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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第三章 仙北山での戦い

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第四十六話


食事を終え、見回りに立った駿河と楓の背中を見送り、陽向は深く息を吐き出した。

木の鍋と椀を片付けている玄カガチに歩み寄る。

「ごちそうさま。美味かったぞ」

「本当はもっと栄養のある肉があればよかったんだけど」

「充分だ。明日に備えて、早く休め。火の番は俺たちが引き受けるから」

戦いに疲れているのは、玄カガチも同じはずだった。

肉体の疲労だけでなく、湊の言葉に精神も動揺させられただろう。

できるだけ、休ませてやりたかった。

陽向の気遣いに気づいたのか、少年が肩を竦める。

「水の君は、過保護だよな」

「そうか?」

「お姫さんの事も、だいぶ甘やかしてた。まあ、あのお姫さんは危なっかしいから、気持ちはわかるけど」

小さく笑って、玄カガチが片付けを終えた。

「お言葉に甘えて、俺は寝させてもらう。あの男と話してると、気持ちが落ち着かない」

「ああ。しっかり休んで回復しろよ」

湊から離れた木の陰に、少年は歩いていった。



火の側に座る、縛られた湊を振り返る。

水の縄から麻の縄に縛り直してあった。水縛を使い続けている間、陽向の神通力が回復しないからだ。

湊の前に座り、無言で見つめ合う。

「お前の主とは、一体誰の事だ?」

「……」

「夜は長い。付き合ってもらうぞ」

陽向の言葉に、湊は乾いた笑いを漏らした。

「拷問でもした方が、手っ取り早いでしょうに」

「そうだな。だが、お前を痛めつけている音に、魔獣が寄ってきても面倒だ」

湊がため息を吐いた。

「東の二の君は、思いの外苛烈な性格をなさっておいでのようだ」

「俺を優しい男だとでも思っていたのか?あてが外れて残念だったな」

軽口の応酬のように聞こえるが、陽向は油断など決してしていなかった。

戦闘で圧倒的な力を見せつけた湊の事を、敵として天晴とすら思っていた。

隙なく、相手を見ていたはずだった。

「!!」

後ろ手に縛った手に、いつの間にか鋭利な小刀が握られていた。武装は確かめたはずなのに。

手首の縄を小刀で切り、一瞬の隙をついて、湊が己の胸に小刀を突き刺した。

「お前…っ!」

「…かはっ」

鮮血がほとばしる。

開かれた口から血を吐き、ゆっくりと湊の体が地面に倒れ込む。

乾いた土に、夜目にも鮮やかな血の赤が流れ出す。

湊の体を仰向かせ、小刀が刺された心の臓の上あたりを、裂いた袖で押さえ圧迫する。

血が止まらない。小刀を抜く事ができない。抜けばさらに血が流れるだろう。

舌打ちしたいのを堪えて、胸を圧迫している手とは逆の手で、懐を探る。

玄カガチにもらった秘薬はすべて飲んでしまった。あるのは旅立ちの際に持ってきた、丸薬だけだ。

傷の治療には使えない。

「…っ」

「…貴方、がた、に…情報を、お伝え…は、できない…が、若、君の事も、裏切れない……」

荒い息をしながら、湊が必死に言葉を紡ぐ。

陽向は焦った。

「しゃべるな!血が流れる…!」

「……わた、し、にも…赤い、血が…流れて、いたのです、ね…ああ、人のまま…死ねる……」

微笑みを浮かべ、湊はゆっくりとその濁った目を閉じた。



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