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竜の待つ都  作者: 紫月 京
第二章 たどり着いた北の村

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第二十話


深い海の底を漂っているような、ゆらゆらと揺れているような、奇妙な感覚。

遠くでさざ波が聞こえているような、どこか懐かしい場所にいるような、不思議な感覚。

ゆっくりと、目を開ける。

ぼんやりとした視界に、揺蕩う水面が映る。


ここは、どこだろう……。


起き上がろうとして、体に力が入らない事に気がつく。

ぱちぱちと瞬き、視線だけを左右に動かしてみる。

何も見えない。

誰かの気配も感じない。

この広い世界にただ一人きりでいるような、心許ない気持ちになってくる。


誰か…。

誰かいないの……?


声を出したつもりだった。

だが、はくはくと息をするだけで、言葉にならない。

このままでは、自分は一体どうなってしまうのか。

不安が胸に押し寄せた時、頭の中に声が響いてきた。


『…我が巫女よ、聞こえるか…?』


…竜神様!?


『ああ…ようやく届いたか、我が声が』


嬉しそうなその声に、応えたくて仕方がない。

己の内の神通力を探る。

つま先からゆっくりと、力を巡らせる。

手に力が戻ってくる。

右手を胸の前に持ってきた。

少しずつ少しずつ、体を起こす。

水の中にいるような浮遊感のまま、声のする方へ視線を向けた。


真っ黒に染まった、長大な竜の影。

瘴気に覆われた魔獣のような、漆黒の影がそこにいた。


「…竜神様?」

伸ばそうとした手は、届かない。

不安が大きくなる。

救けなければ、と強く思った。


『我が巫女よ、我を解放せよ』


竜神の言葉に首を傾げる。

「解放?何から、ですか?いえ、それより御身はご無事なのですか?」

問いかけに、答えは返らなかった。

ただ、解放せよと繰り返すばかり。

求められている事がわからない。

無力感がこみ上げてくる。

何か、何か言わなくては……。


『我を解放し、其方の力を取り戻せ……』


目を見開く。

旅の途中、上手く神通力が使えなかったのは、そのせい……?


遠くから、己を呼ぶ声が聞こえてくる気がする。


『…すず…』


ぼんやりとしたその声は、大切な誰かを思い出させる。

けれど、竜神の影も放っておけない。

「竜神様、必ず御前に馳せ参じます。どうか、どうか、それまでお待ちくださいませ」

胸の前で手を組み、己の信じる神に祈りを捧げる。

この想いが、どうか届きますように。


『…い…ず……』


「……五十鈴!」


現実に引き戻されるように、力強い声が己を呼んだ。

今度こそ、しっかりと目を開くと、憔悴しきった心配そうな幼馴染の顔が視界に飛び込んできた。

「…陽向……?」

泣きそうな顔で、陽向がこちらを覗き込んでいた。



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