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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
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39話 神樹の真価

…何でも有り。

 その後、竜型ナニカを倒したカインはしばらく仰向けのまま、ずっと空を見上げていた。

 先程の戦闘で覇気を使い過ぎた為に、魔力と闘気が殆どからになっているのだ。(※覇気=魔力+闘気)それにより、激しい頭痛がカインを襲っていた。

 しかも、無理な肉体再生を二度もおこなっているせいで、身体にも相当負担がかかっている。


 (……身体が重たすぎる…。それに、魔力も闘気も殆ど消費したから頭もクラクラするな…。

  メルとレイバトリオにナニカを倒した事を知らせたいが、さすがの俺も動けない…。)


 この真っ暗な場所から移動出来ないカインは、どうしようかと考えていた。とりあえず、ある程度回復するのを待つ事にしようと思っていたが…。


 (……あの鳥は…。)


 見上げていた空から、カインの元へ大きな鳥が向かって来るのが見えた。暗すぎて姿がよく見えないが、気配から誰が来たかは分かった…。


 「レイバトリオ…、メル……。」


 カインの呟いた名前の2人が直ぐ側へと着地して来た。そして、レイバトリオの背中からメルトが飛び降り、カインの元へ駆け寄ってくる。


 「お兄ちゃん……。」


 相変わらずの無表情だが、なんとなく心配しているのは伝わって来る。そして、メルトは仰向けになっているカインに抱きついた。


 「メル…、身体はボロボロだが俺は大丈夫だ。それに、ちゃんとナニカを倒したからな。」

 

 「うん…信じてた…。それで…アレは使った?」


 「ごめんな…。最後の最後まで使わなかったんだが、結局は神羅石を使って倒したんだ。」


 「謝らなくていい…。

  お兄ちゃんの力になったなら本望…。」


 申し訳無さそうにしているカインに、メルトは強く抱きしめる事で気持ちを現した。顔と言葉よりも、メルトの思いがちゃんと伝わって来る。


 ピカァッ!!!


 辺りが明るくなり、レイバトリオの姿が縮んでいく。どうやら、人の姿へと転化したようだ。


 「始祖様、お疲れ様です。ちゃんと侵略者をぶっ飛ばしてくれましたね……ついでに神樹以外の全ても。」


 「……それは大目に見てくれ…。

  てか、本当に神樹は頑丈だったな。俺の最高の絶技でも存在を喰い尽くせなかった。」


 「はぁ…。存在を喰らい尽くす技を使ったとは…。どおりで、ここ一帯が暗闇になる訳です。

  さすが始祖様ですね……。」


 カインの言葉に溜め息を吐きながら苦笑しているレイバトリオ。呆れているが何故か仕方無いと思っているようだ。


 「なんか、含みのある言い方だな。それに、まだレイバトリオとはそこまでの知り合いでは無い筈だが…。

  未だに俺を始祖だと思っているのか?」


 「ふふっ、言った筈です。貴方様も始祖様なのですよ。」


 笑顔で答えてくるレイバトリオ。カインが何を言っても、始祖本人だと思っているようだ。


 「はぁ…。まぁいいや…。

  それより、神羅石をメルトに1つ渡してやってくれないか?まだ神樹に何個か残ってるだろ?」


 レイバトリオの様子を見て諦めるカイン。それよりも、メルトに再び渡す神羅石を何とかして欲しいと思っている。


 「神羅石は……というより、神樹は元々始祖様のものですよ。私に許可を取らなくても、始祖様ならいくらでも持って行ってください。」


 「…………だから、違うんだけどな…。」


 なんか納得出来無いカイン。結局、神羅石を取りに行く為にカインが回復するのを待ち、3人は神樹の下へと向かって行った…。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「根元まで来ると神樹が壁にしか見えないな…。てか、大き過ぎるだろ…。」


