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無自覚だけど世界最高の男  作者: かめごろう
第1章 覚醒と覚悟
2/65

1話 生粋の朴念仁

 主人公の幼少物語から始まります…。


 「七星騎士団」→「七星天兵団」に変更しました。

 「無能者」の説明を付け足しました。1月1日

 カインのエルミナの呼び方を「エルミナ」→「エル」に変更しました。

 

 「カイくん、起きてっ!!」


 名前を呼ぶ女の子の声が聞こえて来る…。

 

 「……………………………。」

 

 しかし、呼ばれた方の男の子は返事をしない。ベットの上で目を閉じたまま全く動かない…。


 「カイくん?」


 再び男の子の名前を呼ぶ女の子…。


 「……………………………。」


 それでも何も話さない男の子。

 そんな様子を見ていた女の子は……。

 

  グスンッ…グスンッ…。

 

 突然泣き出してしまった。

 そして、”実は起きていた”男の子は…。

 

 (やばい、泣いちゃった……。

  …何事も無かったかのように起きるしかないか…。)


 男の子が目を開けると、そこには12歳くらいで長く綺麗な銀髪の女の子がいた。誰が見ても可愛く、人形の様に整った顔立ちは美少女というのが相応しいだろう。

 そんな超絶美少女に平然と挨拶をする男の子…。


 「おはようエル、元気かい?」


 今まで何事も無かったかのように普通に挨拶した。

 そんな態度を見た女の子は……。


 「カイくんのバカっ!」


 女の子の方は顔を真っ赤にしながら怒って部屋を出て行ってしまった。


 (はぁ…バレていたか…。)

 

 自分を起こしに来ているのに気が付いており、何度も呼びかけられていたのは知っていた。しかし起こしに来ていた彼女が可愛かったので、少しふざけて無視をしていたのだ。

 そんな自業自得な男の子は…。


 (…許してもらう為に何か考えないとな…。)

 

 女の子に許してもらう為に作戦を練るのだった…。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 俺は【オルナティブ】と呼ばれる世界に暮らしている。親も居ないただの孤児で12歳のごくごく普通(自称)の男だ。

 名前は【カイン】という。

 この世界には色々な種族が存在している。エルフ族、獣人族、魔族、ドワーフ族、人族などがおり、俺は最も人口の多い人族というわけだ。


 この世界は、どんな種族でも【エレメント】と呼ばれている力を持っている。

 そのエレメントを持っているのが全人口のおよそ9割以上おり、だいたい15歳になるまでには覚醒して各々(おのおの)エレメントを使って様々な事に役立てている。

 

 このエレメントにはランクがあり、そのエレメントによって色の数で能力の大小がかわってくる。

 一色のエレメントは、おもに『火、水、風、土』などがある。平民はこの下級エレメントを持っている。

 二色のエレメントは、主に『炎、雨、暴風、岩石、闇、光』などがある。貴族はこの中級エレメントを持つものが大半である。

 三色のエレメントは、主に『豪炎、海、嵐、山、暗黒、聖光』などがある。王族はこの上級エレメントを持つものが大半である。

 

 そして、最も少なくとても強い力を持つと言われているのが四色のエレメントであり、その力をを持つものだけが【天族】と呼ばれている地位に就くことが出来る。よって、天族がこの世界の最高位の存在だ。

 その天族達がトップに君臨する【七星天兵団】と言う組織がある。この世界の秩序を守り完全に支配しているのだ。そして、強いエレメントを持つ選ばれた者にしか七星天兵団に入団する事はできない組織だ。

  

 この四色のエレメントを持つものが天族の他に現れることもあった。

 その者は天族と同格である【皇族】と呼ばれる地位に就くことが許されているのだが、ここ1000年以上は現れてはいない…。


 そして、最後に【無能者】である。エレメントを持たない者は、この世界の者ではない酷い扱いを受けている。

 そんな存在は1割もいないが純粋な力も無い為に奴隷となる者も多い。


 といったように、この世界ではエレメントは絶対であり自分が持つエレメントによって地位が決まってしまう。力を持つ者もエレメントによって左右されるのが“常識”である。

 もちろんエレメントよる相性もあるが、それはまた次の機会に…。


 俺が住んでいる孤児院のある街は【オボル】と呼ばれており、様々な種族が暮らしている。人口1万人の街でここを統治しているのは四色のエレメントの1つ〚空〛。つまり、そのエレメントを持つ天族オニキス家の圏内だ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 オボルにある孤児院の庭で……。


 「エル、そろそろ許してくれないかな?

