表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第2章 修行後と集い
21/65

17話 始祖の血脈

いよいよ2章開幕です。

新たな仲間登場?

 オボルの街を去ったカインは、無能者であり魔法も闘気も使えないので新たな戦闘手段を考える事にした。

 武器もE級の汎用剣しか無いので、Dランク以上のモンスターに遭遇したらヤバイ。まして、ナニカが闇のゲートを開いて出現したら、死に一直線である。

 

 現在は、オボルから50km離れた街道を疾走中である。


 (うーん…。永続枯渇状態ってだけで、回復はしてるし放出を何とか出来れば、魔法も闘技もまた使える様になると思うんだけどな…。

  今、俺の体内にある魔力と闘気は、壁を破壊した事により混ざり合って全く別の”力”になってる。

  エレメントが使えなくてもこの”力”を上手く扱えばナニカ以外ならいい勝負が出来るか…。)


 カインがナニカとの初戦闘で、強引に魔力と闘気を合わせて纏っていた”力”は、身体能力を3倍以上に上昇させていた。

 さらに、上昇率に伴った肉体強化もされており、エレメントの身体能力の上昇と似ている。この強化は中級エレメント以上の身体能力の上昇率である。

 だが、ナニカにはエレメントしか効果がない。なので、渡り合えるのは人か魔物だけだ。


 「……………。」


 カインは急に立ち止まった。

 そして、辺りを警戒した行動をする。


 「さっきから誰かが見ているのは分かってるっ!!」


 カインは、オボルの街を出てからずっと自分を尾行している存在に気が付いていた。直接攻撃するまで気にしない様にしようと思ったが、50km以上も付いてくるので少し鬱陶しくなってくる。


 「………………。」


 その存在が姿を表す事は無かった…。


 (………ダメか。完全に気配を消す気は無いみたいだけど、何処にいるか分からないくらい隠れるのが上手い。

  ……まぁ、害は無いから別に良いか。)


 結局、カインは尾行している存在と一緒に?次の町を目指して行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「お前…オボルから来たのか?今転移門が使えないのに、子供1人で旅なんてな…。まぁ、ランクCの冒険者なら大丈夫か。」

 

 「はい。こう見えて、かなりの修羅場をくぐって来ているので大丈夫ですよ。」


 「まぁ、今はナニカとかよく分からんモノも居る。何処に向かうかは分からないが気を付けろよ。」

 

 「”今は”一人なので無茶はしませんよ。心配してくれてありがとうございます。」


 「ははっ、気にするな。じゃあまたな。」


 「はい、ではまた。」


 カインは現在オニキス家の圏内でも最北端にある町に辿り着いていた。

 ナニカの出現によって、転移門が安定しなくなった為に現在は使用不可能。なので魔導飛行船が移動手段の主流なのだが、身分の高い者が優先されるので平民は使えない。

 だからといって街道はナニカの出現により危険度が増しているので、使う者はごく一部である。

 子供一人でオボルから200km離れたこの町に徒歩で来たカインを、門番をしている町の警備員が心配して声を掛けたのだった。


 現在は町の宿へと向かっているカイン。


 (……結局この町まで付いて来るとはね。でも相変わらず町の中までは入って来ないみたいだ。それとも入れないのか?)


 カインをずっと尾行していた存在はここまで来ても健在である。

 

 (俺には帰る場所も守る仲間も無い……。

  とりあえず、オニキス家の圏内から出ようと思ってここまで来たが、この先どうするか…。

  オニキス家の圏内で最北端のこの町。何か情報が手に入るかも。

  明日は情報収集するか。力の放出を防ぐ手段も見つかるかもしれない。)


 宿へと向かいながら、明日の予定を決めたカインだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 早朝の鍛錬を終えて、宿で朝食を摂った後。カインは町へ情報収集に向かった。

 この町はオニキス家の圏内とナタリシア家の圏内の境目が近いので、両方の圏内の情報が手に入りやすい。

 裏の者との繋がりも無いので、普通に町人に対して色々と聞いて回ったカイン。


 (エルミナ・アフェリーか……。)


