けを求めるハゲ男。

 

 「……………………。」


 しかし、ソフィアは黙って魔導飛行船を眺めていた。何か考えて事をしているようだ…。


 「ソフィア?どうかしたのか?

  分かったぞっ!!ハゲ男のせいだなっ!!」


 不思議に思ったアルディオはソフィアに呼びかけた。そして、続けて見当違いの方向へ話を持っていく。


 「だぁぁあーっ!!頼むからもう勘弁してくれぇえーーっ!!」


 精神的に追い込まれたハゲ男は、叫びながら走って逃げてしまった。


 「情けない男だったなっ!!

  やはり、主以外の男はダメな奴しか居ないっ!!」


 1人で頷いて、勝手に納得しているアルディオ。今のやりとりは、カインでも相当疲れる筈なのでハゲ男は全く悪くない。

 

 「…アルディオ、何をしているのですか?」


 考え事をしていたソフィアだったが、ハゲ男の叫び声を聞いて我に返った。ハゲ男の逃げた状況が分からないのでアルディオに質問をしたのだが…。


 「主は偉大であると納得していたのだっ!」


 「……確かにカイン様は偉大ですが、さっきの事と関係無いような…。」


 状況は分からなかったが、アルディオの話を鵜呑みにはしないソフィア。駄犬の話をまともに受け止めたらダメだと分かっている。


 「それにしても暇だな…。

  よしっ!!では、有名人に直接会いに行こうっ!!」


 魔導飛行船では物足りなかったアルディオは、エルミナの元へ乗り込むことを決めた。


 「ちょっと待って下さいっ!!彼女は「では、お先にっ!!!」……アルディオっ!!!」


 止めようとしたソフィアだったが、駄犬は話を聞かずに魔導飛行船を追いかけて行ってしまう。


 「はぁ…。」


 カインにアルディオを頼まれているので無視するわけには行かず、溜息を吐きながら追いかけていくソフィアだった…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「いいから会わせるのだっ!!!」


 「ダメだと言っているだろうっ!!!」


 七星天兵団、第四師団オボル支部の門前で言い争いをしているアルディオ。正面から有名人に会わせろと言っているのだが、もちろん入れてくれない。


 「そもそも、お前は誰だっ!!

  平民なら中へ入れないぞっ!!!」


 「ふっ、我は誇り高き天狼だっ!!!」


 いつも通り、ドヤ顔で大きな胸を張るアルディオ。しかし門番は、美少女で蒼い髪と狼耳を持っているがアルディオを天狼だと思うはずも無く…。


 「お前みたいなガキが神獣様な訳無いだろっ!!これ以上居座るなら拘束するぞっ!!!」


 「何だとっ!!我は嘘なんかつかないっ!!」


 真実だが、全く分かってもらえないアルディオ。このままでは七星天兵団に捕まってしまうだろう……この神獣が簡単に捕まるのなら。


 「アルディオっ!!!」


 そんな時、アルディオを呼ぶ声が聞こえて来た。もちろんソフィアである。


 「おお、ソフィアかっ!!この分らず屋をどうにかしてくれっ!!!」


 ソフィアに気が付いたアルディオは助けを求める。それに対して、勝手に置いて行かれたソフィアは……。

 

 「…分らず屋はアルディオです。この事をカイン様に報告させていただきます。」


 にっこりと笑顔でアルディオに答えるソフィア。しかし、目が笑ってないので怖い…。

 ずっとアルディオに振り回されたので非常に怒っているようだ。


 「っ!!!……あ、主には内密に…。」


 ビクッとした後、耳を垂らしながらお願いをするアルディオ。大好きなカインに怒られなくないのだ。


 「はぁ…。では宿屋へ向かいますよ。」


 やっと大人しくなった神獣に溜息を吐きながら宿屋へと向かい始めるソフィア。その後ろをトボトボと付いて行くアルディオ。

 しかしその時……。


 「ソフィアっ!!」


 突然、ソフィアの名前を呼ぶ男の声が聞こえて来た。呼び方からソフィアと近しい間柄だと推測できる。


 「…………………。」


 しかし、背を向けながら完全に無視するソフィア。気にせず宿屋へと向かっているようだ。


 「ソフィア、呼ばれているぞ。」


 「…………あれは幻聴です。」


 アルディオも話しかけるが、どうやらソフィアは無かったことにしたいようだ。


 「待ってくれ、ソフィアっ!!!兄の声を忘れたのかっ!!!」


 しかし、その男は回り込んでソフィアを止めた。金髪で狐の耳と尻尾が付いており、どこかソフィアと似ている。しかも自分を兄だと言っていた。


 「……私はフィリップと違い馬鹿ではありません。ちゃんと無視していたのです。」


 「それなら、無視しないでくれっ!!!!!」


 真顔で無視していたと話すソフィア。そんなフィリップと呼ばれる男はソフィアの腕を掴もうとして……。


 スッ。


 一瞬でフィリップの腕に短剣を突き付けて、動きを静止させたソフィア。


 「私に触れていいのはカイン様だけです。

  いくら一応兄だとしても切り落としますよ…。」


 殺気を放ちながら淡々と述べた。


 「……お、男の名前…。

  誰だっ!!!俺の妹に手を出した奴はっ!!!絶対にぶっ殺してやるっ!!!

  何処だぁぁぁあああーーーーーーっ!!!!!!」

 

 カインと言う名前に反応して叫び始めたフィリップ。ソフィアの殺気をお構い無しで怒りがカインに向う。そして、どこに居るかも分からないカインを探して何処かへ行ってしまった…。


 「アルディオ、行きましょう。」


 「お前の兄はいいのか?」


 笑顔で兄を無かった事にするソフィアに、一応聞いてみたアルディオだったが…。


 「アルディオ、行きましょう。」


 「う、うむ……。」


 再び同じ言葉を笑顔で言うソフィア。さすがに怖いと感じたのでアルディオも了承する。


 オボルへ来てさっそく色々とあったが、ようやく宿屋へと向かう事になったソフィアとアルディオであった……。

次回、カインがスピリュークへ到着…。


読んで頂きありがとう御座いました┏○ペコッ

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