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閑話 伍
あの子は、やっぱり、あいつを選んだ。
僕は、あの子と一つになることばかり考えて、
あの子の気持ちを考えてなかったんだって。
そんなこと、誰も教えてくれなかった。
父様も、母様も、湊も……。
みんなみんな、いなくなった。
生まれてすぐに、湊が父様から逃がした弟が、僕にはいたはずなんだけど。
会うことなんてないと思ってたから、
仲良くなれずにまた会えなくなっちゃった。
僕は、また、一人ぼっち。
泣きそうな顔で、あの子は僕を見てた。
違うんだ。笑っててほしかったんだよ。
『…び、き…』
なんだろう。誰か呼んでる…?
『…ひびき』
懐かしい声。
優しい、温かい声。
目を開けてみた。
あぁ、母様…。
僕、頑張ったよね?
父様は、今度こそ、褒めてくれるかなぁ…?
差し出された母様の手を、そっと握り返した……。




