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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
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27話 クズ野郎

ランクAの試験内容は…。

 カイン達は、その後もイジェルの指名依頼を着々とこなして行った。

 ランクAのクエストばかりだったが全く問題無く達成し、残るはランクA冒険者になる為の試験のみだ。

 現在カイン達は、ギルドマスターイジェルの部屋に居た。


 「はぁ…。全部で3ヶ月かかると思っていた指名依頼を、たった1週間で達成か…。」


 イジェルは用意していたクエストを簡単に達成されて逆に呆れている。達成が早すぎて、用意するイジェルの方が疲れたぐらいである。


 「次は試験ですよね?指名依頼とは違い、手応えのある内容だと嬉しいです。」


 「指名依頼は十分手応えのあるクエストだった筈だ……それを…。

  はぁ…もう試験いらないと思うのはわしだけか?」


 「イジェルよ…私もそう思う…。」


 イジェルの意見に賛同するチンバン。結局チンバンも、その後の指名依頼を全て付き合っていた。しかし、全く出番が無く傍観者として見ていただけで終わった。

 そして、なにより……。


 「黙れチンバンっ!俺はちゃんと試験を受けてから、ランクA冒険者になるからな。」


 模擬戦以降、カインはチンバンに敬語を使うのを止めた。仲良くなったのもあるが、チンバンの子鹿で株が大暴落したのも原因の1つだ。


 「それなら張り切らない程度で頑張れ。

  私から言えることはそれだけだ。」


 「大事な昇級試験を張り切らないでとは……。

  しかし、わしの立場からでも何も言えん。」


 カインが張り切ったら色々と消滅しそうなので、あまり強くは言えないチンバンとイジェル。

 

 前回の闘神VS神獣の戦いでは、ナタールの周辺に無数のクレーターを作り上げた技によって、ナタールに住む者がナニカの襲撃では無いかと大騒ぎしたのだ。

 それなりに距離はあったのだが、爆音はナタールにまで届いていたので、住民は震えながら過ごしていたのである。

 なんとかイジェルの介入により終息したが、ナタール滅亡の噂まで出ていた程の大事件となっていた。


 「まだあの時の事を引きずっているのか?我と主にとっては大した戦闘では無かったのだが……仕方無い、次からはもう少し静かにやろう。」


 「「そういう問題ではないっ!!!!頼むからお前らは気楽に戦うなっ!!!!」」


 アルディオの発言に猛抗議するチンバンとイジェル。模擬戦で、あのレベルの戦いをナタールの近くでされるのは、もう勘弁してほしいのだ。


 「俺も2年間の修行で常識が少しズレてしまったみたいです。まぁ、少しずつ修正して行きますよ。」

 

 「どんな修行したらそうなるんだ………。」


 普段の鍛錬を知っているチンバンは、想像を絶するだろう修行に呆れている。普通の人なら1時間も保たない修行を、カインは2年間休まずにやっていたので無理も無い。


 「まぁ…その件は自重してくれ。

  やっぱランクAの昇級試験はソフィア嬢だけ実施する。危ないカインとアルディオ嬢は免除だ。」


 「何故だっ!試験とやらを”殺る”のでは無かったのかっ!!」


 「アル…お前の言っている”やる”の意味が違うと思う。試験は討伐対象じゃないからな…。」


 普段、話を聞いていないアルディオが試験にやる気をみせる事に、カインはまた勘違いをしているのではと考える。この駄犬は殺る事になると急に話に入ってくるからだ。


 「あんな戦い出来る奴等に対する試験など無いわっ!!!頼むから大人しくしておいてくれっ!!」


 叫びながら懇願するイジェル。

 彼の立場上これ以上の厄介事は勘弁してほしいのだ。

 

 「確かにカイン様とアルディオは必要ありませんね。その点、私は丁度良い実力です。」


 「ふぅ…。確かに俺等には必要無いか。

  最近になって、ようやく常識が帰って来てくれたようだ。」


 「………常識が帰って来てくれたって…なんか常識が今まで家出いえでしていた様な言い回しだな…。」


 よく分からないカインの言い回しに反応するチンバン。確かに常識は家出いえでなんてしない。


 「だが、我も参加したいっ!そんな事で参加出来ないなら世界の常識を我が変えてやるっ!!」


 「意味が分からん…。てか、アルが世界の常識作ったら直ぐに世界滅亡するからな。」


 アルディオがよく分からない言葉を口走っている。このまま神獣が暴走すれば大変な事になるだろう。

 そんなアルディオを見てチンバンが叫ぶ。


 「このままでは奴が暴走してしまうぞっ!!!なんとかしてカタール崩壊を防ぐんだっ!!私達だけでは止められないっ!!!」


 厄災級の魔物みたいな扱いを受けるアルディオ。日頃の行いは悪いが、非常に酷い言われようだ。

 

 「主よ…我の扱いがナニカや魔物と一緒なのだが…。」


 「よしよし…。チンバンは酷い奴だから仕方無い。」


 敬われる神獣の筈なのに…と落ち込むアルディオ。自慢の耳と尻尾も萎れている。

 可哀想なのでカインが撫でてあげる。


 「まてまてまてっ!!!確かに過剰に反応してしまったが、私がイジメているみたいでは無いかっ!!!てか、酷い奴だから仕方無いって何だよっ!!」


 「噛犬ごうけんさんは〈クズで性格の悪い、顔だけの最低な存在なので仕方無い〉って事では?」


 「ちょっ、どんな奴だよっ!!!!いくら何でも言葉を付け足し過ぎだっ!!

