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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
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19話 自慢のお耳

金狐と蒼狼…。

 ギルドへ素材と魔石の換金へと向かったカイン達。

 2年以上ギルドに行っていなかったので、久しぶりなカインと初めてのアルディオ。


 「おお、ここがギルドかっ!むさ苦しい酔っ払いのおっさんばかりで臭い所だなっ!!キモい顔した男ばっかりだっ!」


 ギルドに入って早々、大声で暴言吐いて周りを挑発するアルディオ。

 

 「おいっ!!正直すぎるわっ!!」


 急に暴言吐いた神獣に、おもわず肯定して追い打ちをかけるカイン。

 突然の美男美少女の登場に呆けていた男達。だが、思いっ切り悪口を言われて黙っていられるはずが無い。


 「おいおいおいっ!!何者か知らねぇが、ちょっと調子に乗っているんじゃねぇか?」


 「まだガキの癖に、こんな所に来てんじゃねぇーよ。格好は良いけど、痛い目見る前にお家に帰りなっ!」


 「はははっ!!お前らガキ共がビビってるじゃねぇかっ!半殺しくらいで勘弁してやれよっ!」


 あっという間に、男共に囲まれるカイン達。周りで見ている者も煽っているようだ。

 恒例行事に面倒臭がるカイン。


 「えっと。調子に乗ってすみませんでした。換金したら直ぐに帰りますので、この辺で勘弁を。」


 さっさとこの場を離れようとするカインだったが、先頭に居た男は逃さない。


 「待てよっ!!あんな発言して無事に出られると思ってんのか?少し調子に乗りすぎたな。」


 「確かにこちらも悪かったです。まぁココはギルド内ですし穏便に行きましょう。」


 なんとか沈めようとするカイン。

 しかし、男共は引く様子はない。酔っているのもあり、完全にやる気みたいだ。


 「主よ…殺れば良いのでは無いか?」


 「あのな、こんな所で修行の成果を披露したくは無いんだ。別に殺らなくても穏便に済ます事も出来る。」


 二人でコソコソと物騒な事を話す。カインはせっかくの修行の見せ所はココじゃないと、穏便に済ませようとする。


 「おいおいっ!!なにコソコソ喋ってんだよっ!!謝ってももう遅い、男のお前は半殺し。そして、そこの巨乳少女は楽しませて貰うか…へへっ。」


 嫌らしい笑みを浮かべた男が、アルディオの身体を見ながら言ってきた。

 その様子を見たカインは…。


 「よし、殺るか。」


 即決して男に徐々に歩み寄るカイン。その様子を見て男がバカにしながら告げる。


 「はっ!バカな奴だ。死ねぇぇえっ!!」


 先頭にいた男が腰の剣を抜きカインに斬りかかる。

 しかし、カインは瞬時に見切り、半歩下がって避ける。そのカインの目の前、数cmの所を男の剣が通り過ぎる。

 剣が通り過ぎたのを確認した後、カインは一瞬で男に詰め寄り相手の左足を踏み付けた。いや踏み抜いた。


 バキッ!!


 大きな音を立てて、床と一緒に男の左足が壊れる。


 「ぎゃぁぁぁっ!!俺の足がぁっ!!」


 自分の足が床にめり込んでいる状態で、苦痛な表情を浮かべ叫び始める男。

 その様子を見て、我に帰った他の男共がカインに襲い掛かる。


 「て、てめぇっ!!ぶっ殺してやる。」


 「調子にを乗るなぁっ!!!死ねぇっ!」


 今度は二人同時にカインに斬りかかって来た男共。しかし、剣を振り下ろす前にカインは男に詰め寄り、左足を踏み付ける。そして、もう一人の男の左足も踏み付けた。


 「ぎゃぁぁぁっ!!」「痛てぇえーっ!!」


 叫び出した男達とは違い周りの人達は、3人の男の足が床にめり込んでいる状態に唖然としている。


 「まだ、やるのか?」


 カインが問い掛けたが、それに応える者は居なかった。

 その様子を確認したカインはそのまま受付へと向かった。


 「主よ…穏便はどうした?」


 「アルのことを言われて、ついカッとなった。」


 「う、嬉しい…。」


 少し惚気ながら受付に向かうカインとアルディオ。

 その様子を見ていた者達は…。


 ((((絡まなくて良かった…。))))