 神樹は高さ1km以上横幅500mくらいあるので、直接触さわれる位置まで来ると最早もはや壁である。いきなりこの場所に来た人は、これが樹であると思わないだろう。


 「さすがに1億年以上経てば、この大きさにもなりますよ。それに大きい方が有効に使って貰えます。」


 「……この神樹って、使う事が前提なのか?」


 神樹なのに、そこら辺の木と同じような扱いなのでカインは疑問に思った。いくらなんでも扱いが雑過ぎる…。


 「もちろんです。元々、始祖様が侵略者を倒す手段として植えた神樹ですからね。」


 「始祖は、色々と考えていたんだな……。」


 「はい、さすが始祖様ですっ!!」


 「…………………………。」


 始祖に感心していたカインの方を見ながら、笑顔で始祖を褒めているレイバトリオ。

 言い返したかったが、いつもの従者達と同じ流れになりそうだったので黙り込むカイン。ここでツッコんだら負けだと思った……。


 「でも…どうやって採取するの?」


 ここで、不思議に思ったメルトが質問した。確かにこんなに大き過ぎる神樹から、どうやって採取するのかが全く想像できない…。


 「それはですね………始祖様か私限定ですが、神樹に直接お願いをすれば採取出来ますよ。」


 「……はぁ?」


 「つまり、〇〇を下さいと神樹に言葉でお願いするんです。」


 「………………冗談だよな?」


 あまりに通常の採取とかけ離れている方法に、長い沈黙の後レイバトリオに再び問いかけたカイン。そんな冗談みたいな話があるわけ……。


 「これは、本当です。では、始祖様はそこで私が採取するのを見ていて下さいね。」


 カインにそう告げたレイバトリオは神樹の根元へ行き、手で直接神樹に触れた。

 そして……。


 「レイバトリオが命じます。

  神羅石を5つ私に下さい。」


 ピカァァッ!!


 レイバトリオの言葉に反応した神樹が、突然輝き出した。そして、レイバトリオの頭上から光る何かがゆっくりと落ちて来る…。

 その落ちて来た光をレイバトリオが手に取った瞬間、神樹の輝きが消えていった…。

 

 「………もしかして、それが?」


 「はい、神羅石5つですっ!」


 「おいっ!!簡単過ぎるだろっ!!」


 演出がっているだけで、あまりにも雑な採取方法に納得出来無いカイン。そもそも、あの演出も無くして普通に渡してくれと思うだろう。


 「これは、遥か昔に始祖様が考えた演出ですよ。まるで”ゲーム”みたいだから面白いと言っていました。

  だから、文句なら貴方様自身にお願いします。」


 「それは、すまな………って、俺は始祖じゃないっ!!!そもそも、ゲームって何だよっ!!」

 

 レイバトリオが当たり前のように始祖扱いするので、思わず謝りそうになったカイン。しかし、ふと思い出して何とか否定をした。

 そもそも、カインはゲームなんて言葉自体知らない。


 「始祖お兄ちゃん…ゲームって?」


 「メル…お前は俺の味方じゃないのか?」


 何故か急にカインの敵が増えた。公然の事実としてカイン=始祖が定着を始めている…。


 「ゲームとは、始祖様の故郷にある娯楽の事みたいですよ。もしかして、お忘れになられました?」


 「忘れたとか言う話じゃないっ!!!

  はぁ…。呼び方は別にいいが、本人扱いはしないでくれ。

  それにしても、始祖の故郷か…。確か始祖は、異世界からこの世界へとやって来たんだったよな?」


 始祖じゃないと否定するのにも疲れたカインは、話題を変更することにした。


 「はい、そうですよ。1億年前に、この世界オルナティブへ突然やって来ました。そして、この世界を導いた偉大なお方です。

  …貴方様は…。」


 「ボソッと最後に付け足すなっ!!!」


 1億年前に異世界から来た始祖とカインを、どうしても同じ扱いにしようとするレイバトリオ。

 さすがにカインも疲れてきた……。


 「はぁ…。さっきの戦闘で疲れているんだ…。

  これ以上疲れさせないでくれ…精神的に。」


 完全に疲れた目をしているカイン。


 「それなら、神樹の果実を食べると治りますよ。では、私が採ってきますね。」


 「待てっ!!!なんでサラッと神樹の果実を俺に食べさせようとしているんだよっ!!

