第六話
【神楽京】の守り神である竜神と、始まりの巫女の末裔である、竜を祀る一族。
直系の血を継ぐ本家を中央に据え、四方を守る東西南北の家門。
東を守護する東家は水の力を。
西の守護である西家は風の力を。
南を守る南家は火の力を。
そして最後の一家、北の守護北家は大地の力をそれぞれ操る。
元は竜神の力であり、始まりの巫女の御子である本家の初代当主が、伴侶との間に設けた子供たちがその力を受け継ぎ、それぞれの家門の始祖となった。
竜神の力を未来へ遺そうと、一族の中でだけ婚姻を結び、他の血を入れぬようにした結果、生まれる子供は次第にその数を減らし、無事生まれても成人まで生きられず、現在では年若い次世代と呼べる若者は片手の指で足りるほどになった。
この事態に慌てた長老たちは、何とか竜神と巫女の血筋を守ろうと、一族の外から伴侶を迎えることも容認し、血が薄まろうとも次代へ繋いでいくことを最優先とする方針を打ち立てた。
だが、どれだけの思惑があろうとも、本家最後の一人である五十鈴の伴侶を選ぶには、慎重にならざるを得ない。下手な血を入れれば、巫女の力が失われるかもしれないからだ。
一族の中でも健康で、神通力も強く、年も五十鈴に近い少年たちは、幼い頃は本家で育てられていた。
東家の陽向、南家の駿河、北家の響の三人である。
都を抜けて北へ向かう五十鈴たち。
四人に増えた一行は、修練で鍛えられた夜目と脚を生かして仙北山に向けて走っていた。
明かりは先頭を走る陽向の灯す小さな炎のみ。それでも四人には充分な明るさだった。
「それで、二人はどうして一緒に来てくれることにしたの?」
五十鈴の問いには楓が答える。
「都の水不足の原因がわからない話は西家にも聞こえてきていた。竜神様の御身に何かあったのかもしれないという噂も」
「人は水がなければ生きていけない。竜神様の加護のおかげで、【神楽京】から水がなくなることなんてないはずだった。けど、実際に水不足が起こっている」
息も切らさずに、二人は話す。
竜を祀る一族の修練は厳しい。馬と同程度の速さで走ることは、一族の若者ならば出来て当然の芸当であった。
「五十鈴はきっと、統治院から何を言われても自分で仙北山に行くと思った」
「護衛には陽向が就くだろうとは思ってた。けど、幼馴染を心配したっていいだろう?」
二人の言葉に、五十鈴は喉を詰まらせる。
『そんなこと、今まで言ったことないじゃない……』
出かかった言葉を飲み込む。危険な旅に同行してくれる二人にも、陽向に対しても、感謝の気持ちが浮かんでくる。
「仙北山までの道には、水を求めて野生の獣や魔獣が出るという話だ。俺は五十鈴の護衛だからな。二人とも、自分の身は自分で守れよ?」
湿っぽくなりそうな空気を、陽向の軽口が変える。
「「当然!」」
力強い幼馴染たちの会話に、五十鈴は頼もしさと泣き出しそうな気持ちとを抱えた。