  ちゃんと反省してるし、君には怒った顔は似合わないと思うんだ。」


 銀髪の美少女【エルミナ】の機嫌をうかがうカイン。なんとかして、機嫌を直してもらおうと頑張っている。

 

 「そんな事言われても私はもう騙されないんだからねっ!!ちゃんと反省してください!」


 カインの言葉に少し赤くなったエルミナ。しかし、一度同じ手を使われているので簡単には許してくれないらしい。


 「本当に反省しているんだけどなぁ……。

  そうだっ!エルのお願いを1つだけ叶えてあげるから、それで許してくれるってのはどうかな?」


 微笑みながらエルミナの頭を撫でるカイン。

 すると、エルミナの顔がほんのり赤くなる。


 「………じゃあ明日は鍛錬休んでね。

  そして、私と一緒に買物に行こうよ。」


 少し機嫌が良くなってきたエルミナは、悩んだ後にカインに1つお願いをした。内容は中々可愛いものであるのだが、その言葉を聞いて考え始めるカイン。


 (うーん…。明日は鍛錬という名目でこっそり街を出て、一人で魔物狩りに出掛ける予定だったんだけどなぁ…。

  まぁ、お願いを1つ聞くと言ったんだから仕方無いか…。)


 考えがまとまったカインはエルミナのお願いを聞く事にした。

 そして、カインの言った言葉は…。


 「よしっ!じゃあ明日は、エルミナとデートということで。」


 「デ、デ、デデ、デートォーーっ!!!

  ち、ちがうよっ!!ただの、お買い物だよっ!!お買い物っ!!」


 突然のデートという発言にエルミナの頭は真っ赤になった。そして、かなり慌てた様子で否定をしている。

 そんな、エルミナの姿を見たカインは……。


 (……エルが、あんなに顔を真っ赤にして怒っている。

  そんなにデートと呼ばれるのが嫌なのかな?もしかして、エルには好きな子が?)


 エルミナの態度を見て不思議に思ったカイン。好きな人が居るのに、自分がデートに行こうと言ったので怒っていると勘違いしていた。

 その一方でエルミナは……。


 (朴念仁のカイくんがデートだなんて…嬉しいなぁ…。

  明日は張り切って準備していかないとねっ!)


 カインと真逆の事を嬉しそうに考えていた…。

 物凄い張り切り始めるエルミナ。

 

 カインは年の割に身長も高く聡明であり、顔立ちもとても整っている。それは同年代の女子の間で、思わず見惚れてしまうほどのものだ。なのでカインは非常に人気がある。

 孤児院の中では、カインとエルミナは美男美女でとてもお似合いの二人なのでカインに言い寄ってくる女の子は居ない。しかし、密かに狙っている状態なのだ。

 肝心のカインは自分の事を何故か顔が悪いと思っており、人気がある自覚がない。まぁ、その原因は孤児院の女子達のせいでもあるのだが…。

 

 そんな朴念仁のカインは……。


 「うーん…じゃあ明日の買物はやっぱりやめておく?」


 エルミナの考えが分からないので困りながら言った。

 そんな、カインの発言を聞いたエルミナは…。


 「えっ!!!絶対に行くよっ!!

  ……カイくんとのデ、デ、デート…。」


 デートのチャンスを逃すまいと慌てて否定した。そして、最後に嬉しそうに小さく呟いた。


 「ふぅ…。とりあえず、エルに許してもらえたね。

  この後、俺は今日のうちにちょっとギルドに行って鍛錬をして来るよ。」


 許してもらった事に一安心するカイン。無事解決したので鍛錬に行く事にした。

  

 「うん、怪我をしないように気を付けてね。午後からは、私も師匠に治癒魔法を習いに治癒院に行って来るから。また後で明日のこと話そうね。」


 「うん、じゃあ行って来るよ。」


 エルミナに許してもらったカインは、軽快な足取りで冒険者ギルドのある中央区へと向かっていくのであった…。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 現在カインは、ギルドの前に来ている。孤児院から一直線にギルドまで走ってきたのだ。


 (今日はミスティさん、来ているかなぁ。)