  1年に1つしか採れない大切な果実だろ?」


 カインは、簡単に神樹の果実を採ってこようとしているレイバトリオを止める。ミストラルの話では、ナタリシア家が管理しているとても大切な果実だと聞いているのだ。

 しかし、レイバトリオは……。


 「そんな事はありません。私や始祖様が神樹に頼めばいくらで「待て待て待てっ!!!」……なんですか?」


 「………それ以上は聞きたくない…。」


 伝説の果実が、自分ならいくらでも採れるとか言われても困るカイン。ごく普通の一般人(カインが思ってるだけ)には、重い話なのだ。


 「さすがお兄ちゃん…何でもありだね…。」


 「メル…褒めてるのか?馬鹿にしてるのか?」


 メルトは無表情なので真意が読めない。なので、どちらの意味としてもとらえられる言葉に困惑するカイン。

 味方のいない現状に、複雑な気持ちになるのだった…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「カイン様ぁぁぁぁーーーっー!!!!」


 「主ぃぃぃぃぃーーーっ!!!!」


 何でも願いを叶えてくれる?神樹のおかげで、従者の2人をカインの元へ転移させる事に成功した。

 どうやらカインが神樹に頼めば、制限されている力も発動出来るようになるみたいだ。カインは、レイバトリオに言われて半分ヤケになりながら神樹にお願いをした後に、自分の転移術で2人を召喚したのだ。


 「……お前ら、なんで泣いているんだ?」


 召喚すると同時に、美少女とは思えない酷い顔でカインに飛び付いて来たアルディオとソフィア。

 泣き過ぎて目が腫れており、鼻水も非常に放出している。身体にもあちこち小さい傷が出来ており、葉とか土とか色々と身体に付着している。


 「カイン様がぁぁ…うう……。」


 「我は…我は…我は……主が……。」


 「……ダメだ…。さっぱり、分からない…。」


 泣きながら話すので、何を言ってるのか全く理解出来ないカイン。どうして竜型ナニカが闇のゲートから現れたのかを、全く知らないカインには仕方無い事だ。

 とりあえず、2人が泣き止むのを待つしかないので優しく頭を撫でてあげる事にした。


 「うわぁぁんっ!!!カイン様ぁぁぁあーーーっー!!!!」


 「主ぃぃ、主ぃぃ、主ぃぃぃぃぃーーーっ!!!!」


 「……………何故悪化するんだ…。」


 撫でたのに、さっきよりも酷い状態になってしまった。やっぱり、女心は全く理解出来ないと改めて認識したカインだった……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「……ザックがナニカに変化した?」


 1時間かけて、ようやく落ち着いた2人に事情を聞いたカイン。どうやら、とんでもない事が起こったようだ。


 「はいっ!!ザック・バルシリガが、急に溶け出したので非常に大変だったんですよっ!!!」


 「そうだっ!!!奴が変身したんだっ!!!」


 「……………………変身?」


 カインには、溶けた=変身という繋がりがよく分からない。いや、アルディオにしか分からないだろう。


 「カイン様…アルディオの狂言は無視して下さい……。

  それよりっ!!!ザック・バルシリガが、カイン様に対する憎悪によってナニカに変わったんですよっ!!」


 「憎悪でナニカへと変化……。

  レイバトリオ、何か知ってるか?」


 ナニカの事は1億年前から存在しているレイバトリオの方が詳しいと思い、カインは質問をした。それに、ナニカ…侵略者は、始祖が存在した時代にも関係があるらしい。


 「侵略者は、この世界の存在ではありません。ですから、世界を渡る為に何かを媒介ばいかいする必要があります。

  それが、強い負の感情を持つ人間です。」


 「別の世界から、この世界に存在する者を媒介して侵入して来るという訳か…。それも、負の感情によって…。

  だが、何で5000年間ナニカは出現しなかったんだ?再びナニカが現れたのは2年前だろ?」

 

