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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
34/65

30話 勘違い

メルト登場…。

 「騒がしい…静かにして…。」


 無表情のエルフの女の子が居る。金髪のツインテールの美少女で、見た目はカインと同じくらいの歳だ。


 一触即発なザックとソフィアだったが、突然の乱入に意識をエルフの女の子に向けた。

 その女の子が誰であるか気が付いたザックは…。


 「メルトか…。この城に、勘違いした下等な平民が入り込んでいてな。私が追い払っていたところだ。」


 ザックが、カインを見下しながらエルフの少女メルトに告げた。その言葉を聞いたメルトは無表情でカインを見つめる。


 「私は、ミストラルにこの人連れて来るように言われた…。ザックも来いだって…。」


 メルトはカインを指差しながら淡々と述べる。どうやらミストラルが連れて来るように頼んだみたいだ。


 「何だとっ!!この平民が私と一緒に呼ばれるとは……何かの間違いでは?」


 「ならザックは来なくていい……。」


 「ま、待てっ!!…分かった一緒に行こう。」

 

 カインも一緒な事が気にいらないザックだったが、来なくていいと言われたので渋々了承した。

 一方、ソフィアはまだ短剣を構えていたが…。


 「ソフィ、もう止めろ。俺の事は何を言われても構わない。母さんが呼んでいるみたいだから行くぞ。」


 「私は、カイン様を侮辱する者は許せません。

  ……ですが、命令なので仕方無いですね。」


 カインの”命令”にソフィアは短剣を収めた。

 普段は滅多に命令しないカインだが、ソフィアが治まりそうになかったので仕方無く命令したのだ。

 しかし、短剣は収めたがザックに対する警戒は解かなかった。何かあれば、いつでも殺る気みたいだ。


 「主は優しすぎるな。我も主が制止しなかったら殺っていたぞ。」


 アルディオも、何もする気は無さそうに見えたが本当は抑えていたみたいだ。従者達にとっては主人のカインが侮辱されるのは我慢できない。


 「身分が低いのは事実だから俺は気にしない。

  ……だけど、2人ともありがとう。」


 カインは、自分の事を大切に思ってくれている従者達に感謝を述べた。アルディオもソフィアもその言葉を聞いて笑顔になった。とても忠実で可愛い従者達である。


 「ねぇ…。早く行くよ…。」


 相変わらず、淡々とした声で話しかけてくるメルト。早く自分について来いと催促されるカイン達。

 結局、部屋には行かず直接ミストラルの元へ向かう事になった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ミストラルの執務室に入ったカイン達は、それぞれ椅子に座るように促された。

 そして、一息入れたところで…。


 「はぁ…。侍女からまだ入り口で騒いでいると聞いたから、メルトに行ってもらったんだよ。

  どっかのバカは身分を大事にしてるから、対等以上の者の言葉しか聞かないからねぇ。」


 ミストラルは溜息を吐きながら、メルトに向かいに行かせた理由を説明した。

 ザックは自分の身分に固執しているらしい。どおりで執事や侍女達も止めに入らなかった訳だ。


 「……それは私の事ですか?」


 「あんた以外にそんなバカは居ないよ。」


 ザックはバカと言われた事に、眉をひそめながらミストラルに質問した。対してミストラルは、そんなの当たり前とでも言うように肯定する。


 「しかしっ!天族の城であるナタリシア城に下等な平民が入るなど、あってはならない事ですっ!!」


 ザックはカインを睨めつけながら、ミストラルに抗議するが…。


 「カインは、あたしの息子なんだからこの城に入る事は当たり前だ。あんたはあたしの息子を侮辱しているのかい?」


 カインが下等な扱いをされた事に、ザックに強い威圧を放ちながら述べるミストラル。

 その凄まじい威圧を受けて緊張が走るザック。


 「母さん、俺は気にしてない。まだ自己紹介も出来ていないし、話を進めよう。」


 「はぁ…。あんたは自分を侮辱されるのは全く気にならないんだねぇ。自分は身内を侮辱されたら徹底的に排除するのに。」


 全く気にしてないカインに呆れるミストラル。

 カインは自分に向けられる感情にうといのだ。それが、好意であっても……。

 とりあえず、話を進めることにしたミストラル。


 「では、話しを進めようかねぇ…。

  今回の依頼は、メルトの修行の旅における護衛をカイン達に任せる事だ。それで、改めて紹介するがこの子がメルトだよ。」


 「私はメルト…よろしく…。」


 ミストラルに紹介されたメルトは、無表情で淡々と短く挨拶をした。軽くお辞儀をして、金髪のツインテールが少し揺れる。


 「俺はカインだ。現在はランクB冒険者で、今回の依頼を達成すればランクAとなる。

  メルトとは家族みたいなものだし、仲良くやっていきたいから、よろしくな。」

 

