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あなたの運命は、まだ仕立て直せる  作者: 星恋


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2/2

ズレの中心で、世界は私を測り始める

この世界では、人は生まれたときに一度だけ「採寸」される。

それは体のサイズではなく、人生そのものの設計図を決める行為だと言われている。


恋をする相手も、進む道も、出会うタイミングさえも、その採寸の中で固定される。


しかし、彼女は違った。

どこにも当てはまらない“未採寸”として、この世界に存在していた。


これは、測られることのなかった少女と、運命を仕立て直す少年の物語。

朝の教室は昨日と同じはずだった。机の並びも黒板も窓の位置も変わっていないのに、空気だけが妙に整いすぎている。まるで夜のうちにこの空間がもう一度測り直されたみたいだった。


自分の席に座った瞬間、机の表面に一瞬だけ線が浮かぶ。昨日よりもはっきりしているのに、誰も気づいていない。


後ろから友達に声をかけられる。


「ねえ、今日変な夢見なかった?」


何気ないその一言に、私は一瞬固まる。


話を聞くと、その友達は“教室が線で測られている夢”を見たという。私は息を止める。それは昨日から私の周りで起きている現象と一致していた。


そのとき教室の空気がわずかに止まる。誰かが入ってきた気配がする。


彼だった。


昨日と同じように教室の入口に立っているのに、今日は妙に馴染んでいる。まるで最初からそこにいるはずだった存在みたいだった。


「おはよう」


彼の声に、誰も違和感を持たない。ただ教室が少し静かになるだけだ。


私は彼を見る。昨日より距離が近い気がするのに、実際の距離は変わっていない。ただ空間の感じ方だけが変わっている。


彼は机に手を置く。その瞬間、線が増える。机だけではなく床や空気にも薄く広がっていく。


「昨日より進んでる」


彼は静かに言う。


私は意味が分からず聞き返す。


「観測が安定してきた」


彼は続ける。


「君が世界に認識され始めている」


その言葉が胸に落ちる。意味が分からないのに、どこかで理解しかけている感覚がある。


そのとき友達が笑いながら言う。


「ねえ、今日転校生来るらしいよ」


その瞬間、彼の手がほんのわずかに止まる。


「それは偶然じゃない」


彼は小さく言った。



休み時間、廊下に出ると人の流れが妙に滑らかに感じる。誰もぶつからない。誰も止まらない。まるで見えない線に沿って動いているみたいだった。


私は立ち止まる。


その瞬間、人の流れが私を避けるように空間を空ける。


「気づいた?」


後ろから彼の声がする。


振り向くと、彼はそこにいた。


「何を」


「君は今、ズレの中心になっている」


彼の言葉に、胸が冷たくなる。


「中心って何」


彼は少しだけ視線を上げる。


「世界は採寸されたあと、ずれないように維持されている。でも未採寸はそこに存在できない。だから中心になる」


意味が追いつかない。


「じゃあ私はどうなるの」


彼は少し間を置いてから言う。


「広がる」



授業中、黒板の文字がわずかに揺れて見えた。先生は気づいていない。でも机の上、教科書の端、ペンの軌道にまで細い線が走っているのが分かる。


私は動けなくなる。動くと何かが進んでしまう気がした。


そのとき隣から声がする。


「怖い?」


振り向くと、彼はいない。声だけが残っている。


私は小さく答える。


「少し」


しばらくの沈黙のあと、その声は静かに言う。


「それでいい」


その瞬間、線がほんの少しだけ強くなる。



まだ戻れない。でももう進んでいる。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


この物語は、「すでに決められている運命」と「そこから外れてしまった存在」をテーマにしています。


もし人生が最初から測られているものだとしたら、そこからはみ出した人間は欠陥なのでしょうか。

それとも、まだ完成していないだけなのでしょうか。


未採寸の少女が、世界にどう測られていくのか。

そして仕立て屋が何を“正しい形”と呼ぶのか。


その答えは、物語の中で少しずつ明らかになっていきます。

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