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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
22/65

18話 頑張ったから

カインの修行とは…。

 俺が神獣アルディオことアルと出会ってから2年の月日が流れた。


 俺とアルは出会った日に修行の為、無圏内エリアに向かった。無圏内とは天族が統治しておらず、人は住んでいないが魔物が数多く生息し、自然環境も普通の人は生活出来ない所だ。厳しい環境に身を置いて、集中して修行する為のこの場所を選んだ。

 

 覇気を扱う超絶者になる為には、まず体内の魔力と闘気を完全に融合させる必要があった。

 これが案外難しく、通常は精神統一させて覇気へと変換するのだが、完全に扱う為に無意識で覇気へと変換させる事が大事らしい。


 「無意識で変換とか、どうするんだよ?」


 「それは我も知らん。」


 「………鍛錬の方法は?」


 「1000年前に忘れた。」


 ………全然役に立たない神獣だな。

 かと言ってやらない訳にはいかないから、俺はとにかく覇気への変換を馴染ませる為に毎日瞑想する事にした。今の俺は永続枯渇状態なので、勝手に放出する分を無理矢理に覇気へ変換させると言う離れ業を使用した。

 これが良かったのか、睡眠時間=瞑想の時間にしたのが良かったのか上手く馴染ませる事が出来た。そう、俺は完全に寝なくても瞑想しながら半分寝るという業を編み出したのだ。


 「我は主と一緒に寝たいのだが…。」


 アルがそんな事を言っていたが、俺は知らん。遂に永年の夢だった、寝なくても鍛錬を継続出来る様になったのだからっ!!


 「主は…我より鍛錬が大事なのか…。」


 とか甘えてくるので、仕方がなく瞑想しながら側で寝ているアルを見てやる事にした。

 てか、そもそもこの場所は危険地帯だからゆっくりと寝られないが、アルは普通に寝る……。

 

 最近アルは人化の状態で過ごしている。

 蒼い綺麗な髪の上には二つ可愛い狼耳が付いている。身長は150cmくらいで肌はとても白い美少女だ。そして、胸が非常に大きい。

 アルディオが初めて人化した時、服を着ていなかった。


 「おい、服はどうしたんだ?」


 「我なりのアピールだ。かなり大きいだろ?」


 「…………お前本当に神獣か?」


 俺の中の神獣のイメージ崩壊したな。

 結局、アルはエレメントで服を作っていた。四色の〚天〛のエレメントを服に使うとか…。”そこだけ”は流石神獣だったな。

 

 二つ目に、俺が力を入れて鍛錬したのは刀術と剣術を両手で使える様にする、新たな刀剣術だ。

 元々は片方ずつの手で、片方ずつの武器を持って戦っていた俺だったが、新たな刀剣術を生み出して両手でも使用可能にした。

 独自で考えながら、やっとの思いで刀剣術に昇華させたのは自分でも頑張ったと思う。


 「新たな術を生み出すとは、流石我の主だな。」


 この犬っころは、半年間地獄の様な環境で、睡眠せず、休まず鍛錬していた俺の横でずっと寝ていただけだ。

 

 「お前なぁ……少しは何かを教えてくれよ。」


 「我の教えられる事は特に無い。

  武王術、いつでも睡眠出来るん術、仙術、何でも食べられます術、転移術、気になる異性を魅了する術、時空術、身体ほぐすけど壊れるん術、天宝製作術…くらいだ。」


 「…………この野郎…。」


 くっそどうでもいい術が混ざっていたが、何個か凄い術が混ざっていた。てか、身体ほぐすけど壊れるん術ってなんだよ、怖いわっ!

 そもそも、そんな凄い術があるなら早く教えろよっ!!本当に役に立たないマイペース野郎だ。その日から犬っころと寝るのは止めた。


 「我は狼なのだが…。」


 「黙れ、犬でも犬が可哀想なくらいだ。」


 「……主が冷たい…。」


 それから俺は数々の術を習得していった。

 次々と襲い掛かるモンスター達と戦い、休憩時間は瞑想のみという過酷な鍛錬により、1年でかなりの術を使える様になった。実践では習得が早いというのは本当だったな。

 結局、アルは殆ど知識でしか知らなかったので、全部俺が考えて編み出した術がほとんどだ。

 現在では失われた術を独自で習得するのは”大変”だった。


 「主よ…実践したから習得が早いと言う問題じゃない。それに、あれだけの事を”大変”で済ますのは凄いのだが…。」


 「アル、人は頑張れば何でも出来るんだよ。」


 「いや、主だけだと思う…。

  そこの才能を恋愛の方にも活かしてくれれば…。」


 「……………。」


 結果的に、永続枯渇状態を解決する方法も見付けた。仙術の中には力を封印する術が存在しており、現在は覇気となっている力の放出を封印する事で自分の好きな時に好きな分だけを使用する事が可能となった。