 ((((カ、カッコいい…。))))


 自分の足の破滅を防いで安心する男達。

 そして、カインのカッコよさに見惚れる女達だった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「いやぁ、カッコ良かったですね。

  最近の冒険者はナニカの襲撃以来、遠出が出来なくなりました。それで、仕事が減って荒れている者が多いんですよ。」


 「まぁ、上級冒険者ならともかく、中級以下の冒険者は外に中々出られませんね。俺らはこう見えて結構戦えるので、問題ありませんが。」


 「ふふっ、さっきの見ていたので知ってますよ。ずっと見ていたのに一瞬完全に姿が消えました。

  自分の女を颯爽と守る…いやぁ痺れます。」


 「…………俺の女ではな「よく分かってるなっ!主は我の男だっ!」…おいっ!!」


 否定しようとするカインの間に入って公定するアルディオ。

 その様子に受付の女は微笑みながら。


 「仲が良いみたいで羨ましいです。」


 「ちが……まぁ、いいか。

  換金を頼みたいんですが、ここに出しても良いですか?」


 否定したら、またアルディオに介入されそうだったので本題に入るカイン。


 「はい、良いですよ。素材はアイテムバックの中ですか?」

 

 「いいや、コレです。」


 自分で作った腕輪型のアイテムボックスΩから念じて素材と魔石を出すカイン。

 AやSのモンスターの素材などがカウンターに置かれていく。


 「えええっーーーっ!!!ア、アイテムボックスっ!!

  そ、それに、この素材と魔石はっ!!!」


 普通では見られない物の数々に驚き叫ぶ受付嬢。

 現存数が限られているマジックボックスは七星天兵団や一部の冒険者しか使っていない。

 それに、AやSランクのモンスターの素材は安全地域である、この王都では見る事まず無い。

 有り得ない光景に唖然とする受付嬢…。


 「な、何者なんですか?」


 「えーと…。ランクCの冒険者です。」


 「そんなランクCは居ませんっ!!!!」


 正直に言ったのだが、なぜか怒られるカイン。

 そもそも2年間依頼を受けていないので、これだけのモンスターを倒してランクが上がってないのは仕方ない事である。


 (め、面倒な事になった……。)


 換金するまで、かなりの時間がかかりそうだ。

 2年間で失った常識を、改める必要を感じたカインだった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 結局、ギルドマスターまで呼ぶ事態になった。

 だが、所持している希少な武器を見せたお蔭で、何処かの皇族がお忍びで修行の旅に出ていると勝手に勘違いされた。

 面倒臭いので否定も肯定もしないで適当に相手をして、ようやく解放された時には3時間以上経っていた。


 「なぁ、主よ…ギルドは面倒臭いのだな。」


 「……いや、俺の常識が2年間で変わってしまった。こんなに常識の違いがあるとは…。

  これが修行の弊害だったな…。」


 すっかり疲れてしまったカインとアルディオ。


 (地獄の鍛錬で疲れない主を疲れさせるとは…。

  ギルドはとても怖い所だった……。)


 アルディオは初めて来たが、カインを疲れさせるギルドという存在に対して恐怖を抱いた。

 

 「お前…何か勘違いしていないか?」


 「主よ…撫でて欲しい……。」


 アルディオが、上目遣いで震えながらカインを見ている。そして、アルディオ自慢の狼耳は垂れていた。


 「なんで震えてるんだよっ!!!