 そして、ギルドに居て欲しい人物の事を考えながら、中へと入っていった。


 この冒険者ギルドには様々な依頼が存在しており、討伐、護衛、採取などがある。

 そして、それぞれには推定ランクと呼ばれる達成への基準があり、自分のランクと1つ上下のクエストを受けることが出来る。

 ランクにはG、F、E、の一般ランク、D、Cのベテランランク、B、Aの腕利きランクがある。その上にはSランクと呼ばれる世界にも10人しかいない者も存在しているが、実質はAが最高ランクとなっている。

 Sランクはそもそも三色以上のエレメントを持つ人外である。

 

 カインは、10歳から登録できる冒険者ギルドで10歳から活動しており、時折エルミナと“もう一人の子”と3人で一緒にパーティを組んでクエストを受けている。

 だが基本的にギルド内に存在している訓練場で、朝から晩まで鍛錬というのがカインの日課である。たまに一人でも討伐に出掛けてはいるがエルミナ達には内緒にしている………。


 (……多分バレたら怒られる。いや、泣かれる自信はある…。)


 ギルド内を見回してみると、もうすぐ昼になる時間帯であるため冒険者の数は少ない。

 最近魔法の師事を受けているミスティを探してはいるが………いない。

 

 「ナナエラさん、ミスティさんは今日は来ていませんか?」


 カインは受付の猫耳のよく似合う猫の獣人のナナエラに声をかけた。

 ナナエラは、まだ18歳でとても可愛くて人気のある受付嬢だ。登録した時からお世話になっているので気安い間柄である。


 「カイくん、今日は遅かったね。ミスティさんは今朝からAランクの討伐クエストに行ったから、当分は帰ってこないと思うよ。」


 ミスティはランクA冒険者なのだが、ソロで活動しているので冒険者の中でもSランクに最も近いと言われている物凄い人だ。

 普通はランクAでも同じランクのモンスターを討伐するのに、ランクAパーティを2組、およそ8人ほどで討伐するのが普通だ。

 なので、ミスティがどのぐらい凄いのかをカインは知っている……。

 

 (いや、あり得ないでしょあの人…。ちょっと引くよ。)


 そんな事を思いながら……。


 「それは残念ですね。徹夜で鍛錬した新魔法についてちょっと見てもらおうと思ってたんですが。…まぁまた後日にします。」


 仕方無いのでまた後日会うことに決めた。


 「そうね。またミスティさんが帰ってきたら、その時に教えてあげるね。」


 「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします。

  では今日は訓練場で剣の鍛錬でもしておきます。」


 「はーい、またね。」


 ナナエラに見送られながら、カインは訓練場へと向かうのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「ん?何だあのガキは?」


 「どれどれ…。ちっ、気にいらねぇガキだな。綺麗な顔しやがって。」


 2人の若い冒険者の男達は訓練場で1人でたたずんでいる少年を見ていた。しかも、その少年が非常に整った容姿をしているので気に食わないらしい…。

 なので、片方の若い冒険者が提案をした。


 「おい、ちょっと面倒見てあげるか?」


 「へへっ、それいいな。現実を分からしてあげるのも、大人としての義務っていうもんだよな!」


 「ははっ!違いねぇ。俺らが教育してやるか!」


 そんな事を言い合いながらニヤけた顔でが少年の方へと向かおうとする男達…。しかし突然、後ろから声をかけられる。


 「おい、お前ら何しようとしているんだ?」


 「っ!!あぁ、先輩じゃないっすか?どうしたんっすかこんな所で?」


 声をかけられた事に驚く若い男達だったが、声をかけた人が先輩の冒険者だったので愛想よく言葉をかわしていく。


 「あぁ、俺らのパーティは今日は休日でな。体が鈍らないように、少し鍛錬でもしようと思ってきたんだが…。それより、お前ら何しようとしていたんだ?」


 ここへ鍛錬に来た先輩冒険者だったが、不審な動きをしていた後輩達が気になったようだ。なので、何をしようとしたのか聞いたのだが…。


 「へへっ!ちょっと現実の分からなそうなガキが居たんでね。少し教育ってもんをしてあげようと思ったんっすよ。」


 「はぁ…。お前らがあのカインにか?」


 先輩の冒険者は少年の姿を視界に入れた途端、深い溜息を吐いた。そして、後輩の冒険者達の方へ振り返りに質問をした。


 「そうっすよ!…先輩、あのガキの事知ってるんすか?」


 軽い感じで返事をする後輩の冒険者…。

 それに対して先輩冒険者は軽い態度の後輩に呆れながら……。


 「お前ら逆に知らないとか…。あぁそういえばお前らは最近この街に来たんだっけか?それなら知らないのも頷ける。まぁ、とにかくカインには手を出すなよ。」


 真剣な表情をしながら忠告をする先輩冒険者…。


 「先輩やけに庇うじゃないっすか。まぁ先輩がそこまでいるのなら教育は無しって事にしてあげるっすよ。」


 「はぁ…。あのな、これはお前らの事を思って言ってやってるんだぞ。」

 