 「……家族?どういう事?」


 カインの発言に無表情で首を傾げるメルト。突然家族と言われてよく分からないようだ。

 そんな問いかけにミストラルが……。


 「それはねぇ。カインが「メ、メルトと家族だとっ!!!それは婚約者という事かっ!!」……。」


 ミストラルが説明しようとした途中で、ザックが突然立ち上がり、大声で叫びながらあいだに割って入ってきた。


 「カ、カイン様が婚約ですかっ!!!」


 「何だとっ!!主よ我との婚約が先では無いのかっ!!!」


 「私の婚約者がカイン?」


 話がどんどん飛躍して、メルトとカインの婚約話となって来ている。一体、何処からそんな話になったのか分からないカインは……。


 「………いや、落ち着け。俺と「ふ、ふざけるなっ!!!メルトは私と婚約を結ぶんだっ!!」…………聞けよ…。」


 説明しようとしたカインに、またもやザックが間に割って入ってくる。話を聞いてもらえず萎えるカイン。

 そして、自分こそが婚約者だと言っていたが…。


 「……ザックとは絶対に嫌…。」


 「単細胞のザック・バルシリガと婚約するくらいなら死んだ方がマシですね。」


 「ザック、身の程をわきまえよっ!」


 「………あの下民と扱いが違う…。」


 メルト、ソフィア、アルディオの3人に拒絶の言葉を畳み掛けられて撃沈するザック。完全に比べる相手が悪い。


 「あのねぇ。誰も婚約なん「だがしかしっ!!!私は絶対に諦めないっ!!メルトと婚約するんだぁぁあーっ!!!」……。」


 ザックによる3度目の割り込み発言。ミストラルも説明する気がどんどん無くなっていく。


 「無理…キモイ…死ね……。」


 「人生諦めが肝心です。そして人生を今終わらせて下さい。」


 「とりあえず、殺るかっ!!」


 だんだん収拾しゅうしゅうがつかなくなって来た。引かないザックに対して、美少女3人組は戦闘態勢に入っている。

 面倒臭くなったので仕方無くカインが……。


 「[天衣無縫《蒼天》]。」


 突如、ミストラルの執務室に闘神が出現した。

 凄まじい威圧によって、空間が歪み始める。城全体が振動し始めており、執務室内はカインの覇気で満たされている。


 「お前ら話を聞け。いいな?」


 有無を言わせない状況で、強制的に黙らせるカイン。4人とも首を縦に振って了承してようだ。

 やっと話になりそうなので、覇気の放出をやめるカイン。


 「ふぅ…。やっと説明できるな…。」


 「……物凄いの圧力だったねぇ。城全体が歪むほどの力だったよ。」


 「まぁ、これが2年間の修行の成果だ。」


 「なるほど…。エレメント無しでもあそこまで力を出せるとはねぇ。古代の術を使っているのかい?」


 「そんな所だ。その話については今度ゆっくり話そう。

  話を戻すけど、問題の発端はメルトと俺が家族の件だったな。」


 家族が婚約話に飛躍して、そこからザックが待ったをかけた事から始まったのだ。てか、完全にザックの責任である。


 「ようやく説明ができるねぇ。

  カインとメルトが婚約する話じゃないんだよ。あたしとカインが親子になったという話だ。」


 「そうだ。血は繋がっていないけど、俺と母さんは親子になった。だから母さんの妹の子供であるメルトとも家族という訳だ。」


 「今日は不在だったけど、妹のユセルにも後で説明するつもりだ。だからメルトとカインには家族として仲良くやってもらいたいねぇ。」


 今日はミストラルの妹は不在だった。ユセル・ナタリシアは、ナニカが近辺に出現したので討伐に向かったらしい。もう討伐は完了しており、明日の朝には戻って来るそうだ。


 「私の家族……お兄ちゃん?」


 無表情でカインを見ながら首を傾げるメルト。何故かカインにお兄ちゃんと言っている。


