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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第二章 たどり着いた北の村

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第三十話


朝日が昇る前、五十鈴は静かに起き上がった。

昨夜楓に汗を拭いてもらったお陰か、玄カガチの粥の効果か、体が軽い。

白い修練着を着込み、懐に両親の形見である護身用の小刀、陽向から預かった東家の守り石、己の神通力を込めた防御用の呪符を、順に入れていく。

腰に刀を差し、黒い外套を纏って、最後に麻の帽子を深く被った。

「よし」

糧食や水筒を入れた荷を背に負い、貸してもらっていた部屋を出る。

扉の外で、同じく装備を整えた楓が待っていた。

「準備はいい?」

「ええ」

力強く頷き、二人で村長の屋敷を出る。



屋敷の入口で、陽向と駿河が待っていた。どちらもきっちり武装している。

その横に、玄カガチの姿も見える。

「よく眠れたか?」

「ええ、ぐっすり」

陽向の問いに頷き、ソワソワと視線を彷徨わせる様子に首を傾げながら、玄カガチへと目を向けた。

「私も、クロと呼んでいいのかしら?」

「ああ、いいぜ。よろしくな、お姫さん」

黒い絹の装束に身を包み、黒い篭手と胸当てをつけた玄カガチが、右手を差し出してきた。

「…?」

「握手。俺は足手まといにはならない。あんたたちこそ、俺の速さについて来いよ?」

軽い口調でそう言い、少し強引に五十鈴と握手を交わして、少年は陽向に向き直った。

「行くぜ」

「道案内、よろしく頼む、クロ」

「ああ、任せとけ!」

そして五人に増えた一行は、村の最奥にある仙北山への登山口を目指して駆け出した。



走り去る五人の背中に突き刺さる視線。

気配を感じ取るのに敏い陽向たちが、察知できないほどにその存在感を消した青年が一人、立っていた。

黒い装束に身を包み黒い外套を纏っている。上から下まで、闇のような黒だった。

口元を、同じく黒い布で隠していた。

黒々とした瞳が、一行の真ん中を走る五十鈴を見つめている。

「…やっと、会えるね」

小さく呟き、青年は踵を返した。



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