 状況を全く理解出来ていない後輩に溜息を吐きながら呆れている先輩。だが、後輩は言ってる意味が分からないみたいだ。


 「お前らの為にっすか?」


 「あぁカインは、お前らランクFじゃ全く歯が立たない。なんたってカインはランクDの俺よりも高いランクC冒険者だからな。」


 「っ!!ランクCっ!!マジっすかっ!!」


 カインのランクを知った後輩は驚きながら大きな声を出した。ランクC冒険者はベテランと言われる程、一般的には高いランクだ。


 「あぁ、この前もカインに手を出した……というかカインのパーティの子に手を出した奴らが、全身骨折で治療院送りになった。そのせいで今も治療費の為に大変な目にあってるからな。だからお前らも逆に”教育されるぞ”。」


 「「せ、先輩ご忠告ありがとうございますっ!!」」


 物凄い冷や汗をかきながら先輩冒険者に感謝をする後輩達。あまりの出来事に言葉がハモる…。

 

 「あぁ、運が良かったな。」


 「で、では俺達は失礼するっすっ!!」

 

 慌てながらも若い二人組はそそくさと訓練場を後にするのであった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 (何か絡んできそうな奴らがいたけど、その前に止められたかな?まぁ俺は面倒が無い分その方が良かったけどね。)


 カインは目を瞑ったまま訓練用の剣を持って構えている。しかも、実はその状態のままもう1時間以上が立っている…いわゆる瞑想というものだ。


 (俺はもっと強くなって恩返しをしないとな…。)

 

 カインは、赤ん坊の頃から孤児院にお世話になっている。その孤児院でエルミナもカインと同じく0歳の頃からずっと一緒だ。よって、カインもエルミナも両親の事は全く知らないし気にしたことは無い。なので、誕生日も分からないカインとエルミナは孤児院に来た日と同じ誕生日となっており二人とも一緒の誕生日だ。

 

 こんな経緯もあり、昔からお世話になっている院長先生には非常に感謝している。この世界では15歳になったら成人になり孤児院を出て行く事になるが、出て行ったとしてもいつか恩返しが出来たらなと思っていた。


 そうした事もあり皆を守ったり、少しでもお金が稼いだり出来るように3歳の頃からずっと剣を振って来た。

 剣以外でも基礎の毎日の厳しい鍛錬は欠かさず1日の大半を使って来たので、エレメントを抜きにすれば冒険者の中でも上位の実力者となっている。

 最近は、ミスティから魔法を教えてもらっており魔法方もかなりの鍛錬をしているがエレメントには敵わない…。


 (エレメントか…。俺も覚醒すれば…。)


 早いものならば10歳を過ぎた頃から覚醒するエレメント。しかし、カインには全く覚醒の兆候が見られないのだ。直ぐに一流冒険者として活躍したいカインにとって、エレメント覚醒は絶対に必要な事になってくる。

 まぁ普通は15歳まで覚醒するものなのでカインは少し焦りすぎなのではあるが…。


 (エレメントによる力や技もあるけど……やっぱり身体能力の倍加があるからね…。だから、なるべる早く覚醒したいなぁ。エレメントによって増える倍率も変わってくるしね…。)


 エレメントの1番の利点は身体能力の倍加である。一色エレメントでも普段の身体能力の2倍になる事もあり、あるのと無いのでは雲泥の差がある。四色エレメントなら絶望的な差となってしまう。

 その他にエレメントの系統によって身体能力の倍加の倍率が変化する。例えば〚火〛のエレメントならパワーの倍率が最も高く、〚風〛のエレメントならスピードの倍率が最も高い。一色エレメントなら倍率にはかなりのムラがあるが、三色エレメント以上なら全体的に倍率が高く戦闘力が全く異なってくる。

 

