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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
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38話 奇跡の素材

奇跡を起こす物…。

 「滅びよ…[ジャッジメント《終焉》]…。」


 カインは竜型ナニカの放ったブレスに対して、自分で放てる最高の絶技で対抗した。純白と漆黒の2つの光が斬撃となり、交差しながら解き放たれた。


 シュウウウウウウウウウウッ!!!!!!!

 

 カインの放った絶技により、2つの光と接触した空間を完全に跡形もなく消し去っていく。これが、この世界の全てを喰らい尽くす終焉しゅうえんの絶技だ。

 月光草によって照らされていたこの場所だったが、その光さえも全てを喰らい辺り一帯が暗黒に包まれていく。


 2つの光が全てを喰らい、に還す。

 それは、竜型ナニカの放ったブレスも例外では無かった。


 ブォォォォオ…シュウウウウウウッ!!!!


 闇のブレスと2つの光が接触した瞬間。闇のブレスは全く抵抗無く、光の斬撃に喰らい尽くされた。

 そして、2つの光は何事も無かったかの様に竜型ナニカへと急速に接近して行く。


 「グルルルルルルルッ!!!!」


 竜型ナニカは、自分のブレスが消された事に雄叫びを上げながら、迫る光の斬撃を防ごうと動き出す。闇のオーラを収束して、自分の前にドス黒いバリアを発生させた。

 そして、バリアと交差した2つの光が接触して……。


 シュウウウウウウウウウウッ!!!!!!!

 

 光の斬撃は、音も無く闇のバリアをあっさりと喰らい尽くした。そしてそのまま竜型ナニカの身体にも迫っていき……。


 シュウウウウウウウウウウッ!!!!!!!


 「グギャァァアアアアアッ!!」


 30mもの巨体を徐々に侵食していく光、それにより竜型ナニカの叫び声もだんたんと聞こえなくなっていく。


 「…ギャァア………アア……ァ………………………………………………。」


 そして、竜型ナニカは身体全てを喰らい尽くされた。それと同時に2つの光も消え去っていた。


 「はぁはぁ……。はぁはぁ……。」


 その様子を少し離れたところで見ていたカインの息は、かなり上がっていた。最高の絶技を放つ為に、体内の覇気を全体の3分の2以上消費させたからだ。

 それに、本来なら『天衣無縫《蒼天》』で身体能力を上げて使用するのが絶技なので、通常の身体では返ってくる反動もかなり大きかった。

 

 現在カインは、全身の筋肉が断裂しておりボロボロだ。

 なので、仰向けの状態で空を見上げていた。


 (……生身での発動は無謀だったか…。威力が半減して身体もボロボロだ…。自分の技の反動で死んだら洒落にならなかったな……。

  後は、ナニカを倒したかどうかだが…。)


 「はぁはぁ…天なる癒やし[ホーリーヒール]。」


 色々と考えていたカインだったが、とりあえず身体の治療を開始した。真っ暗闇の中、光系統の最上級回復魔法によってカインの身体が眩い光に包まれていく。


 (治療が完了したら、先ずはナニカが再生していないかの確認だな…。

  絶技によって肉体そのものを消した筈だから、普通は再生出来ないと思うが…。)


 今後の動きを考えていたカイン。そんな中、癒やしの光も弱まっていき再び周囲は暗黒に包まれた。どうやら、カインの身体が完治したようだ。

 直ぐに立ち上がって身体の調子を確認する。


 (少しダルい感じが残っているが、仕方無いか……。

  あまり魔力も闘気も使う訳にはいかないから仙術は使えない…。まぁ、このくらいなら大丈夫だな……。)


 カインは倦怠感けんたいかんがあるようだが、特に問題はないみたいだ。先程の絶技により、かなり消費してしまったので魔力や闘気を節約をしている。

 

 (さてと、ナニカの様子を見に行くか…。)


 カインは、そろそろ討伐の確認に行く事にした。あの絶技を受けて再生出来る筈無いと思い、軽い感じで向かっていた。 

 しかし、突然あの感覚がカインに襲いかかった…。


 ゾワァァァァァッ!!


 「っ!!!!!」


 カインは、絶対的な死を呼ぶモノ…ナニカが放つ死のオーラを遠くから感じた。

 しかも、気配を探ってみると…。


 (こ、この気配はっ!!)


