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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第二章 たどり着いた北の村

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第二十三話


屋敷の外に出ると、駿河と楓が火の番をしていた。

見回りから戻ってきたらしい、玄カガチの姿もある。

陽向が出て来た事に気づき、少年が駆け寄ってくる。

「お姫さんの様子はどうだい?」

「粥は全部平らげた。ありがとう、クロ」

素直に礼を告げる陽向に、少年がくすぐったそうな表情を浮かべる。

「それで、白の君の体調はどうなの?仙北山へは登れそう?」

「まだ様子を見たい。あいつはすぐ無茶をするからな」

「それはお前もだろ。看病の間、休めと何度も言ってるのに、聞きやしない」

駿河の軽口には玄カガチが答えた。

「眠ってるお姫さんに口移しで水も飲ませて、俺が作ってやった粥も『あーん』なんてして食べさせてたんだから、水の君は元気いっぱいだろ」

「!!」

少年の暴露に、楓が両手を口元に持っていく。駿河の顔がにやける。

「へー、ほー、ふーん?口移しに、『あーん』ねぇ?」

「水の君ったら、意外に情熱的だったのね」

からかってくる幼馴染たちに何も言い返せず、真っ赤な顔を隠すように腕で覆う陽向。

縋るように少年を見つめる。

「お前…なんで見て…」

「そりゃあ、あの時はまだ、あんたたちに警戒してたから、部屋を出て行く振りしてこっそり見てたに決まってんだろ?口移しなんて見ちゃって、すぐに警戒解いたけど」

「……」

「クロは、粥を『あーん』させるところも見てたの?警戒解いてたのに?」

「そっちはただの興味本位。あんなに必死で看病してた水の君が、お姫さんの目が覚めたら、どんな態度するのか気になって」

少年の言葉に駿河が手を叩いて笑う。

「それはいい仕事をしたな、クロ!お陰で俺たちは安心できた」

「そうね。二人は大丈夫そう」

微笑む楓に、玄カガチもニッと笑い返す。



三人の会話を聞いていられなくて、陽向は火の様子を見る振りをして、少し彼らから距離を取った。

耳が熱い。玄カガチが言っているのは事実ではあるが、眠る五十鈴に水を飲ませただけで、他意はない。なかったはずだ。

粥を食べさせたのも、本当に、目覚めたばかりの五十鈴の体力が心配だっただけで……。

胸の内で、誰に対してなのかわからない言い訳を重ねる。

脳天気な会話などしている場合ではないのに。眠る五十鈴の顔が思い出される。

早く目覚めてほしくて、何度も水の癒しの術をかけた。

初めは苦しそうな呼吸だった五十鈴が、徐々に落ち着いて健やかな寝息をたて始めた事に安堵し、寝顔を見つめている内に、触れたくなった。

薄く開いた唇に、そっと指を這わせた夜もあった。

誰にも見られていないはずだったのに。

今こうして言葉にされると、恥ずかしくてたまらなくなってきた。

いや、あれは看病だから、とさらに言い聞かせても、もう、自分の気持ちは誤魔化せないような気がしていた。




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