  ……カイン、アルディオ、違うよな?」


 「「その通りだっ!」」


 「合ってるのかよぉぉおおーーっ!!!!」


 チンバンのクズ野郎が確定した。女の子(5000歳)には、ちゃんと優しくしないとダメなのだ。

 味方が居ないチンバンはイジェルに助けを求める。

 

 「イジェル…フォローしてくれ…。」


 「………ならこうしようクズ野郎。

  全員試験を実施するが、討伐ではなく護衛をやってもらう。それなら戦闘だけじゃないからカインやアルディオ嬢も参加できるし試験にもなる。」


 「なるほど、確かにこいつ等は戦闘面には問題無い。だが、冒険者は討伐が多いだけで護衛もある。特に俺らランクA冒険者にもなると、指名依頼で護衛を頼まれる事もあるしな。

  って、お前までクズ野郎言うなぁあーっ!!!!」


 フォローより追撃したイジェルは、試験に対する解決案を提示した。良い案に納得していたチンバンだったが、初めの言葉を思い出して叫んだ。


 「それなら俺とアルも参加出来ます。さすがイジェルさん、クズ野郎と違って頭も良いですね。」


 「本当だな。どっかのクズ野郎とは全く違う。」


 「とりあえず、クズ野郎さんは死んで下さい。」


 「…………何故こうなった…。」


 全員から集中砲火を受けるチンバン。乙女(5000歳)を敵に回してはいけないのだ。

 そんなチンバンを無視して話を続けるイジェル。


 「まぁ、護衛依頼の件だがランクAに見合った依頼をやってもらう。用意するのに時間がかかるのから、詳しくは後日説明しよう。」


 「分かりました。ランクDの護衛依頼なら経験ありますけど、ランクAの護衛依頼は初めてなので楽しみです。」


 ランクDの護衛依頼は、商人を護衛して町から町に届けるという内容だ。しかし、今までは転移門が使えたので、金に余裕の無い商人からしか依頼は無かった。

 現在は転移門を使えないし、ナニカまで出現する。よって、護衛依頼もかなり増えている。


 「まぁ、お前らなら余裕だろ。……いや、お嬢ちゃん達は護衛とか向いて無さそうだな。」


 「私はカイン様以外守りません。」


 「我は、とにかく全てを殲滅するぞっ!」


 元々、アルディオとソフィアにはカイン以外はどうでもいい。ソフィアはカイン以外は守る気が無く、アルディオに関しては通常運転だ。

 これでは、まともに護衛など出来ない。


 「………護衛の日までに説明しておきます…。」


 「いつも通りだな……がんばれ…。」


 カインの苦労は耐えない。だが純真なだけで、可愛い従者達なのでカインは仕方無いと思っている。

 

 色々と問題はあったが、その日は解散となった。そして、クズ野郎は1日中無視され続けたのだった…。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 結局、イジェルに呼ばれたのは1週間後だった。現在はギルドへ向って行く途中だ。

 今日まで、カインは護衛というものを従者達に叩き込んだ。そして、5日かけてようやく理解したようだ。


 「要するに、我らの邪魔する者は皆殺しをするのが護衛というのだなっ!」


 「試験と言えども私はカイン様以外は守りません。今回は、仕方無く第二優先で守りましょう。」


 「…………これが精一杯か…。」


 なんとか及第点で護衛が出来そうなレベルになった。後はカインが上手くやるしか無い。

 なんだかんだ言っても、カインが命令すれば絶対に言う事を聞くアルディオとソフィア。だが、戦闘以外でカインは命令をしない。従者達がこんな性格なのは、カインが甘やかしているのも原因である。

 それでも、カインにとっては可愛い従者達なのだ。


 「とにかく、俺指示した通りに行動してくれ。」


 「うむっ!」「分かりましたっ!」


 そんな話をしながらもギルドに到着した。

 ギルドに入ると直ぐにイジェルの部屋に向かう。


 コンコンッ!「カインです。」


 「おう、入っていいぞっ!」


 部屋の中からイジェルの声が聞こえたので、中に入って行くカイン達。

 すると、部屋の中にはイジェルと長い金髪で翠眼を持つエルフの美女が居た。


 「っ!!!!」


 そのエルフの女を見て、カインは驚く。 

 従者達はそんなカインを不審に思い。


 「主よ、あの女に何かされたのか?」


 「カイン様?……貴方何者ですか?」


 アルディオとソフィアはエルフの女を警戒し、殺気を放ちながら質問した。

 そんな2人の様子を見ていたエルフの女は…。


 「はぁ…。相変わらずカインの側にいる女の子は怖いねぇ。それだけ愛されているって事かねぇ。」

 

 2人の殺気を正面から受け止めても平然とした様子で話し始めるエルフの女。しかし、少し怒気を感じる。

 そんな彼女に対してカインは…。


 「久しぶり、ミスティさん。こんな場所で再会するとは思わなかった。」


 「そうだねぇ、2年ぶりか…。あんたには色々と言いたい事があるけど、とりあえず座りなよ。」


 「俺も話したい事があるけど、その話は後でもいいか…。アル、ソフィ、殺気を放つのは止めろ。はやく座るぞ。」


 「…うむ。」「……分かりました。」


 殺気を抑えてカインの命令に従うアルディオとソフィア。しかし、ミスティを警戒したままだ。

 そして、カイン達は椅子に腰掛ける。


 「…………わしの部屋なのに居づらい…。」


 ピリピリとした空気の中、自分の部屋なのに出て行きたくなるイジェル。

 こうして、カインは2年ぶりにミスティと再会したのだった……。

次回、ミスティの思いやり。


読んで頂きありがとう御座いました。

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