 そして、再び溜まってきた覇気だったが以前と比べものにならないくらい最大量が増えていた。これはずっと放出していた為に勝手に鍛えていたらしい。

 まぁとにかく覇気の使用については問題が無くなった。


 「主よ…我の必要はあったのか?」


 「……………。」


 更に1年かけて、鍛錬以外何もして来なかった俺は頑張ったおかげで、かなり強くなった筈だ。この2年間はとても充実した毎日だった。


 「頑張ったから、といって手に入る力では無いぞ……。あの不眠不休と常在戦闘の地獄な環境で充実した毎日だった、とか…。」


 「まぁ、それなりに疲れたな。」


 「……それなり。」


 ほとんど寝ていた使えない神獣だった。

 俺が独自で編み出した術が、本当に意味のある術か良く分からないのでアルにも色々と披露した。


 「………………。」


 「アル?なんか、違ったか?」


 「仙術も時空術も武王術もそこまで強くない…。」


 「何だとっ!仙術と時空術を組み合わせたり、覇気と武王術、刀剣術の複合技をやったりしただけだぞっ!!」


 「主よ…そもそも、仙術も時空術も覇気も武王術も普通は一人一つずつしか使えないのだ…。

  我が寝ている間に何をしたのだ………。」


 「頑張って鍛錬してた?」


 「頑張って鍛錬で、簡単に我を越えていくとは…。」


 まぁ、色々とあったが全く問題無く?2年間修行は終わった。

 だが、問題は……。


 「エレメント覚醒しないな。アル、本当に俺はエレメントを顕現出来るのか?」


 「心配するな、我はエレメントを感知する事が出来る。間違いなく、主は五色のエレメントを持っておる。」


 「じゃあ、覚醒待ちか…。ナニカとの戦闘では役に立たないかもな。」


 「侵略者か…。まぁ、我が戦えば問題無い。それに倒せなくてもダメージは与えられる。」


 「天宝製作術でナニカを倒せる武器を作りたかったな。刀と剣、マジックアイテムは色々と作ったがエレメント付与は難しいようだ。何か良い材料があればな…。」

 

 「SS級の武具を作って満足出来ないとは…。」


 天宝製作術とは術を使って、錬成や合成、付与や鍛冶などの、様々な武器や魔導具の製作を可能にする術である。

 現在俺の使っている武具は、頑張って鍛錬して習得した天宝製作術を使って作ったものだ。この術によりSS級以上の武具を製作可能になった。

 

 刀の名は『天夜叉』。全てが漆黒で統一されており、斬った対象に追加で斬撃を与える。要するに一回斬っただけで数回斬ったと同じである。連続して斬ったらその数は物凄いものとなる。

 

 片手剣の名は『デュランダル《天光》』。全てが純白で統一されており、覇気を流した分だけ光り、範囲と切れ味が増す効果がある。

 

 武器については、どちらも威力が有り過ぎるので、普段は鞘に収めたまま攻撃する事になるだろう。


 防具の名は『瞬光の衣』。深い藍色のクロースアーマーで、覇気を流した分だけ硬化する。そして同時に移動速度が上昇する両立的な防具である。

 

 そして、マジックアイテムの『アイテムボックスΩ』。これは俺が一番力を入れて作った腕輪型の物だ。

 時空術と仙術を複合させた術を付与しており、中の物は何でも入るし時間も止まる。そして、念じるだけで出現させる事が出来るので、服を着替えるのも、直接アイテムボックスΩから念じて自由に装着出来るのだ。

