学校にて
「昨日やってた魔術師の番組見た? 俺テレビの前で叫んじゃったよ。名前知らないけどあのオッサンスゲーな。ネットでは『テレビは今世紀の頭から酷くなった』っていうのが常識らしいけど、捨てたもんじゃないな」
俺の友人の幸麻呂が話しかけてきた。
「醍醐にテレビの話題振っても絶対答えないよ。醍醐のテレビ嫌いは有名だろ。まろやん」
智が俺の代わりに答えてくれた。
俺は基本この二人と一緒にいる。こいつらとは中学からの仲で、奇妙だが五年間一度も違うクラスになったことがない。
「俺の代わりに答えてくれてありがと。トモさん。おかげで若干ながら手間が省けたよ。って訳で、俺は見てない」
二人に言った。
「醍醐君って、不思議ですよね。いつも皆とは何処か違っていて、個性的というか」
俺の隣の席にいる有里子が言った。
彼女は学校で一番美人らしい(これは同意できる)ので、彼女と話すことは男子生徒の間では夢のようなことらしい。
「あっ、有里子ちゃん。今日も良い天気だね」
「黙れ変態。ってかお前毎日しつこい」
「そう言って、実は僕と話せるのが嬉しいんでしょ?」
「いい加減にしないと訴えるぞオラ!」
「す、すみませんでした……」
幸麻呂が土下座をしている。そっとしておこう。
「そんなにまろやんを虐めなくても……」
「あっ、ごめんなさい醍醐君」
「本当に醍醐に対しては優しいよね。有里子さんは」
「そんなことないよ智君。私は皆に対して優しいでしょ」
「おい、皆に優しいって言ってるのに何で俺には冷たいんだよ! 説明してくれよ。有里子さん」
「誰か私のこと呼んだ?」
「俺は呼んでないが」
「僕も呼んでいませんよ」
「おいお前ら! 友を裏切るのか?」
「あの、醍醐君と智君。今度三人で買い物行かない?」
「別にいいけど」
「僕でいいのですか?」
「うん。二人だからいいの」
「畜生! お前らばかり良い思いしやがって!」
「ではいつにしますか?」
「私は来週から用事がありまして忙しくなるので、なるべく今週の日曜日にしてもらいたいです」
「俺はいつでも暇だから」
「では、今度の日曜日で」
俺の足元で幸麻呂は声を詰まらせていた。
「まろやんも一緒に連れてってやってもいいかな? 有里子さん」
「僕からもお願いです。まろやんが可哀そうだからさ」
「おっ、お前ら……最高だよ」
「無理!」
一人の青年の想いは残念ながら通じなかった。
今夜も奴はテレビに出ている。
ネット上では「イザナギ様ぁ」「今日もまた多くの人が救われる」「イザナギ様以外はテレビに出なくてもいい」等の意見から、「そんなにこいつは凄い奴なのか?」「いい加減もう飽きた」「またもゴリ押しか」等の意見も飛び交っていた。
……こいつは「イザナギ」と言うのか。