 エレメント以外でも身体能力上昇の方法が無いわけではないが、それはもう失われた力である。その力を扱っ者達は”超絶者”と呼ばれいたのだが…その話は又の機会に……。


 「ふぅ…。」


 およそ、2時間の瞑想を終えたカイン。そろそろ昼を過ぎた頃になるので昼食の時間帯となってきた。

 

 (昼からの予定は特に決めてないけど何をしようかなぁ…。まぁ、とりあえず昼食を食べながら考えるか。)

 

 カインは訓練場からギルド内にある食堂へと向かった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「あっ、カイくんもお昼かな?私も今休憩時間になってね。良かったら一緒に食べない?」


 食堂にて1人で座っていたカインに声をかけてきたのは受付嬢のナナエラさんである。カインの鍛錬が終わったのをまるで見ていたかの様なタイミングやって来るとは物凄い”偶然”である。


 「いいですよ。先日けっこう稼いだので、今回は俺がナナエラさんに奢ります。」


 ナナエラの下心を全く気にした様子もなく、一緒に昼ご飯を食べて自分が奢るとまで言っているカイン。


 「えっ!!いや、それは出来無いよ。私の方から誘ったんだし、なんか催促さいそくしたみたいになるから…。」


 まさかの提案に困惑するナナエラ。本当は自分が奢るつもりだったのに、逆に奢られる事になってしまう。


 「気にしないでください。俺とナナエラさんの仲じゃないですか。」


 「わ、私とカイくんの仲だよねっ!!う、うん、そ、そうだねっ!!」


 突然、カインにお互いの仲の話をされて慌てふためいているナナエラ。かなり顔が赤くなっている。

 

 「そうですよ。俺とナナエラさんとの仲です!」


 そんな事ナナエラの状態を全く気にしないで畳み掛けるカイン。ますますナナエラの顔が赤くなってきた。


 (わ、私とカイくんとの仲って何?!!そ、そういうふうに言ってもらえるなら、誘ったかいがあったかなぁ。)


 どういう仲か今一分からないナナエラだったが、とにかく良い事だと認識していた。昼ご飯にカインを誘って良かったと心から思える。


 「あ、ありがとね、カイくん…。」


 とりあえず、奢ってもらえるので照れながらも嬉しそうにお礼を言うナナエラ。


 「ふふっ、どういたしまして。」


 照れているナナエラに対して微笑みながら答えるカイン。

 そんな話をしながら奢ることが決まったので、店員を呼ぶカインだった…。


 20分後…注文した昼ご飯を食べながら…。


 「午後からの予定?」


 「ご飯を食べた後、何をしようか考えていたんです。それを今から決めようかなと思いまして。本来なら午後からミスティさんに魔法見てもらおうと思ってたのが、変更になりましたからね。」


 午後の予定が全く決まっていないカイン。ミスティの不在により当初の予定が変更になってしまったので、何をしようか考えているところだ。


 「あぁ、そうだったね。そういえばカイくんは、いつからミスティさんに魔法を教えてもらっているんだっけ?」


 カインから魔法とい言葉を聞いて、ふと疑問に思ったナナエラが問いかける。


 「かれこれ、1年と少し前ですかね。たまたまゴブリンの討伐の時にオークの群れと遭遇してしまったんです。その時にミスティさんに討伐を手伝ってもらって以来ですね。それから知り合い俺も師事してもらう事になりました。」


 オークとはランクDモンスターであり、群れると数にもよるがランクC扱いとなる。

 カインはエルと”もう一人の子”と3人のパーティでゴブリンの討伐に行ったのだが、オークの30体以上の群れに遭遇してしまい大変な目にあっていたのだ…。

 その原因はもう一人の子にあったのだが……。


 「そういう事もあったね。あの時はかなり心配したんだよ。ギルドにも、オークの群れが出たって報告があって、緊急依頼出す事にもなってたんだから。」


 その時の事を思い出して懐かしそうに語るナナエラ。あの時は大変だったが今ではいい思い出である。


 「あの時は、心配お掛けしてすみませんでした。ふふっ、ナナエラさんみたいな美人な人に心配して貰えるなんて、男冥利に尽きますね。」


 ナナエラを見て微笑みながら謝罪をするカイン。


 「っ!!び、美人だなんて、カイくんは上手なんだから…。」

 