 少し慌てた様子で、竜型ナニカのいた地点へと高速で移動を開始したカイン。かなり予想外の展開になっているみたいだ。


 (……倒し切れなかったみたいだが…これは…。)


 カインは、速度を上げ急いで気配の感じた場所へと向かった。辺りは、カインの放った絶技のせいで真っ暗闇となっており視界が悪い。

 気配だけを頼りに向かっていたカインだったが、目的の場所へ近付いていたので辺りを照らし始める。


 「[シャインボール]っ!!」


 カインは、光系統の魔法を発動させて辺りを照らす小さい光の玉を出現させた。

 真っ暗闇だった場所が一気に照らされていく。そして、視線の先にあったモノは…。


 「「「「「グルルルルッ!!」」」」」


 なんと、元々竜型ナニカのいた場所には30体ほどの小さいナニカが存在していた。殆どアメーバみたいな姿をしていて、全く原型の無い黒い塊になっている。


 (やはり、複数の気配を感じたのは間違い無いみたいだな…。しかし、これはどういう事なんだ?)


 あの時、気配を探って感じた疑念が、直接目で見ることによって確信に変わった。だが、どうしてこの姿になっているのかが分からない。

 

 そんな事をカインが考えていると、向こうのミニナニカ達もカインの接近に気が付き一斉に攻撃を仕掛け始めた。


 ピュンッ!!ピュンッ!!ピュンッ!!

 ピュンッ!!ピュンッ!!ピュンッ!!


 30体が、一斉に闇のレーザーをカインに向けて発射した。超高速で狭い範囲だが一直線に向って来ている。


 「ちっ!!」


 かなり速度のあるレーザーだったが、カインは難なく躱していく。だが、いくら小さいレーザーと言っても、少しでも直撃すると大怪我をするだろう。


 (絶技でも倒せ無かったみたいだが、ナニカも完全に再生する事が出来なかったという事なのか?それで、あの中途半端な姿になったと見るべきだろう…。

  しかし、絶技でも倒せないとなると…。)


 ピュンッ!!ピュンッ!!ピュンッ!!

 ピュンッ!!ピュンッ!!ピュンッ!!!!


 小さいナニカ達は、次々にカインに向って闇のレーザーを連射していく。そして、少しずつ移動を開始している。

 どうやらカインの周りを取り囲み、逃げ場を無くすように包囲しているみたいだ。


 (……ちゃんと連携がとれているな。それに、俺も避けているだけでは倒せない…。

  本当は使いたくなかったが”アレ”を使ってみるしか無いか…。)


 どんどん追い込まれていくカインは、事前に考えていた秘策を思い出す。だが、確実に効果のある物ではない……それに、大切な物だから本当は使いたくなかった手段だ。


 (メル…ごめんな…。

  だが、コレを使わせて貰うっ!!)


 カインは小さいナニカ達の闇レーザーを躱しながら、アイテムボックスΩの中に剣と刀を収めて、代わりに”アレ”を取り出した。


 (親方の言っていた事が本当なら…。)


 カインが、コレをナニカに対して使うのには理由があった。

 2年前に鍛冶の師匠でもある名匠メリルに、とある話をしていた事を思い出したからだ……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 今から2年前…。