 一番の多く話題に上がっていたのが、エルミナの話だった。

 《僅か12歳で平民から四色のエレメントを覚醒させて皇族になった銀髪の美少女。先日のナニカとの戦闘でも活躍し、アフェリーと言う家名や〚星〛のエレメントと言う名称で英雄の仲間入りを果たした注目の人物。》

 というのが、各地で出回っているらしい。


 (エルは凄いな……。

  ……まぁ、無能者の俺が未練を残しても仕方がない。あの時、エルの幸せを願うと決めたんだから。

  ………その他にも、気になる事を聞いたな。サラナ山の神獣が人前に姿を見せて話しかけて来たとか。確か神獣は、蒼い狼で〚天〛のエレメントの顕現者とか。)


 神獣とは、魔物とは違い言葉を話す事が出来るし四色の〚天〛のエレメントを顕現出来る事から、遥か昔から神の使いとして敬われてきた存在だ。

 エルミナの件で少し薄れていたが、かなりの話題にもなっていた。ナニカの出現に対して、何か動いてくれるのだろう、と。


 (…………神獣ほど長い時間を生きているなら俺の”力”について知ってるかな?それと放出を止める方法とかも教えて貰えるかも……。

  ………またサラナ山まで戻るのか…。)


 神獣には聞きたいが、1ヶ月かけてここまで来たのでサラナ山に引き返すのは流石に手間がかかる。

 転移門も使えないし、どうするか考えていたカインだったが。


 「カインが命ずる。神獣よ来いっ!!!

  ……………なんちゃって。」


 特に、いい案が無いので呼んでみたカイン。

 もちろん、期待してないので宿で帰り支度をしてサラナ山に向かおう考えていたが。

 

 突然、カインの前に光のゲートが現れる。

 眩い光の中から出てきたものは…。


 「呼んだか主よ。」


 「…………………………………。」


 光のゲートから現れた存在は、蒼い毛並みに品のある佇まいの狼だった。神々しいオーラを感じる。


 「どうかしたのか主よ。命令通り現れたぞ。」


 「…………。

  いやいやいやいやいやっ!!

  何でサラッと出てきてんだよっ!!」


 「主が命令したからだが?」


 「主って俺か?てか、命令ってアレかよっ!!

  ただの冗談で現れるとか何者だよっ!!」


 「神獣と呼ばれている、名をアルディオと言う。」


 「そうかそうか、アルディオか…。

  って、そういう意味じゃないっ!!」


 神獣にいつもの調子を狂わされるカイン。

 突然の蒼狼の出現に周りもざわつきはじめる。


 「…………色々と聞きたいがココだと目立つ。

  支度をして来るから外で待っていてくれ。」


 「りょうかいだ。」


 光のゲートから消えていくアルディオ。その様に周りも更にざわつく。


 (もう少し穏便に退場をしてくれ……。)


 消えていくアルディオを少し恨むカインだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 町から少し離れた場所で、もう一度アルディオを呼ぶカイン。

 すると、再び光のゲートが出現し蒼狼が現れる。


 「…………お前、それ以外に登場のパターンないの?」


 「ん?普通に出て来られるが。」


 「おいコラっ!はぁ…、なら普通に出て来いよ。」


 「主の命令なら仕方がないな…。」


 かなり残念そうに応えるアルディオ。


 「お前…。その登場、気に入ってるんだな。」


 派手好きな神獣に呆れるカイン。あまり相手にしたら疲れそうなので、本題に入る事にした。


 「さて。まずお前…アルディオと言ったな。ずっと俺を尾行していたのもお前だな?少しだけ感じた気配と同じだ。」


 「流石だな主よ。光のゲート内にいた我の気配を感じるとは。それと尾行していたのではない。ただ姿を見せずに黙って付いて行っただけだ。」


 「それを尾行って言うんだよっ!!

