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エピローグ

 昨日と打って変わって風の強い日、真っ白な雲が遠くに流され消えていく。

正午を迎えたと言うのに大時計台の鐘の音は響き渡らない。

重く低く、落ち着いたその音色は、時計台の修理が終わるまでのしばらく、聞けなさそうである。

 ユージンが目を覚ましたそこは小さな病院だった。

部屋の窓を見れば、外は荷物を抱えた人々でいっぱいである。

先刻、やっと避難令が解除され、街の人が戻り始めているのだ。

良かった、と彼に飛びついたのはトリクシーだった。

 もう目を覚まさないかと思ったのよ、本当に心配したんだから・・・ペネロペが消えそうな笑顔で言うと、彼は優しい目で彼女を見た。

 皆も街も無事だったなら、それで。

彼は痛々しい包帯姿で、いつものように小さく笑った。

その場に居合わせたエリオット、アイビー、それからオーエンも、皆で笑った。

今ここに居合わせない者たちが今何をしているのか聞くと、その答えは明白、皆が皆、今回の騒ぎの後処理に追われているとのことだった。

ワルターは時計台の修理に勤しんでいるし、バルタザールとシャーロットも報告書やら何やらで手が離せない状態らしい。

 ちなみにダンカンと彼の駒であったエイベルは殺人未遂と公共物破壊で捕まったそうだ。

 そしてオズワルドはと言うと、彼はトリクシーを解放する最後の仕上げに取り掛かっていた。



 彼は一度アルティリークの自宅へ戻った。

そこで自身の小さな棚を漁ると、奥にしまってあったブリキの小箱を取り出す。

中に入っていたのは色あせた桃色の封筒だった。


オズワルドが病院につくと、既にユージンは目を覚ましていて、皆と静かに話をしているところだった。

彼はユージンにくっ付いて離れないトリクシーを半ば無理やりに引きはがした。

そして、彼女に紙とペンを渡し、告げる。

 お前は少しだけ特別な力を持っているよ、ここに描かれたものと同じ絵を描いてごらん、と。

 封筒に入っていたのは魔法陣の描かれた小さなカードだった。

隠し部屋を消し去る、ディアン直筆の魔法陣であった。

トリクシーはカードを受け取ると、少し放心して、そして思いっきり泣いた。

確かにそこにいたはずの自分の家族は、もうこの世にいない。


子供でも描けるような簡単な図式。

彼女は、ゆっくりと時間をかけて、同じ模様を写し取った。

 トリクシーの使う最初で最後の魔法。

それは、彼女自身が夢見た自由を手にするものだった。


トリクシーが一枚の紙切れを放った時、それが、彼女にとっての新しい人生の始まりになる。

小さな少女は涙を拭い、そして、窓の外を見上げる。


 夢にまで見た遠く広い青空が、ずっと遠くまで広がっていた。


最後まで閲覧有難うございます。

至らぬ点も多かったと思いますが、なんとか完結させられて良かったと思います。

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