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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第四章 囚われた妄執と崩壊

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第五十六話


陽向の前で燃え上がる黒い炎を、敵兵を倒し駆け寄った楓が風の刃で切り裂いた。

祭壇まで、真っ直ぐに道が開く。

「行って!」

叫ぶ楓に、御神座の側に控えている黒い集団から矢が飛んできた。

陽向と黒装束の青年の戦いを、命じられた通りに見守っていた彼らが、こちらへと攻撃してきたのだ。

短剣で矢を捌き、空いている手で黒ずくめの集団に風刃を放つ。

「クロも行って!」

「なんで!」

降りかかる黒い火矢を苦無で弾き、少年が叫ぶ。

「ここから、あいつらに苦無を届かせるのは難しい。水の君の補佐をしてあげて」

御神座までは、まだ距離があった。玄カガチの投擲の腕は確かだが、物理的な距離はどうしようもなかった。

唇を噛み締め、少年は残り少なくなってきた秘薬の革袋を、楓の帯に挟む。

「無茶すんなよ!」

駆け出す少年の背中に、楓が微笑んだ。

「…誰に言ってるのよ」



陽向が祭壇へと駆け寄った時、身を起こした五十鈴と大剣を右腕に刺したままの男が向かい合っていた。

「五十鈴!」

陽向の声に、五十鈴が振り返る。シャン、と冠につけた鈴が鳴った。

会いたくてたまらなかった赤い瞳が、陽向を見て見開かれる。

「…陽向」

こちらへ手を伸ばそうとした五十鈴の手首を、男が握り直した。

「…っ、離して」

「ダメだよ、鈴ちゃん。僕のお嫁さんになるんだから」

「水刃!」

黒髪の男に向けて、鋭い水の刃を撃ち込んだ。

受け止めた青年の大剣の刺さった右腕から、血が流れ続けてる。平気そうに動く男が、不気味だった。

「…響!」

五十鈴の悲鳴に、一瞬、陽向の足が止まる。

響…?北家の…?

怪訝な表情で玄カガチが叫んだ。

「何してるんだ、水の君!」

ハッとして、黒い祭壇へと続く階段を駆け上る。



たどり着いた祭壇の上で、黒装束の青年と向かい合う。

「お前…響なのか…?」

信じられないような顔で、陽向が問いかけた。

青年から、先程までの笑顔が消えていた。

「だったら、何?」

温度のない声で、陽向に問い返すその顔に、懐かしさがこみ上げる。

だが、はっきりと思い出せなかった。幼い頃、ともに過ごした響?

「水の君、こいつはあの湊の主ってやつだろう?まともに取り合うなよ」

玄カガチの言葉には、陽向ではなく向かい合う青年が反応した。

「湊?会ったの?」

不思議そうに問いかける青年に、玄カガチはキッと鋭い視線を向けた。

「あんたに答える義理はない。お姫さんを返せ!」

言い放ち、苦無を構える少年の顔をじっと見つめる青年。

何か考え込んでいるような相手を睨みつけながら、いつでも呪を唱えられるように指を組む。

ぽん、と青年が手を叩いた。

「あぁ、そっかぁ。そういう事かぁ」

何かに納得したように、頷いている。

戦いの最中とは思えない柔らかい口調に、玄カガチが一歩、後ずさる。

「ふーん、生きてたんだねぇ」

少年の姿を上から下まで眺め、湊が言ったのと同じような言葉を口にした。



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