プロローグ
令和の新作ブームに乗りました。
2021年拙作の「修羅の剣姫-転性吸血姫はMMORPGの世界で悪滅を誓う-」のリメイクとなりますが、中身結構違うので既読の方も未読の方もどうぞ読んでいただけると幸いです。
『ラスト・アルカディア・オンライン』
略してLAO、とも呼ばれるフルダイブ型VR専用MMORPG。
キャッチコピーは『幻想は、現実に。』
剣と魔法、そして失われた超古代文明が入り交じる世界を冒険するファンタジーRPGだ。
オープンベータテスト世界総参加プレイヤーは三千万人を突破。
オンラインゲーム史上でも稀に見るヒットを記録した。
その後も月間同時接続数一位を維持し続け、国産MMOとしては快挙とも言えるほど様々な記録を更新し続けている。
そんなLAOの魅力は幾つもある。
まず『プレイヤーの行動による世界の変動』と『高度なAIによるNPCの行動の多彩さ』だ。
NPCは全員A・N・Nと呼ばれる最新のAIを搭載。
ほぼ生身の生き物と遜色のない思考や言動を有する。
また、ゲーム内でプレイヤーは何をしても良い。
その結果、世界は如何様にも変化していく。
例えば土地を征服して自分の国を作るも良し。
商人として世界中を巡るも良し。
厄災を退け、英雄になるも良し。
全プレイヤーの一挙手一投足に合わせ、AIがクエストやイベントを自動生成し、物語を紡ぐのだ。
故に、運営すらもLAOの結末を予想出来ない。
そのリアリティが、世界中を熱狂させた。
他にも本物の武術家たちに監修された動作補助システムによって、合理的でスタイリッシュな戦闘も体験出来ること。
また没入型のメリットを最大限活かし、思考による魔法やスキルの発動を可能にしている部分も人気の要素だろう。
そして俺こと火宮光、24歳独身童貞――――以下略、もまたこのLAOに魅了された男の一人だ。
過去のとある事件から社会に上手く馴染めず、一度人生を諦めかけた俺にとってLAOは救いだった。
ベータ時代からプレイし続け、イベントがあれば走り、出た課金アイテムは全て買った。
PvPのランキングでは6シーズンの間上位を維持し続け、界隈ではかなり有名なプレイヤーとして認知されている。
プレイヤーネームは『アルシア・フレアウォーカー』。
フレンドやクランメンバーからは"アル"と呼ばれていた。
種族は[吸血鬼]。
アバターは濡羽色の髪と、紅色の瞳が特徴の美しい少女だ。
しかし俺は男である。
つまり世間一般で言うネカマなわけだが、故意ではない。
昨今のジェンダー問題のせいで、性別の選択肢が『体型A』と『体型B』という表記になっていたこと。
また、吸血鬼は[美形]という種族特性を持ち、男女の性差が分かりづらい。
そういった経緯があり、間違えてキャラクリを完了させてしまったのだ。
と言っても、ゲームを遊ぶのに大した弊害はなかった。
そもそも、MMORPGでネカマRPやってる奴なんて俺以外に幾らでもいる。
マナー的に、ゲーム内でリアルの素性を探ってくる奴も殆どいない。
俺達に求められるのはゲームの上手さや、一緒に遊んでいて楽しいかどうかだ。
俺も気の合う仲間とクランを立ち上げ、思うままにあの世界を駆け回っていた。
今日もいつものように自室のベッドに寝転がって、HMDを装着した時のこと。
ディスプレイには西暦2039年2月12日の表記と、無数に並ぶアプリケーションたちのアイコン。
その中からLAOを選択し、起動しようとすると、何故か予定にないアップデートが始まった。
視界に進捗を示すバーが表示され、訝しむ。
少なくともここ数日でアプデの告知は無かった。
緊急の不具合修正でもあったのかと首を傾げていると、不可解な眠気に襲われる。
ダイブ時の感覚とも違う、微睡むような意識の剥離。
波に攫われたブイのように、意識の浮上と沈下を小刻みに繰り返す。
アップデートの数値が60%を超えた辺りで、いよいよ限界を迎え、体を動かすことすら出来なくなった。
そして数十分後、アップデートの完了を告げるアラートと共に、意識は急激に深く沈み込みこんでいく。
抗いようのないそれに俺は身を委ね、直後に視界が暗転した。
【TIPS】
[クラス]
ゲームにおいて何が出来るか、どういった役割なのかを示す言葉。
職業とも呼ばれ、[剣士]や[魔道士]などの分類分けに使われる。
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