No.1:空のない街 (前編)
砂漠の真ん中を、JEEPが一直線に走っていく。その跡は砂煙にまみれて、まるで飛行機雲のようだった。
JEEPは度々軋んで、今にも自壊しそうな雰囲気さえ振り撒いていた。しかし中の人間達も、もはや自壊寸前まで来ていたのだった。
「水分が足りてない」
「雨乞いだ、雨乞い」
「体力の無駄だ、アホ」
「それにしても.....。」
運転手だけが活きている。
「もうすぐ、大都会だよ」
と、呟いた途端、一同は跳ね起きて
「本当か!」
と復活の一声をあげ、そしてまた寝る.....。
やがて、砂漠は市街地とクロスするように消えていった。
その都市に入ってすぐに一同を叩き起こして水分を補給させた後、JEEPはまた走り始めた。相当に上機嫌な四人は、口々に
「もっと飛ばせぇや」
「そうだそうだ!」
と絶叫するのだった。
だが、彼らはすぐに知ることとなる。この街の本当の恐ろしさを.....。
それは唐突に訪れた。仲間の異変に、声をかける。
「どうした、ルーブル」
ルーク・マーブレット、略してルーブル。歳は17程。普通の男だが即答能力と地理的感覚では他を圧倒する。酒類を飲むと弱点である脇腹が猛烈に痛む(本人談)。
「.......。」
上を見上げるなりルーブルは絶句した。
「ちなみに、カイル」
本名カイル・ローレンス、カイルと呼ばれる男のことである。瞬発力だけが異常なまでに発達した狂人(?)で、冷静な判断を彼に求めるのは間違っている.....。
「ん?」
一同は相当慣れており、呆れもしなかった。
そして、こう言った。
「空が、ないのさ」