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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第三章 仙北山での戦い

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第四十一話


地に膝をついた陽向は、肩で大きく息をしていた。

額に浮かんだ汗を乱暴に腕で拭う。

チラリと後ろに視線をやれば、倒れている仲間たち。側には黒い集団も地に伏していた。

「く…っ」

「もうおしまいですか?つまらないですね。我が主の障害となるかと思いきや、なんと手応えのない…」

残念そうに息を吐く目の前の優男に、近づけない。

攻撃は躱され、術は防がれる。

男の後ろから黒ずくめの兵士たちが現れた時には、勝てると思っていた。

あれは、道中襲ってきた連中と同程度の強さだ。見ればわかる。

さっさと兵士たちを片付けて、目の前の薄気味悪い男は撃破し、五十鈴の救出に向かうはずだった。

届かない大剣の柄を、握り直す。

汗で滑る。袖を引き裂き、柄と己の手をきつく結んだ。

ぐっと歯を食いしばり、立ち上がる。

その様に、優男が片眉を上げた。

「おや、まだ戦う意思がおありで?」

「当たり前だ!」

再び、全力を込めて優男に立ち向かう。

「ふむ。巫女様の護り刀を気取る滑稽な貴方には、特別に名乗って差し上げましょう。

 我が名は湊。一族の悲願を叶える為、主に仕え、千年の歴史に蓋をする者」

「歴史に蓋、だと?」

息を整え、湊と名乗った男の様子を窺う。

やんわりとした口調とは裏腹に、一切の隙がなかった。

「我が一族はね、呪われているのですよ。遥か始祖の時代から、抗えない血の呪いに、侵されている」

どこか遠くを見つめるような男の言葉に、気持ちを揺さぶられそうになる。

「水の君!」

駿河の声が飛んでくる。

ハッとして、湊の放った黒い炎をすんでのところで避けた。

長弓を支えに、駿河が立ち上がったところだった。

「成程、水の君、ですか。やはり貴方は、我が主の道行(みちゆき)の妨げとなる。水の清らかさなど、主には不要。

 儀式へご招待するつもりでしたが、ここで死んでいただいた方がよさそうですね。…ねぇ、東の二の君」

「!!」

正体を悟られた。だが、今はそんな事よりも…。

男の口調が変わった事に気づき、陽向は口の中で呪を唱えた。


『水の精霊よ、我が呼びかけに応え、力を貸し給え』


「水刃!!」

陽向の放った水の刃の後を追うように、南家の火矢が飛んでくる。

両手の平を体の前に突き出し、湊が黒い障壁を出す。

水刃と火矢を、飲み込んだ。あの障壁が、すべての攻撃を吸い取っている。

何とか、湊に術を使わせないようにしないと、勝機が見えない。

唇を噛み、陽向は駿河に念を飛ばした。

一族の修練の中で、自分たちだけが習得した技だった。


『駿河、こいつの障壁を引き受けられるか!?』

『やってやる!』


絶え間なく、駿河が矢を放つ。

湊は右手と左手それぞれで黒い障壁を発生させていた。駿河の火矢を右手で吸い取っている男に、左手側から楓が風刃を放ってきた。

チラリと目をやれば、玄カガチから回復の秘薬を飲ませてもらっていた楓が、鬼気迫る顔でこちらへ血だらけの手を突き出していた。


『楓!左手の障壁を頼む!その隙に攻撃する!!』

『わかった』


右手と左手、それぞれに攻撃を受けさせながら、陽向は湊の正面から斬り込んだ。



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