 「俺がお兄ちゃん?……別に弟でも構わないけど。」


 「嫌…。カインは私のお兄ちゃん…。」


 弟でもと言うカインを否定して、メルトのお兄ちゃんと確定するカイン。メルトはお兄ちゃんと呼びながら、カインの膝の上にちょこんと座った。


 「………何故、俺の膝の上に?」


 「妹は、お兄ちゃんの膝の上に座るの…。」


 「し、知らなかった……。」


 淡々と告げるメルトの言葉を真実として受け止めるカイン。もちろん、そんな兄妹は普通じゃない。


 「ふふっ、さっそく仲良くやっているみたいだねぇ。これで安心してメルトを任せられるよ。」


 「ま、待ってくださいっ!!!この下民がメルトの兄なら、私の兄にもなってしまうじゃないですかっ!!!」


 上手くまとまって来たのに、カインを指差しながら抗議してくるザック。まだ婚約の話を諦めていないようだ。


 「あんたねぇ。まだ婚約を諦めていないのかい?」


 「当たり前ですっ!!!今日もその事でナタリシア城へとやって来たんですっ!!」


 「ユセルにも断られたし、メルトも嫌だと言っているんだよ。いいかげん諦めたらどうだい?」


 本日、ザックが城に来た理由はメルトとの婚約をお願いする為だった。なので、男でありしかも容姿が超端麗のカインが城へとやって来たから、メルトの婚約者候補と勘違いして絡んでいったわけだ。

 それがミストラルの事を母と呼んでいるので、余計に婚約者候補だと思ってしまったらしい。


 「メルトは私に相応しい女です。容姿も身分もとても釣り合っていると思います。」


 かなり上から目線で告げるザック。余程自分に自信があるみたいだが……。


 「私、結婚するならお兄ちゃんがいい…。」


 「な、何だとっ!!平民とは結婚できないぞっ!!」


 この世界では、自分と身分が同等か1つ上下の相手としか結婚できない。なので、天族のメルトには天族、皇族、王族の者しか結婚できない。


 「そもそもこの下民がメルトと家族と言うのも、納得出来ないっ!!!この場には相応しくない存在だっ!!」


 「私のお兄ちゃん…相応しい存在…。」


 カインの膝の上に座っているメルトは、その状態のままカインに抱きついた。相変わらず無表情なメルトだが、可愛いので頭を撫でるカイン。

 すると、表情は変わらないが嬉しそうにも見えるメルト。


 「私の婚約者に何をやっているんだっ!!!その汚い手をメルトから離せっ!!そもそも離れろっ!!」


 そんなカインとメルトのやり取りを見ていたザックは、ついに我慢の限界を超えた。叫びながら2人の元へ詰め寄っていく。

 そんなザックに対して、ソフィアが道を塞ぐように短剣を構えて前に立った。


 「これ以上カイン様を侮辱するなら殺します。」


 「どけっ!!私はお前に用はないっ!!」


 ザックも対抗しようとするが、今回は剣を持っていない。ミストラルの執務室に入る為、武器は預けているのだ。ソフィアが持っているのは、メイド服のスカート中に短剣を何個か隠し持っているからである。


 「主よ、また始まったぞ。我も行こうか?」


 「はぁ…またか…。とりあえず、アルは大人しく待機な。

  なぁ母さん、何とかしてくれよ。」


 「あたしの部屋で戦闘をしようなんていい度胸だけどねぇ。

  ザックは周りが見えてないんだよ。自分の思った事は正しいと勝手に判断する、皇族として生まれ、自分の意見がずっと通って来たからこうなったのかねぇ。」


 「……ミストラル、ザックはただのバカ…。」


 「それも間違いでは無いねぇ…。」


 皇族なので自分を否定する存在が周りにいなかったザックは、常に自分の思う事が正しいと判断してしまう。そんなザックを、メルトとミストラルは単純にバカであると判断する。


