表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
27/65

23話 ギルド再び

冒険者カイン…。

 ラダサトリ王国からランダムで転移をしたカイン達。

 現在、その3人は森の中に居た。


 「カイン様、周辺に敵影はありません。」


 「はぁ…。今日は運が悪いな。」


 カインは思わず溜息をついた。適当に転移をした結果、森の真ん中に転移したみたいだ。

 それも、今回で転移30回目である。


 「前回はラダサトリ王国に1回で転移出来たが、今日はハズレばっかりだな。

  特に海の中に転移した時は死ぬかと思った。」


 「主はまだ良いっ!!我は泳げないから大変だったっ!」


 一度、海のド真ん中に転移してしまった。それでカイン達はいきなり息ができなくなった。

 特にアルディオは泳げないので、慌ててしまい生死を彷徨ったのだ。


 「お前…本当に戦闘以外に何も出来ないんだな。」


 「うむっ!その通りだっ!!」


 アルディオはドヤ顔で大きな胸を張って答える。可愛いのだがカインは別に褒めてない。


 「………5000年間アルは何をしていたんだ?」


 「ほとんど寝て過ごしていた。時々、サラナ山に訪れて来た人間を助けた。そして、寝た。その次の日も寝た。そして寝て、寝た。」


 結局アルディオは寝てばかりである。カインの知っているアルディオは素の状態らしい。

 つまり、役に立たない駄犬。


 「これはツッコんだら負けだな…。

  てか、ずっと寝ていられる睡眠欲には感心する。」


 「それに引き替え、カイン様は全く寝てませんよね?私がカイン様と出会ってから一度も寝ているのを見た事がありません。」


 「この前、ソフィとも一緒に寝ただろ?」


 「あ、あの時は緊張して、中々寝られませんでした。しかも、カイン様は途中で抜け出して鍛錬に行ってましたよね?」


 ラダサトリ王国では、宿の部屋は別々だったが、ソフィアが一緒に寝ても良いかと聞くとカインは了承した。(もちろん添寝のみ)

 とても喜んだソフィアだったが、逆に緊張して寝る事は出来なかった。結局カインに頭を優しく撫でて貰い、ようやく寝る事が出来たのだ。

 だが、ソフィアが朝起きた時、隣にカインは居ないしベットも冷たかった。


 「ん?俺は不眠術を習得したからな。

  睡眠など必要ない、鍛錬の邪魔だっ!」


 「な、なんて術を習得しているんですかっ!!!人の三大欲求の一つを完全に無視するとは……ストイックバカ恐るべし…。」


 「お前とアルにはバカと言われたくない…。」


 「何を行っているっ!!我はバカでは無い。バカと思った奴がバカなんだっ!!」


 「………お前が一番わからん…。」


 『非常識バカ』にバカと言われて納得出来ない『ストイックバカ』。そして、役に立たない『ただのバカ』の3人は、結局みんなバカだ。


 「まぁ、そんな事は別にいい。

  よしっ!そろそろ転移するぞっ!」


 「分かりました。次こそはお願いしますっ!」


 「……いや、ランダムだから。」

 

 結局カイン達は、今日一日を転移に使ってしまった。転移50回を過ぎて、ようやく街に辿り着くのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 現在カイン達は転移先の『ブリアクライ連邦』に位置する都市の『ナタール』に来ていた。

 ブリアクライ連邦とは、様々な王族が一緒に管理している土地で天族ナタリシア家の圏内である。

 ナタリシア家の圏内は、一国だけが管理している土地は少ない。そして、エルフ族やドワーフ族が多いのが特徴だ。

 このナタールもエルフ族やドワーフ族が多いのだが、最大の特徴は冒険者の数が多い事だ。七星天兵団よりも数が多く、ナニカの討伐も冒険者が行っている冒険者の都市である。


 「まさか、転移だけで夕方になるとは…。

  だが、中々面白そうな都市に着いたな。」


 カインは辺りを見渡しながら言った。目に見える範囲でも、武器や防具を装備している冒険者が多いのが分かる。


 「ナタールは冒険者の都市と呼ばれているみたいですね。それだけ強い人も多くいそうです。」


 「そうだなっ!我もぜひ闘ってみたいっ!」


 「………たまには観光や買物とか可愛い事は言えないのか…。」


 カインは女の子らしからぬ二人に少し呆れていた。

 ずっと一緒に居たエルミナとスズのイメージが女の子として残っている。なので、カインの頭にある普通の女の子像はあの二人だ。

 しかし、そんな女の子像から、かけ離れているアルディオとソフィア。


 「わ、私は観光や買物をしたいと思ってましたよっ!!」


 「じ、実は我も同じ事を考えていたっ!!」


 少しでも可愛いとカインに思われたい二人がその言葉に反応した。こういう所は可愛い従者である。


 「なんか俺が言わせたみたいだな…。

  まぁいいや、今日はもう遅いから明日から観光に行こうっ!」


 「はいっ!」「うむっ!」


 これで明日の予定は決まった。ナタールではのんびり観光や買物をして過ごす事になるだろう。……だろう。


 「とりあえず、朝はギルドに行くか。ラダサトリ王国で白金貨10枚も消費したから換金もしないとな。」


 「ギ、ギルドだとっ!!!……ガクガクブルブル…。」

 

 ギルドと聞いて突然震えだすアルディオ。

 前回のトラウマが蘇るっ!!