 カインがエレメントを測定する前に、再びメリルの鍛冶場に訪れた時の話…。


 「おや、カインは今日も来たのかい?」


 「うん、少し聞きたい事があってね。親方が忙しいなら別の日にするけど…。」


 カインは、別に急用では無かったので日を改めても良いと思っていた。

 しかし、メリルは微笑みながら…。


 「いや、儂も休憩をしようと思っていたから調度良かったよ。」


 本当は少し忙しかったが、孫のように思っているカインがせっかく来たので休憩をとる事に決めた様だ。


 「おお、それは良かったよ。それにもう少ししたらスズも「お邪魔しますっ!!」……いいタイミングだったね。」


 どうやら、スズもやって来たようだ。2人でスズを迎えに行き、居間へと移動して行った…。


 「カイ兄、頼まれてたお菓子持って来たよ。」


 「ありがとうな、スズ。親方は甘いものが大好きだから必需品なんだよ。」


 「甘いものは全て、儂の大好物だよっ!」


 メリルはそんな事を言いながら笑顔でお菓子を受け取った。本当にお菓子が大好きみたいだ。


 「うん、これは美味しいお菓子だよ。いくらでも食べていられる。」


 「親方が喜んでいるよ。スズ、良かったね。」


 「う、うん。久しぶり作ったから不安だったけど…。」


 カインの発言を聞いてら少し照れ臭そうにしているスズ。どうやら持って来たお菓子はスズの手作りらしい。


 「おお、これはスズが作ったのかい?よく作り方を知っていたね。でも、何処かで食べた事があるような…。」


 「え、えーと……。」


 メリルは、食べたお菓子に見覚えがあるみたいだ。それに対して、スズが困ったような顔をしている。

 2人の話を聞いていたカインが……。


 「スズは、エルと2人でよく一緒に料理していたからね…。多分、エルが持って来たのを親方が食べたのかもしれない……。」


 少し寂しそうに遠くを見ながら発言したカイン。まだ、エルミナとの関係を割り切れていないところがあるようだ。

 そんなカインを見ていたスズは慌てて……。


 「あっ!そういえば、メリルさんに用事があって来たんだよね?私もその話を聞きたいな。」


 エルミナの話題を変えて、ここに来た目的の話へと誘導した。少し思うところもあったが、カインも本題についての話を始めた…。


 「……………そうだね…。

  俺が今日ここに来たのは、この前親方が言っていたナニカを倒せる武器について聞きたかったんだよ。」


 「なるほど…確かに儂はナニカを倒せる武器を作りたいと思っている。それに、心当たりがあるとも言っていたよ。

  だが、問題は素材がね……。」


 どうやら構想はできているみたいだが、素材に問題があるらしい。どんな素材か想像がつかないのでカインは質問をした。


 「それはどんな素材?教えてくれたら、どんなに遠い場所でも俺が取ってくるよっ!!」


 「カイ兄が行くなら私も一緒に行きますっ!!ナニカを倒す為に必要な物なら、絶対に欲しいですっ!!」


 一度敗北をしているので、カイン達は必死になって倒せる手段を探していた。だからどんな場所にあっても絶対に手に入れて来るつもりだったが…。


 「残念ながら、カイン達が行ったところで手に入る物ではないんだよ。儂の故郷にある樹海で手に入るらしいけど、限られた者しか中に入れない。

  それも、実際手にできるのは天族のみと決まっている…。」


 「天族のみか…それなら平民の俺達には絶対に無理な話だね…。でも、親方の故郷がどんな場所か知らないけど、いつか行ってみたいかな。」


 天族のみと聞いて、この世界での絶対的な権力者の前には平民の自分では無理だと判断するカイン。

 少し落ち込んだが、メリルの故郷には興味を持ったみたいだ。


 「まぁ、ドワーフやエルフばっかりの場所だよ。昔、儂の知り合いである鍛冶師が天族に武器の製作を頼まれてね。その時に使った素材ならナニカにも通用すると思った。

  ……なぜなら、その素材で作った武器には身体強化と肉体強化の2つが付与がされていたんだ…。」


 「身体強化と肉体強化の2つを付与をするなんてっ!!!!」


 カインは驚愕した。それが事実だとすれば世界の常識を根底をくつがえす力だからだ。

 

 この時のカインは知らなかったが、覇気も同じ力を持っている。そもそも、この世界にはエレメント以外で身体強化と肉体強化の2つを同時にをする事は不可能。

 だからこそ、この世界ではエレメントが絶対的な象徴となっていた。

 しかし、もしも武器だけで肉体強化と身体強化の2つが出来るのならばエレメントが弱い者でも、無能者であっても強い力を持ってしまう事になる。


 「まぁ、能力の上昇率はエレメントと比べれば低い物となるだろう。しかし、その力は絶大だよ。儂の故郷の天族も、それが分かっているから公表はしていないね。」


 「なるほど…。エレメント主義の奴等が、そんな素材の存在を許す訳無いか…。

  だけど、確かにエレメントとその素材は能力が一致しているからナニカを倒せるかもしれない……。」


 ナニカに有効だという確証はないが、高い確率で倒せるかもしれない。カインはそんな奇跡の素材の名前を聞いた…。


 「親方…その素材の名前は?……。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 カインがアイテムボックスΩから取り出したのは、黄金に光る石……………”神羅石”だ。