  はぁ…、なんか疲れるな…。なんで俺を尾行していたんだ?」


 「だから尾行していたのではない、黙っ「なんで黙って付いて来たんだっ!!」………落ち着け主よ。」


 「………この野郎…。」


 叫ばされた相手に落ち着けと言われるカイン。この神獣は、かなりマイペースな様だ。すっかり神獣、もといアルディオのペースにハマるカイン。


 「……で?理由は?」


 「我が主に付いて行くのは当たり前の事だ。」


 「………アルディオ。なんで俺がお前の主なんだよ。」

 

 「始祖様の血脈を継ぐ主に仕えるのは、我としては当たり前の事だ。この前サラナ山で見つけたのでな、付いて来たと言うわけだ。」


 「始祖の血脈?……始祖って言うのは確か、この世界オルナティブを造った人だったか?」


 「そうだ。始祖様は1億年前この世界に現れて、数多く生物を導き、そして命を救った偉大なお方だ。」


 「……で、俺が始祖と同じ血を持ってると?」


 「そうだ。5000年前の戦いで、その血は途絶えたと思っていたが…。神族はまだ存在していたらしい。」


 「5000年前の戦いと言えば…大革命時代の戦争か。その戦いで活躍した七家が現在の天族と聞いていたけど…。」


 「その天族は始祖様の血を受け継ぐ【神族】に仕えていた者達だ。神族と四色のエレメントを顕現させた天族が侵略者を打ち倒した。その侵略者は、またこの世界にも現われ始めているが。」


 「侵略者はナニカか……。だけど、今の時代には神族もナニカも記述が残っていない。それは何故なんだ?」


 「それは不明だ…。我もこの間までサラナ山に居たからな。かれこれ3000年以上は山を降りてない。何者かが神族とナニカの存在を無かった事にしたらしいな。」


 現在では伝わっていない真実を聞いて色々と考えていたカイン。

 カインが始祖の血を受け継ぐなら、神族という事になる。そして、天族が仕えていたなら神族は上位の存在となり得る。

 そして、カインはずっと気になっていた事をアルディオに質問した。


 「………。神族ってエレメント顕現できるのか?」


 「主は何を言っているんだ?」


 何を馬鹿な事をとでも言いたそうなアルディオ。

 

 「いや……。まぁ、無能者の俺は神族では無いか。」


 「主は神族だ。この世界に唯一始祖の血脈を継ぐただ一人の人だ。そして、エレメントは始祖様が造ったもの、その血を受け継ぐ主が使えない訳ない。」


 「はぁ?……俺は無能者と判断されたんだが?」


 「何だそれは?エレメントを測定する魔導具でもあるのか?」


 カインは、最近作られたエレメントを測定する魔導具についてアルディオに説明をした。


 「その測定員は”四色まで”のエレメントと言ったんだな?

  ふむ、確かにそれでは無理だな。」


 「……どういう事だ?」


 「はぁ…。そもそも神族すら伝わってないんだったな。

  神族は始祖様の血脈を継ぐ存在。そして、始祖様が顕現させていたのは”五色のエレメント”だ。」


 「五色のエレメントっ!!!

  そんなものが存在するのかっ!!!」


 まさかの発言にアルディオに詰め寄るカイン。

 そんなカインに対して。


 「主よ。我も女なのだ。主にそんなに詰め寄られては我も恥ずかしい…。」


 恥ずかしがりながら発言するアルディオ。

 そんなアルディオにカインは…。


 「なんで詰め寄られて恥ずかしいんだ?別に女とか男とか関係無いだろ?

  てか、アルディオが女なのは知っていた。」


 「えっ?…。普通は我を見ると名前もアルディオだし、言葉遣い的にも男と思われるんだが…。

  でも、主は恋愛についてはダメそうだな。」


 まさかの発言に、まさかの発言で返すカイン。

 カインは鋭いのだ、恋愛以外においては…。


 「まぁ、アルディオはマイペースだけど可愛いし。」


 「っ!!!か、可愛いとなっ!!