 「……お前の勘違いだからな…。」


 カインは呆れつつも可哀想なので撫でてあげる。狼耳がピクピクしてきた。


 「うむっ!これでギルドには負けんっ!!」


 「……ギ、ギルドで何があったんですか…。」


 ソフィアは、神獣が震えるほどの出来事がギルドで起こったのだと勘違いをする。

 ギルドがした事はカインを疲れさせただけである。


 「ソフィ無視しろ。お前まで同じ状態になったら2倍で疲れる。」


 「カ、カイン様が疲れるなんてっ!!!」


 カインの言葉を聞いたソフィアは驚愕の表情だ。

 この二人にはカインが疲れない超人だと思われている。


 「……お前ら、俺をなんだと思ってるんだ…。」


 カインを精神的に疲れさせる筆頭の従者達の発言に納得出来ない。

 カインが疲れる一番の原因はアルディオとソフィアである。


 「……まぁ、いいや。ギルドには換金するだけだから、今回は直ぐに出るからなっ!二人とも絶対に面倒だけは起こすなよっ!!」


 「はいっ!」「うむっ!」


 カインの忠告に勢い良く返事する従者の二人。

 まぁ、元気の良い可愛い従者達だ。


 「はぁ…。返事だけは一人前だな…。」


 いつも返事だけで良い結果になっていない。カインは不安になりながら、明日は何も起きないように願うのみだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 「臭いおじさんばっかりですねっ!!しかも、現在は大した事無い実力の人しか居なくて残念ですっ!」


 「このギルドもキモい顔の奴が多いなっ!やっぱり、我は主が一番好きだっ!!みんな主を見習うんだっ!!」


 ギルドに入って早々に暴言を吐く従者二人。

 入る前に震えていた二人を撫でてあげて、やる気にしたのが逆に良くなかったみたいだ。


 「………もう、勝手にしてくれ…。」


 バカ二人に早くも疲れたカイン。もはや、やけくそである。

 

 「はははっ!自殺希望者3名ご案内っ!!」


 「ガキどもっ!!俺に喧嘩売ったからには覚悟しろよっ!!」


 「俺は臭くないっ!!俺はキモくないっ!!」


 「うぉぉぉーっ!!美少女二人、好きだぁーっ!!」


 美少女二人の暴言にギルド内は一気にカオスになった。

 何人か喧嘩を買った者達と変態がカイン達と戦闘になった。大混乱の戦闘だったが美少女二人が無双。カインは向かって来たバカを気絶させるだけにした。

 結局、何人かが治療院送りとなりギルドマスターがやって来た事で、戦場だったギルドはようやく平和になるのだった…。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「わしが止めに入らなかったら一体どうなってた事やら…。」 

 

 今の発言はギルドマスターのイジェルだ。ドワーフ族の男で元ランクAの冒険者でもある。

 部屋の下が騒がしいので慌てて来てみれば、血だらけの人が空を舞っていた。

 イジェルは地獄絵図を見たのだった。


 「まぁ、俺らも手加減していたので問題は無いですよ。しかも、攻撃して来たのはランクD以下の冒険者なので、そこまでの戦闘になっていません。」


 「そうですっ!私達の足元にも及ばない、臭いおじさんばかりでしたっ!!」


 「うむっ!キモい顔した男がキモい目で襲い掛かったのを撃退しただけだっ!」


 上手くまとめようとしていたカインだが、まだ暴言を吐き続ける従者二人。とんだけギルドが嫌いなんだよ。てか、従者達はカイン以外の男に対する当たりがきつい。


 「お前らは反省しろやっ!!!!二度と一緒に寝てやらんぞっ!!!」


 「「……………。」」


 怒られて急に黙るアルディオとソフィア。

 魔法の言葉によって、ようやく大人しくなった。 


 「なんか、お前さんも大変だな…。」


 カインに同情するギルドマスターのイジェル。

 自分の立場的にカインの気苦労がよく分かるみたいだ。


 「まぁ、大変ですね……。でも、この二人は真っ直ぐなだけで悪意があってやってる訳じゃない。だから、多少の面倒は仕方無いと思っています。

  それに、可愛い従者の面倒を見てあげるのも主人としての勤めです。」


 「カ、カイン様っ!!」「あ、主っ!!」


 カインの発言に感動しながら抱き着いていくアルディオとソフィア。耳と尻尾をブンブン振っている。

 カインはそんな従者の様子に微笑みながら、二人の頭を優しく撫でてあげた。


 「えへへ…。」「うむ、心地良い…。」


 ものすごい笑顔で喜ぶ素直で可愛い従者達だ。


 「中々見せつけるねぇ。良い主従関係だな。」


 「まぁ、俺達もまだまだこれからですけどね。」


 イジェルの言葉に少し苦笑しながら答えるカイン。

 まぁこれからも苦労は続くのだ。


 「それは、これからも頑張れっ!