 「で、そのバカはどうするんだ?」


 「元々、ザックはメルトと一緒に修行の旅に行く為に来たけどメルトに一目惚れしたらしい。出来れば一緒に護衛して貰おうかと思ったんだけどねぇ。」


 「なるほど…。一緒に旅をしてザックの認識を改めさせるのも有りだな。」


 「お兄ちゃん、優しい…。」


 「なんか単純な奴に見えて来てな。バカな奴ほど心変わりも早いんだよ。」


 「なるほどねぇ。バカは直ぐにコロっといきそうだねぇ。」


 「バカは、どこまでいってもバカ…。」


 「ザックはバカなのかっ!!笑えるっ!」


 ザック=バカが確定してきたところで…。


 「誰がバカだぁぁあーーっ!!!!さっきから全部聞こえているからなっ!!!好き放題言いやがってっ!!」


 すぐ目の前で、バカバカ言われているのだから聞こえない筈がない。戦闘が始まっていた訳じゃなく膠着状態だったので、余計に静かで聞きやすかったのだ。

 だが、この場に居る全員がザックを無視する事に決めた。


 「………………話を進めようか。まだ、自己紹介しか出来ていなかったねぇ。今回の護衛は修行の旅という事だが、行ってもらう場所があるんだよ。」

 

 「修行場所が決まっているのか?」


 「ナタリシア家が代々行っていた場所で、そこで修行が終わったら一人前として認めてもらえるんだ。」


 いわゆる儀式みたいなものである。ナタリシア家の者が、七星天兵団の入団前には必ず訪れていた場所らしい。


 「なるほど、ナイトリーツ家にも似たような儀式がありました。

  その場所はここから近いんですか?」


 「近いけど遠いところだねぇ。近くにある森へと入るんだけど、目的地は一番奥にある。」


 「なるほど、ただの森ではないみたいだな。」


 「その森は、『深淵の樹海』。

  500km以上ある森で多種多様な生物や植物が生息している。普通の者が入ったら出て来られなくなるほど広くて深い森だ。」


 「おお、あそこかっ!!我も一度行った事がある。さんざん罠にかかって大変だったぞっ!!」


 「アルは、自ら罠にかかりそうだよな…。」


 深淵の樹海は1万年以上前から存在しており、広大な森に様々な生物や植物が存在している。自然の罠や強力な魔物など、非常に危険な場所である。


 「……奥で目的の物を入手出来たら終了…。」


 「メルトの言うとおりだ。深淵の樹海の奥には、『神羅石』と呼ばれている鉱石がある。特別な鉱石で、古代武器には良く使われている物だ。ナタリシア家は代々それを使って、自分の武器を作り一人前となる。」


 「……だいたい分かった。危険な森だけどその分、色々な修行になりそうだなっ!」


 内容を理解したカインは、深淵の樹海の冒険にワクワクしてきたようだ。色々な鍛錬を積むことが出来る最適な修行場所だと判断する。


 「カイン様は相変わらずですね。ですが、私もカイン様を精一杯サポート致しますっ!」


 「お兄ちゃん…私守って…。」


 「ああ、護衛は任せろっ!!戦闘についての陣形は後で話し合おう。ちゃんと準備して行かないとな。」


 「うむっ!我も久々に暴れてやるかっ!!」


 「いや、お前は常に暴れているからな……。」


 この駄犬が大人しくしているのは、寝ている時のみだ。戦闘以外では役に立たない…。


 「みんな、やる気になったみたいだねぇ。

  1週間後に出発してもらうから、それまではフォレスタードで観光でもしてくるよいいよ。」


 「私が、案内する…良い所知ってる…。」


 「よしっ!じゃあ明日は観光だっ!!」


 当面の予定は決まった。1週間後の出発までに色々と準備や観光する事になったカイン達は、ようやく自分の部屋へと向かうのだった…。


 そして部屋の隅で項垂れてるエルフが1人…。


 「……あんたはいつまで居るんだい?」


 1人だけ執務室に残されたザックは、早く出ていくようにミストラルに言われるのだった……。

次回、メルトの母、ユセル帰還…。


読んで頂きありがとう御座いました┏○ペコッ

ブクマ登録、感想評価もよろしくお願いします。

誤字脱字などのご指摘ありましたらお願いします(;•̀ω•́)

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