 突然カインに美人と言われて顔を真っ赤にするナナエラ。お世辞であると思いカインの発言を否定するが、満更でもない様子だ。


 「本当の事を言っているんですよ。ナナエラさんは俺達冒険者の憧れでもありますからね。」


 それでも平然と発言を続けるカイン。ナナエラが照れている理由を全く理解していない。


 「………あ、ありがとう。」


 当たり前のようにカインに褒められたナナエラ。真っ赤だったか顔は更に赤くなっていった…。


 そんな楽しそうな会話をしていたカイン達と所へ…。


 「おい、そこのお嬢ちゃんっ!!そんなガキは置いといて俺達と一緒に飲まないか?」


 「てか、その制服を着ているという事は受付嬢だろ?へへっ、中々可愛い顔してんなぁ。」


 ニヤけた面をした2人組の酔っぱらい男達が話しかけて来た。どうやら美人であるナナエラの事を誘っているのようだ。

 そんな男達に対して…。


 「申し訳ありませんが貴方達と一緒には飲みません。」


 きっぱりと拒絶するナナエラ。受付嬢としてギルド内で絡まれる事にはある程度慣れているのだ。

 しかし、そんなナナエラの態度が気にいらない男達は…。


 「うるせぇっ!!黙ってついて来いやっ!!」


 怒鳴りながら椅子に座っているナナエラの腕を掴んで強引に連れて行こうとする。普通はギルドの受付嬢にこんな真似をしたら処罰となるが、酔っているのでまともな判断が出来ないみたいだ。


 「や、やめてくださいっ!!」


 掴まれている手を振りほどそうとするナナエラ。いきなりの出来事に少し動揺している。そんなナナエラを見てニヤニヤしていたのだが……。

 

 「へっ、お前は俺が「ナナエラさんを離してください。」……何だと?」

 

 男が話している途中で、カインが間に入ってきた。


 「ナナエラさんを離してくださいと言ったんです。」


 もう一度はっきりと発言するカイン。丁寧な言葉遣いだが、身体から闘気が漏れ始めており男達を威圧している。


 「な、何だこの闘気はっ!!」


 カインの闘気を感じて動揺する男達。ナナエラの腕を掴んでいない方の男は咄嗟に腰に差していた剣を抜き、剣先をカインへと向けてしまう。


 「……抜いてしまったな…。お前を俺の敵とみなす…。」


 そう発言したカインは剣を構えた男の方へと歩み寄って行く…。


 「ふ、ふざけるなぁっ!!」


 対する男はカインへ剣を振り下ろして……。


 ドガッ!!


 しかし、カインの方が一瞬で男の腹へと横蹴りを放った。鈍い音がして、凄まじい蹴りを入れられた男は物凄い勢いで吹き飛んでいく。

 そして、近くにあった机へと向かい…。

 

 ドォォンッ!!


 大きな音をとともに勢い良く机へと叩きつけられた男。剣を握りしめたまま、白目をむきながら男の身体が崩れ落ちる。

 そんな光景にナナエラの腕を掴んでいる男は驚いて叫び始めるが…。


 「ば、馬鹿なっ!!動きが「全く見えなかったか?」……ぐわぁぁーっ!!」


 今度はナナエラの腕を掴んでいた男へと一瞬で詰め寄り、さっき蹴り飛ばした男のいる場所へと同じ様に蹴り飛ばすカイン。

 叫び声を上げながら伸びている男へと迫っていき…。


 ドォォンッ!!


 再び先程と同じく大きな音をたてて崩れさる男。壊れた机の側には2人の男が完全に伸びた状態になった。

 そんな男達の姿を確認したカインはナナエラの方へ振り返り…。


 「お怪我はありませんか?」


 微笑みながら優しく話しかけた。


 「う、うん…。ありがとうカインくん…。」


 酔っぱらいから助けられた事により、先程褒められた以上に顔を赤くしているナナエラ。恥ずかしくて完全に下を向いてしまった。


 「大丈夫ですか?顔も赤いし熱でも出たんですかね…。」


 顔が赤くなったナナエラの体調を気にして近づいていくカインだったが…。


 「だ、大丈夫だからっ!!わ、私そろそろ仕事に戻るねっ!!」


 慌てた様子でギルドのカウンターの方へと走り去っていくナナエラ。そんなナナエラの様子を不思議に思いながら…。


 (うーん…。何か嫌われるような事したかな?)


 全く見当違いな事を考えていたカインであった…。

読んで頂きありがとう御座いました!

初めの数話はのんびりと幼少期カインの日常を書いているので、気楽にお願いします(○´∀`)b

展開が変わってくるのは1章後半で……。


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