  ……そろそろ本題に入るぞ。今回の原因はお前らにもあるけど、襲い掛かったのは向こうが先だから罰金だけで済ます。まぁ、壊した物の弁償だな。

  それと、お前らは本当にランクCか?少し戦闘を見たが、明らかに戦闘力はもっと上だ。」


 イジェルが部屋に呼んだ本題について話し掛けた。

 壊した物はアルディオとソフィアが殆ど破壊したので、罰金は仕方無い。だが、問題になったのはカイン達の冒険者ランクである。


 「俺は2年間篭って修行していたので、クエストを全然受けていないんです。だから今のランクは修行前のランクって事ですね。

  それに、ソフィアも最近冒険者登録したみたいなのでランクE。アルディオは登録自体していません。」


 ずっと寝ていただけのアルディオは、冒険者登録を5000年以上して来なかった。

 そして、ソフィアもナイトリーツ家を出発した後で冒険者登録をしたので、大したランクまで上がっていない。

 

 「なるほどな……ランク詐欺だな。」


 「詐欺って人聞き悪いですね…。」


 「いやいや、ランクEやCと思って戦ったら実はランクAの戦闘力とか詐欺だろ。

  お前らは見た目も若いし、美男美女だから凄い目立つしな。さっきみたいに暴言を吐いたら一発で問題になる。いや、お前らの場合見た目だけでも絡まれる。」


 カイン達の見た目は、かなりの問題だ。

 カインは身長は180cmに近く、顔が超が付くほど良い。だが、14歳なので少し幼くみえて子供扱いされる事もある。(男のみ)

 アルディオは身長150cmくらいだが、胸は凄い大きくて顔も美少女。狼耳や蒼い髪もとても綺麗であり、5000歳を超えているとは絶対に思えない外見だ。

 ソフィアは身長168cmでスタイルが良く美少女。それに狐耳や金髪の長い髪に真紅の瞳はとても目立つ。しかも、常にメイド服を着ているので更に目立っている。

 この美男美女の集まりは面倒を呼びやすいのだ。


 「確かにアルとソフィは可愛いので、かなり目立ちますね。だから、その二人のランクが低いと余計に面倒が増えるという事ですか?」

 

 「いや、お前も十分過ぎるほど目立っているからな…。まぁ、とにかくそういう事だ。

  俺が特権を使って融通してやるから、指名依頼を受けて早くランクを上げてくれ。」


 イジェルはギルドマスターの特権を使って、カイン達のランク上げを融通してくれるみたいだ。

 カイン達にも良い話ではある。


 「良いんですか?それに、試験とかありますよね?」


 「あぁ、ギルドとしてもお前らみたいな実力者にはもっと上に立って欲しいからな。とりあえず、ランクAになれ。

  その為にお嬢ちゃん達のランクをCまで引き上げる。そして、お前と一緒に指名依頼を何件か受けて貰う。何件か受けて達成したらランクBにしてやるから、その後ランクAになる為の試験を受けろ。」


 「アルとソフィをいきなりランクCですか…。」


 ハッキリ言って、今のイジェルの話は流石に融通し過ぎている。少し裏があると思って良いだろう。

 

 「………警戒してるな。まぁお前の気持ちは分かる。凄い融通してるからな。だが、身分の高い奴なら結構やってる手段だ。」


 「なるほど…。分かりました、俺達の為にもなるので是非よろしくお願いします。」


 「おう、任せろっ!書類を作成したらお嬢ちゃん達のギルドカードも更新してやろう。それで、明日以降は俺の指名依頼を受けるんだっ!」


 「はい、分かりました。」


 カインはイジェルが自分達の事を皇族と勘違いしていると分かった。

 いつも勘違いされるがそれは仕方無い。実際カインは超強いし、装備も容姿も非常に優れている。そして、従者二人も強くて容姿や装備も同じく優れているので、普通の人なら絶対に勘違いしない訳が無い。

 よく間違われるが、皇族はカインではなく従者の方なんだが。

 

 上手くまとまってきたイジェルとカインの会話だったが…。


 「主よ何が分かったのだ?美味しい食べ物か?」


 「観光スポットでも教えてもらったのですか?」

  

 あれからずっとカインに頭を撫でられており、会話を全く聞いていなかったアルディオとソフィア。結局何も聞いていないいつも通りの二人。カインの命令以外は殆ど聞いていないのだ。

 その言葉でカインは思い出した…。


 「観光や買物の事を完全に忘れてたぁーっ!!」

 

 この場所でものんびり観光をする訳には行かなくなったカイン達。3人の休まる日は、一体いつやって来るのだろうか……。

次回、指名依頼…。


読んで頂きありがとう御座いました。

ブクマ登録、感想評価もよろしくお願いします( ・ิω・ิ)

誤字脱字、アドバイスかありましたらご指摘をおねがいします┏○ペコッ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