  どこにそんな要素があったんだっ!」


 なにか凄い勘違いをしている気がしていたが、あまりにアルディオが不安そうにしているので撫でてあげるカイン。

 すると、震えが収まりカインに笑顔を向けるアルディオ。


 「これで我はギルドに負けんっ!!」

 

 「………なんの話だ…。」


 よく分からなかったが震えが収まり、やる気に満ち溢れる犬っころ。

 意味不明だったが、またアルディオのペースにハマりそうだったので、気にするの事を止めるカイン…。


 「はぁ…。さて、余計な時間を使ったが奴隷市場に行くぞ。」


 「うむ、ギルド以外なら問題無いっ!」


 「………ギルドがお前に何をした…。」


 とばっちりを食らい、神獣に嫌われたギルド。その理解不能な事態に呆れながら、元気になった犬っころを見るカインだった…。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ここが奴隷市場か…。」


 初めて奴隷市場にやって来たカインとアルディオ。テントや簡易小屋が数カ所建てられており、檻の中には首輪を付けた人が入っている。

 

 この世界の奴隷は犯罪奴隷と一般奴隷が存在する。

 犯罪奴隷は殺人や強盗などの、罪を犯したものが売られて強制的に罰として重労働をさせられる者。

 一般奴隷はお金が足りなくなった村や家族に売り払われる子供が多いのが特徴だ。成長しても主人が解放しないと一生奴隷のままである。そして、無能者は奴隷に勝手にされる場合が多い。

 この奴隷達は、隷属の首輪という契約者に逆らうと苦痛を与えられるマジックアイテムを付けている。


 (明らかに奴隷が多い…。しかも犯罪奴隷では無く一般奴隷だ。そして、女性がやっぱり多いな。犯罪奴隷でも無いのに、こんなに若い女性ばかなのは何か裏がありそうだな…。)


 あまりの女性の多さに不審がるカイン。辺りを見渡しても10代くらいの女性が圧倒的に多いのだ。それなのに、男の奴隷は殆ど見当たらない。


 カインは近くにいた奴隷商人に話し掛けた。


 「すみません。この国には今日初めて来たんですけど、奴隷が多いですね。特に若い女性が…。

  何か理由でもあるんですか?」


 「………タダでその情報を渡すと?」


 男はカインの質問を聞いた途端に突然警戒をする。そして、情報料がかかると言っているようだ。要するに何か理由があり、知っているという事だ。


 「金ならありますよ。」


 「…いや、ココは奴隷市場だ。つまり奴隷を購入すれば教えてやらない事も無い。」


 「……わかりました。では見せてください。」


 カインには奴隷は全く必要無かったが、将来性のある奴隷を買って解放しようと思いその条件を飲んだ。


 「主よ…我では不満か?」


 「……不満は無いがやる気も無い。」


 「何故だっ!!奴隷なら良いのかっ!!」


 「んな訳あるかっ!!……後で説明するからちょっと黙ってろ。」


 「嫌だっ!我は主の子供が欲しいのだっ!!」


 「……………。」


 完全に勘違いするアルディオに説明するのを面倒臭がるカイン。

 うちの番犬は無視して奴隷商人に付いて行った。


 そして、小部屋に案内されたカインは、まだうるさい犬っころと一緒に、奴隷が来るのを待つ。

 

 「我は子供が「そろそろ黙らないと二度と一緒に寝ないぞ。」………う、うむ…。」


 カインはアルディオを黙らせる魔法を唱えた。

 魔力も詠唱も必要無い便利な魔法である。


 「待たせたな。…おいっ、入って来いっ!」


 奴隷商人は部屋に入って来て奴隷達を呼んだ。

 10代くらいの女の子達が8人入って来る。全員同じ質素な服に見を包んでいる。


 「どうだ、お前と同じくらいの女達だ。連れの女には届かないがそこそこ顔と身体の良い奴隷が揃ってるだろ?」


 「……………。」


 奴隷商人には返事はせずに黙って見比べて行くカイン。すると金髪の狐人族の女の子に目が止まる。


(何だ?……この子から何かを感じるな…。直感的にこの子には何か力がある気がする。)