  ………5000年生きてて初めて言われた…。

  主には一生付いて行く。そして、我と子供を作ってくれっ!」


 対アルディオ爆弾発言に爆弾発言で返すアルディオ。


 「……神獣って人と子供を作れるのか?」


 爆弾発言を冷静に対処するカイン。


 「当たり前だ、人の姿にもなれるからな。

  我の父は神族の男だ。そして、母は神獣だった。その二人の子供が我だ。」


 「……神獣って凄いな。

  ん?て事はアルディオも神族?てか、俺の叔母ちゃん?」


 「主よ…告白した相手に叔母ちゃんは酷い…。

  大丈夫だ、我らは神獣という族なので神族とは違う。それに、神獣は母の血を濃く受け継ぐから親族では無い。そして生まれる子は全員女だ。」


 「な、なんか複雑だな…神獣は…。

  だが、子供の件は断るっ!」


 「な、何故だっ!!我はこんなにも愛してるのにっ!」


 どんどん本題から離れていったので、無かったことにするカイン。


 「……なんの話か忘れたじゃないかっ!

  ………そうだっ!五色のエレメントの件だ。」


 話がズレすぎて大事な事を忘れ掛けたカイン。

 そう、神族は五色のエレメントの顕現者だという話。


 「……主が冷たい…。

  そうだ、神族は五色のエレメントの顕現者。さっきの魔導具は四色まで測定出来ると…だから、五色のエレメントは測定されなかったんだろう。」


 「……五色か…。その話も5000年の間に無くなったんだな。」

 

 「もし、神族を抹消しようとしている存在がこの世界に居るのなら、今の主では対抗できないな。暫くは公表しない方がいいだろう。」


 「…分かった。もう一ついいか?俺の永続枯渇状態について、解決方法はあるのか?」


 「魔力と闘気の壁を壊し、更に放出する場所も壊したか…。それは、もう魔力でも闘気でも無い。【覇気】と呼ばれるものだ。」


 「覇気?魔力と闘気が合わさった”力”の事か?」


 「そうだ、覇気は無能者達が考えたエレメントに頼らずに編み出した力だ。その者達を超絶者と昔は呼んでいた。超絶者の中には神族に仕えていた者もいた。」

  

 「覇気に超絶者か……。

  その様子だと昔は身分とか無かったのか?」


 「身分など無かった。神族を中心に人々が集まる良い世の中だったな…。」


 昔を懐かしむアルディオ。

 エレメント主義になった時からサラナ山に篭っていたそうだ。


 「俺も覇気を自由に使える様になるかな?」


 「……神族が超絶者になるのか?エレメントがあるのに、わざわざ苦しい修行をしてまで手に入れる力ではないと思うが。」


 「俺は力が欲しい。一度誓った事を俺は達成出来なかった、守るって決めたのに……。

  だが、次は例えどんな事があっても守りぬぐ、そして誰かを救う力が欲しいんだ。勝手に得られる力だけでなく、自分で努力して手に入れたい。

  次は誓った事を成し遂げられるように…。」


 カインはエルミナを守れなかった。12歳まで必死の思いで努力して手に入れた力を出し切っても、結果的に守れなかった。そして、今まで頑張った力を失った。

 更に、身分の違いで仲間とも離れた。

 カインは決めた、どんな困難にも立ち向かえる力を手に入れると、もう二度と後悔しないように…。


 「分かった…。流石の主でも厳しい修行になる。だが、我も精一杯力を貸そう。」


 「ありがとうな、アル。」


 「アル?我はアルディオだが?」


 「俺とお前は仲間だろ?だからアルだ。

  これから宜しくなっ!」


 「うむ、悪くない…。さすが主だ、さすが我の未来の夫。」


 「………………。」


 「無視するな我が夫よっ!」

 

 なんだかんだ有りつつも、カインとアルディオは気の合いそうな仲間?となった。

 そして、カインは厳しい修行へと向かうのだった。

次回、2年後のカイン…。


読んで頂きありがとう御座いました。

ブクマ登録、感想評価もよろしくお願いします(○´∀`)b

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