 メルトが試練を乗り越えてようやく手に入れた物を本当なら使いたく無かった。しかし、渡して貰えないと思っていたカインだが、秘策があるとメルトに言ったらこころよく渡してくれたのだ。

 

 (〈頑張って手に入れた物が、私の代わりにお兄ちゃんの役立つなら嬉しい〉か……。メルの為にも失敗する訳にはいかないな…。)


 ピュンッ!!ピュンッ!!ピュンッ!!

 ピュンッ!!ピュンッ!!ピュンッ!!


 カインを囲んでいる、小さいナニカ達の包囲網が完成しようとしている。今なら難なく躱しているが、完全に包囲されたらどうなるか分からない…。


 (そろそろヤバくなってきたな…。身体も万全では無いから、包囲されたら一気に畳み掛けられる恐れがある…。

  覚悟を決めて、神羅石を使うしかない。しかし、武器でもない神羅石を加工しないで使用する為には……。)


 遂に神羅石を使う覚悟を決めた。武器ではなく、素材のままである神羅石を使用する為にカインの考えた方法は…。


 パリィィィンッ!!!


 突然、カインが神羅石を握りしめて破壊した。粒状となった神羅石が辺りに散らばっていく。

 そして……。


 ゴオオオオオオ…。


 カインが覇気を解放した。そして、上手く覇気を操作して神羅石の粒を収束させていく。


 (武器が無いなら、神羅石と一緒に技を放てばいい。覇気を操作して神羅石を付与させた絶技ならナニカを永遠に消滅出来る筈…。)


 ゴオオオオオオ…。


 ナニカの攻撃を回避しながら、覇気を溜めているカイン。空間が歪み始めており、覇気の周りにはキラキラとした粒状の神羅石が輝いている。


 「……[天衣無縫《光輝》]っ!!」

  

 そして、覇気の収束を完了させたカインは黄金に輝く覇気をその身に纏った。まるでカイン自身が太陽みたいな、圧倒的な輝くオーラを放出している。


 ドンッ!!!!

 

 カインは地面を強く蹴って上空へと跳んだ。どんどん上昇していき、ナニカ達の包囲網から完全に脱出する。

 そして、そのままはるか上空から、30体いるナニカ達に向けて絶技を放った。


 「武王術絶技[神羅龍滅拳]っ!!」


 カインの拳から、全長500mはある超巨大な黄金の龍が出現した。そして、超高速で下にいるナニカ達へと向って迫っていく。


 ゴォォォォオオオオオオオッ!!!!


 ピュンッ!!ピュンッ!!ピュンッ!!

 ピュンッ!!ピュンッ!!ピュンッ!!

 

 黄金の巨竜に向けて、闇レーザーを放つ事で対抗するナニカ達だったが、全てを弾かれて消滅してしまう。


 ゴォォォォオオオオオオオッ!!!!


 凄まじい咆哮とともに、周囲を圧倒しながら進み続ける黄金の巨竜。ナニカ達は慌てて散らばって逃げていく。

 しかし、もう間に合わない…。


 ドゴォォォォオオオオオオオオオンッ!!!!


 着弾とともに、黄金の巨竜は大爆発を起こした。5kmの範囲を巻き込んだ爆発は、全てのものを消滅させていった……。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 暫く続いた大爆発は、数分でようやく落ち着いていた。その爆発の範囲に存在していた神樹以外のものは、全て完全に消滅していた……”ナニカ達も含めて”……。


 「はぁはぁ……。はぁはぁ……。」


 覇気の解放を止めて普通の姿に戻ったカインは、再び仰向けの状態で空を見上げている。


 (…………遂にやったんだな…。)

 

 かなり息が上がっているが、先ほどとは違い今度の空を眺めているカインの顔は清々しいものになっていた……。

次回、後処理と抗議…。


読んで頂きありがとう御座いました┏○ペコッ

ブクマ登録、感想評価もよろしくお願いします。

誤字脱字などのご指摘がありましたらお願いします(;•̀ω•́)

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