 狐人族の女の子から何かを感じて、黙って考えるカイン。

 しかし、何も語らないカインに痺れを切らしたのか一人の奴隷が話し掛けて来た。


 「わ、私はお客様を満足させる事が出来ます。」


 金色の髪に紅眼の狐耳の獣人だ。カインと同じくらいの歳でスタイルも良く、顔も美人な女の子。先程カインが何かを感じた子である。

 その言葉に返事をしたのはアルディオ…。


 「そなたでは無理だ。主は我が満足させておる。」


 「な、何ですか貴方はっ!私はお客様に話し掛けているんです。話に入って来ないで下さいっ!」


 「ふん、その程度の耳で主の気を引こうなど、片腹痛い。」


 「こ、この耳は私の自慢な耳ですっ!!貴方の弱々しい狼耳よりも高貴で気高い耳なのですっ!!」


 「な、何だとっ!!誰が弱々しい耳だっ!!勇ましく力強い立派な耳ではないかっ!!そなたの貧相な耳と比べるでないっ!!」


 「だ、誰が貧相な耳ですかっ!!私は狐人族の中でも一番綺麗で可憐な耳を持っているのです。この艶が貴方には分からないですかっ!!」


 「黙れぇええええーーーーっ!!!!耳とかどうでも良いわっ!!!」


 「主よ落ち着け。」「お客様落ち着いてください。」


 「……………こいつら…。」


 突然、耳の事でくだらない喧嘩を始めたバカ二人にイライラし始めたカインは、遂に痺れを切らして叫んだ。

 完全に二人のペースに乗ってしまったようだ。

 

 「ふぅ…。狐人族の女の子、名前は?」


 「はいっ!ソフィアと申しますっ!」


 「ソフィアか…。よろしく頼む。」


 「こ、こちらこそよろしくお願いしますっ!」


 「な、何だとっ!主よ…何故だ…。」


 カインは先程の直感と、アルディオとソフィアの気が完全に合っていた事を理由に問題無いと判断した。ソフィアには何か力があるだろうと…。


 「コイツで良いのか?1000万コル、白金貨10枚だな。」


 「は、白金貨10枚っ!!!わ、私ってそんなに高いんですかっ!!」


 奴隷商人が告げた、物凄い高額な値段に喜ぶソフィア。

 白金貨は1枚で家を建てる事が出来る金額だ。それが10枚…かなり法外な値段だ。


 「いや、ソフィアの価値じゃない…。情報ですか?」


 「まぁ、そうだな。あんたの行動によっては俺は仕事を無くす。その為の保険としては適正な額だ。」


 「なるほどな…。そこまでの問題か…。

  じゃあその情報買います、白金貨10枚。」


 「サ、サラッと私の存在を情報より価値が無いとされたんですけど…。てか私を買ったでは無くて情報を買ったと言い切られた………。」


 自分にそんな価値があると、一瞬思って少し喜んだソフィアだったが、全く相手にされず情報を完全に優先され落ち込む。

 まさに上げて突き落とす……。


  「お前な…。何で喜んでたのか知らないけど、俺はソフィアを値段で決めたい訳じゃない。

   一目見た時に運命を感じてな、ソフィアとは上手くやっていけそうな気がしたんだ。だから、金ではソフィアの価値は決められない。

   金よりも大切な出会いだからな。」


 「ご、ご主人様……。わ、私は一生ご主人様に付いて行きますっ!!よろしくお願いしますっ!」


 「こちらこそ宜しくな。それとご主人様は止めてくれ、俺の名はカインだ。名前で呼んでくれ。」


 「は、はいっ!!カイン様っ!!」


 上げて、突き落として、最後に一気に引き上げる。これが朴念仁カインの無意識で異性の相手を落とすのテクニックである。

 ヒロ曰く『常勝無敗の朴念仁』これがカインの称号だ。


 「まぁ、ソフィアとは宿に帰った時にゆっくりと話し合おう。手続きとかあるだろうし、ソフィアは準備して来るといい。それと隷属の首輪は必要無いからな。」


 「カイン様っ!!私、精一杯頑張りますねっ!!」


 嬉しそうに尻尾を振っているソフィアと他の無表情な奴隷達は従業員と奥の部屋に帰って行った。

 そして、その場に残ったカインと奴隷商人と犬っころ。

 カインは奴隷市場に来た目的、本題に入る。


 「では、情報の方をお願いします。」 

次回、シリアクヤ王国は…。


読んで頂きありがとう御座いました。

ブクマ登録、感想評価などもよろしくお願いします(○´∀`)b

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