 そんな能力もあり普段は『デュランダル《天光》』と『瞬光の衣』しか装備していない。


 「いやぁ、無圏内は素材の宝庫だな。AやSクラスのモンスターが沢山いて、製作する時に材料に困らなかった。」


 「主よ、AやSクラスモンスターを材料扱いか…。」


 「材料って言っても、それなりに手こずったけどな。」


 「……………それなり。」


 アルにも武具を作った。武王術メインらしいので、篭手を作ってみた。『天狼の篭手』と『舞踏の衣』である。

 天狼の篭手は、”どっかの神獣”を少し材料にして作った。光の爪を発生させる事も出来る優れ物だ。

 舞踏の衣は黒のドレスアーマー仕様にした。回避性能に優れた瞬発性を極限に高めるものだ。


 「うぅ…わ、我の大事な毛が…。」


 「ちょ、ちょっとだけだろ?良い物作れたんだからそんなに泣くなよ…。」


 どっかの神獣アルは泣いてしまった。泣きやますのに、毛づくろいとキスしてあげたら直ぐに機嫌が治った。

 エルミナも機嫌が悪い時にキスしたら直ぐに機嫌が治ったものだ。


 「主よ…それを聞くと複雑なんだが…。

  我はキス初めてだったのに……。でも、嬉しい。」


 キスなんか、仲良くなった女の子との挨拶みたいなものだ。エルミナがよく言っていたからな。

 それなのに、何故女の子達はそんなに嬉しがるのかは分からない。スズもティアもアルも挨拶で嬉しがるとは………。

 うん、女の子は難しい…。


 なんにせよ、2年間で”少し”は俺も強くなった。帰る場所も”普通の”仲間も居ない俺だが、これから何が出来るのかを自由に探しながら生きていくか。


 こうして、俺とアルは無圏内地帯を旅立った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「なんか、目立ってるな。まぁ、アルは美少女で目を引く容姿をしているからな。」


 「いや、我より主の方が目立っている。完全に主に対する女共からの視線の方が熱いぞ。」


 カインは14歳になって身長は180cmに近い。身体つきも地獄の鍛錬(カインは自覚無い)で、とてもしっかりした筋肉が付いている。

 元々非常に整っていた顔だが、歳を重ねて幼さが減り圧倒的なオーラを放っている(アルディオ曰く)。


 「ん?……まぁキモ顔は目立つってやつか。なんか久しぶりに俺の顔の事を思い出した気がするな。」


 「キモ顔?それは誰の事だ?」


 「俺の事だが…。

  これでも、気にしているんだから言わせないでくれ。」


 「………………。主は鏡を見た事無いのか?」


 「バカにするな。今なら作れるしな。」


 「………………主の目は節穴か?」


 「おい!誰が節穴だっ!」


 現在カイン達はランダムに転移した結果。

 天族の一つガインドルグ家の圏内にある、シリアクヤ王国の王都に居る。

 ちなみに、ガインドルグ家は〚天山〛のエレメントの顕現者で獣人の獅子族である、七星天兵団、第五師団長アバルテ・ガインドルグが当主だ。


 「はぁ…。とりあえず久しぶりにベットで寝たい。宿をとって明日1日はゆっくりするか。」


 「うむ。我もベットで主と一緒に寝る。それと寝る前に、髪と尻尾の毛づくろいも頼む。」


 「……お前…。それだと、どっちが主か分かんないだろ…。」


 「我は人化で初めて町に入ったからな。色々としてみたい事が多いのだ。」


 「いや、一緒に寝るのも毛づくろいも、初めて町に来たからとは関係無いからなっ!!」


 周りから注目を浴びつつ歩いている美男美少女。だが、本人達はあまり気にしてなかった。

 そんな時、カインはある事に気が付く。


 「なぁ…。奴隷の数が多くないか?隷属の首輪した奴が王都民より多いんだが。」


 そう、先程からすれ違う人、その中でも奴隷がとても目に入るのだ。それも女性が多い。

 

 「うむ、我には良く分からん。」


 「…………。野犬に聞いた俺がバカだった。」


 「主はバカなのか?少しは勉強も大事だぞ。」


 「……………この野郎…。」


 言い返したかったが、マイペースな神獣に合わせていると疲れる。なので、アルディオを無視して一人で考え始めるカイン。


 (はぁ…。でも、これだけの奴隷が居るのはおかしいな。

  オボルでは奴隷は殆ど居なかったし、犯罪奴隷だけだった筈だ。なのに数も多いし女性ばかりか…。

  なんかあるな、一度で奴隷市場に顔を出しに行くか。)


 王都の様子を不審に思ったカインは、奴隷市場に顔を出す事に決めた…。


 「アル。何か様子がおかしいから、奴隷市場に行ってみる。なにか情報が手に入るかもしれない。」


 「主よ、お金はあるのか?」


 「まぁ、素材とは魔石は山ほどあるからそれを売ればなんとかなるだろう。先にギルドへ行ってみるか。」


 「うむ、りょうかいだ。」


 カインとアルディオは、お金を手に入れる為に、ひとまずギルドへと向かうのであった。

次回、マイペース犬と天然娘…。


読んで頂きありがとう御座いました。

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