 ナニカは2年前に、突然この世界に出現したと世間では思われている。それは、5000年間全く姿を見せていなかったからだ。

 過去の話を何者かが隠蔽したのかもしれないが、それはまた別の話…。


 「それは、この神樹によって他世界からの侵入を防ぐ結界が張られています。なので、他世界からは本来侵入出来ないのです。

  しかし、時々結界が薄くなってしまう周期があるので、恐らくそれが原因かと…。」


 「……神樹って何でも有りだな。」


 最早何でも有りの神樹に苦笑するカイン。万能過ぎて、さすが神の名前が付くものは凄いと思っていたが……。


 「カイン様と一緒ですねっ!!」


 「神樹と俺を一緒にするなっ!!!!

  ………俺は…………ただの一般人だっ!!」


 「「「「それは無い(です)。」」」」


 カインの狂言を一斉に抗議するソフィア達。身分的には一般人だが、能力的には最高位のレベルである。いや、世界最高の存在だろう。

 そんな周りの反応に納得出来無かったが、疲れそうなので本題に戻る事にしたカイン。


 「………それより、本題に戻ろう。

  その神樹によって張られている結界が弱まっているなら、逆に強める方法は無いのか?」


 「そうですね……本来なら1万年周期で結界が弱まるのですが、今回は5000年で弱まりました。普通なら100年後に元の状態に戻るのですが、今回は分かりません。

  もしかしたら、何者かが意図的に……。」


 レイバトリオは、いつもと違う周期で結界が弱まっている事に疑念を持っている。何者かが介入して引き起こしたのではないかと…。


 「………神族や古代の術などの歴史を抹消した奴等が関係しているのかもな。この世界の中にも敵が居るという訳か…。

  まぁ、今はどうしょうもない事だから、先ずは目先の問題を解決していこうか。」


 とりあえず、気になる事は多いが目先の問題から解決する事に決めたカイン。この世界の身分的な話とか、ナニカ…侵略者への対処とか問題は山積みなのだ。


 「…お兄ちゃん…神羅石を使って武器を作るんでしょ?」


 ここで、メルトがカインに疑問をぶつけた。


 「神羅石って言うか、神樹そのものがナニカに対抗する素材になるみたいだ。葉とか枝、果実なども同じ力を持っているらしい。

  だから、この神樹自体がエレメントを生み出すのと一緒だな。俺にしか管理できないみたいだが、この世界を変えることが出来るかもしれない。」


 カインはエレメントに左右されない世界を作る為に、神樹を利用出来ないかと考えている。平民や無能者でも、努力次第で活躍出来るようにしたいのだ。


 「先ずは、俺達専用の武器や防具を神樹の素材で作る事にしよう。だが、天宝製作術だけで作るのは俺達の分だけだ。

  一般的にも活用する為には、鍛冶師達にも作って貰わなければならないな。

  とりあえず、誰かに協力をして貰いたいんだが……。」


 カインは、一般に流通させる為に鍛冶師達にも神樹の素材で武器や防具を作って貰いたいと思っている。

 肝心の鍛冶師に心当たりが無いので、どうしようかとカインも思っていたが…。


 「それなら…私に任せてよ…。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 現在カイン達は、深淵の樹海から出てナタリシア城に帰って来ていた。帰りは転移術が使えたので一瞬で戻ってこれたのだ。レイバトリオとは一旦お別れをして4人で戻って来ている。


 そして、ミストラルへ報告をする為にナタリシア城の執務室へ向かっていたのだが……。


 「ナタリシア団長っ!!私の息子を何処に連れて行ったんだっ!!

  早くザックを返してくれっ!!」


 執務室の中から、男の怒鳴り声が聞こえて来た。話している内容から判断すると、おそらくザックの親だろう。


 (はぁ…。面倒な事になりそうだ…。)


 これから起こる事態を予想して、急に部屋に入りたく無くなってきたカインであった……。

次回、バルシリガ家の実態…。


読んで頂きありがとう御座いました┏○ペコッ

ブクマ登録、感想評価もよろしくお願いします。

誤字脱字などのご指摘がありましたらお願いします(;•̀ω•́)

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